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【ヨーロッパ留学】「財務支払能力証明(Proof of Financial solvency)」に気をつけろ op.8

こんにちは、あるいはこんばんは。
近年稀に見るほどの歴史的な円安で日本円がゴミ通貨と化している今、どのくらいの日本人学生が海外留学(特に私費での正規留学)を視野に入れているかはわからないが、今日はちょっとだけ有益(かもしれない)ことについて書こうと思う。まあ今後の世界線的にあまり役に立たなくなるかもしれないが。笑

さて、私がベルギーに留学してきてもうすぐ丸4年が経とうとしているのだが、留学してから毎年悩まされている問題がある。それは、居住許可更新のために必要な、財務支払能力証明(Proof of Financial Solvency)の取得である。
ベルギーでは学生ビザで長期滞在をする場合、毎年決められた期限までに住んでいる町の市役所に行ってレジデンスカード、つまり滞在許可証を更新しなければならない。その更新のために必要な書類をいくつか準備しなければならないのだが、この財務支払能力を証明する書類が厄介すぎる。

財務支払能力証明とは

現在ベルギーでは法律第61条により、ベルギーの高等教育機関でフルタイムの高等教育を受けるか、またはそのような教育の準備期間を過ごすことを希望する第三国国民、および学業を修了した後、就職または事業の立ち上げのために滞在期間の延長の許可を求める第三国国民は、十分な生計手段があることを証明する必要がある。
生活手段の最低金額は勅令によって定められ、毎年改定されるらしい。ちなみに2024−2025年度は月額803€だそう。

これを証明する方法として、次の3つのいずれかの書類を証明書として提出しなければならない。

  • (勅令に基づき)国際機関、国家政府、地域社会、州、自治体、または高等教育機関が作成した、第三国人が奨学金または貸与を受けている、または間もなく受ける予定である旨の証明書

  • 1981年10月8日の勅令附属書32に従った正式な義務へのコミットメント(annex32正式な義務については後述します)

  • 高等教育機関が作成した証明書で、第三国人がベルギーでの滞在費用をカバーする金額を教育機関が管理する凍結口座(Blocked account)に預金していることを明記したもの(Blocked accountについては後述します)

とまあ、ざっくりいうとそれを証明する手段として奨学金を受けている書類orブロックドアカウントを利用していることを証明する書類or保証人によるannex32という書類の3択しかないということである。

これらいずれかは留学前に日本でビザの準備をする際にも提出が必要なのだが、悲しいかな、留学当時の私はこの証明書が毎年(しかもその年度のやつ)必要になるとはつゆ知らず。留学するに当たり私の最大の落ち度だった(マジで単純にアホすぎ私)。今、特に私費で正規留学を考えている日本の学生諸君にはこの後の文章をよく読んで、留学するかどうかもう一度慎重に検討することをおすすめする。

Blocked Accountしんどすぎ問題

おそらく奨学金を受けない場合、ブロックドアカウントの証明書を利用する人が多いのではないかと予測する。
ブロックドアカウントとはその名の通り閉鎖口座(凍結口座と呼ばれることもある)であるが、要は1年間ベルギーで生活するために必要な金額を学年の始めに一括で所定の機関に送金し、決まった期日に毎月決められた金額が自分の口座に振り込まれる、という仕組みである。ちなみにブロックドアカウントに振り込まれたお金は学費に充てることはできず、日々の生活費として使うことになる。

最大のメリットとしては毎月末に一定の金額が振り込まれるため、家賃や光熱費などの固定費が支払えなくなる心配がないことだろう。節約して余った分は、翌月に繰り越すことができる。

ただしこのブロックドアカウントの金額も年々上がっており、今年度(2024−2025)は1000€/月×12ヶ月分(+手数料100€)になっており、合計12100€を一括で大学指定の口座に振り込まなければならないのだ。
そしてもう一つ厄介なのが、日本とヨーロッパ間の送金システムである。基本的にヨーロッパ国内は口座間送金に手数料は発生しない。しかし、ヨーロッパと日本の間で送金をする場合、通貨両替とともに送金手数料が発生する。今のレート(2024年7月18日現在)は1€約170円であることを前提に計算すると、手数料などで差し引かれる分も考慮して、まあざっくり日本円で約207万円ほどを送金しなければならない、ということだ。

……んな金額、一括で送金できるかっつーーの!!!!!!!!

そんでもってネット送金システムを利用したとて、マネーロンダリング等の観点から一度に送金できる金額上限が決まっているため、複数回の送金は避けられない。となると、その度に手数料が差し引かれるため、先に提示した金額よりもさらにトータルの金額は上がる。とてもじゃないがやってられん。
これに関して、というか学費も含めて、数日前にお金と将来のことで母親と電話で壮絶なバトルを繰り広げた。卒業とか就職とか帰国するか否か以前に正直もうメンタルが持たん。
結果的に一括送金はもう無理なので、こっちで保証人(仮)を探せということで決着が一旦ついたものの、この保証人もまた厄介なのである。


正式な義務(Annex 32)

[1980年12月15日法第61条、1981年10月8日勅令第100条第2項および第3項]。

形式的義務は、1981年10月8日付勅令附属書32に従わなければならない。

形式的義務は,場合により在外ベルギー公館又は領事公館,入国管理局又は市町村行政機関がその義務を受理した場合に限り,当該第三国人の十分な生活手段の証明となる。

注:保証人が外国に居住しているが,第三国人が居住している国以外の国に居住している場合,その署名を合法化し,上記の条件が満たされていることを確認する責任を負う公館は,正式な義務が受理された場合,「満足できる支払能力」という項目を付記する。 この表示がない正式な義務は,第三国人の十分な生計手段を証明するものとはみなされない。

https://dofi.ibz.be/en/themes/third-country-nationals/study/favorites/formal-obligation

簡単にいうと、非EEA学生および卒業後サーチイヤーに登録する人の生活を保証するために、保証人を立てる方法である。
保証人は被保証人が一学年もしくは研究コースの期間の生計手段を保証するとある。

この保証人になれる人の条件は以下の通りである。

  • 18歳以上の成人であること。

  • 定期的かつ十分な収入があること。

  • 国籍、居住許可、親族関係の条件を満たしていること。

定期的かつ十分な収入があることという条件に関して、学生に対して正式な義務を負う保証人は、少なくとも月額2,089.55 €(純額)+ 月額 803 €(純額)= 月額 2,892.55 €の純額があることを証明する必要がある。
(ちょっと端折ったので詳細は上記引用のリンクから確認して欲しい)

次に国籍、居住許可、親族関係の条件だが、次のいずれかに当てはまるとOKらしい。結構複雑だったので頑張って以下に箇条書きする。

  • ベルギー国籍を所有している国民。

  • EU加盟国に居住する、ベルギー以外のEU加盟国の国籍を所有している国民。

  • ベルギーまたは他のEU加盟国に永住する権利をもつ非EU加盟国の国民。(例:B、C/K、D/L、F(+)またはM(+)カードを持っている場合。 ベルギーのAまたはHカードを持っている場合は不可(3親等以内の親族である場合を除く)。

  • EU圏外の3親等以内の親族(血縁関係または婚姻関係)
    この場合、親族関係を証明する書類(出生証明書または婚姻証明書1通または数通)をベルギー大使館または居住するベルギーの市町村で提示してなければならない。
    三親等以内の家族とは:(養子)両親、(養子)子供 、祖父母、 孫、 兄弟、姉妹、曾祖父母、曾孫、いとこ(兄弟の子供)、 叔父・叔母(両親の兄弟姉妹)。

三親等以内の親族なら、父親が保証人になれるじゃん、と言いたいところだが、この規定の金額は年々上がっているうえ、現在のレートだとおそらくギリギリ規定の金額を下回る。(確認したところ、やはり下回っているという返事が来た)

一応数日前の電話バトルで親の提示した条件は、書類上だけの保証人を見つけろ、とのこと。生活資金は必要に応じてレートを見ながら送金することは可能だが、ブロックドアカウントの期日までに一括で約210万近い金額を準備して送金するのは無理、ということである。

そうは言っても上記の条件を満たすほど収入のある人が身近にいるかというと、私の周りは学生ばかりだし、仮にお願いできる人が見つかったとしても、いくら書類上とは言えども赤の他人に保証人をお願いするなんて申し訳なさすぎて気が狂いそうである。

おまけに、保証人がベルギー国内に住んでいる場合は、このAnnex32の書類に署名するには私が滞在許可を更新するときに一緒に市役所まで同伴してもらい、そこでサインをしてもらう必要がある。別の国に保証人が居住している場合でも、保証人に管轄下のベルギー大使館に出向いてもらう必要がある。というわけで、とんでもないほどの巻き込み事故案件なのだ。当然、保証人が準備しなければいけない書類もいくつかある。現段階ですでに鬱、胃に穴が開きそう。

他のヨーロッパの国はどうなのか

こうなると、ベルギー以外のヨーロッパの国はどうなっとんじゃい、と思う方もいらっしゃると思うので、できる範囲で調べてみた。

  • フランス:経済証明が必要。最低金額は月額615€。

  • ドイツ:授業や生活のための十分な費用を有することを証明するもの(年間11,208€以上)。月額934€以上。

  • スペイン:銀行残高証明書。残高目安は月額600〜700€。

  • イギリス:資金証明の書類。ロンドンかそれ以外の地域やコース授業料によって金額が変動。

とまあ、ざっくりとこんな感じ。いずれにしても、これらの情報は私が軽く検索して引っ張ってきた情報なので、きちんと自分が勉強する国の大使館ホームページ等を見て、最新の情報を確認すること。
というかベルギーの物価、アホ高すぎ。


さて、ベルギーで滞在許可を更新するために、如何にこの財務支払能力証明が学生にとって大変かはおわかりいただけたと思う。サイトに書かれていなかったので明言することは避けたいが、自分の預金口座に上記の金額を満たす、つまり月額803€×一年分の金額があれば、その残高証明でいけるんちゃうかなと思ったりなどした。だがしかし、ここはベルギー。一度書類不備で突き返されるとまた市役所のアポ取り直して出向かなければならないし、まあ私の住んでいるルーヴェンのコミューンは非常に優秀で、そこまで面倒なことになったことはないのだが、更新に半年以上かかった、なんてケースもちらほら聞くので、向こうから提示された条件100%でいくのが賢明だろう。

とりあえず私の目先のミッションは書類上の仮保証人を見つけることだが、果たして上手く見つかるんだろうか。ただでさえ非EEAの学生はEEA学生の学費の7〜8倍近い金額の学費を支払わされているというのに(そしてその学費も年々高くなっている)、それとは別にこんな大金を毎年準備しなければいけないなんて吐血案件だわ、本当に。真面目にこの記事を翻訳してこっちの学生に読ませたい。笑

というわけで留学を考えている日本の学生諸君は、なるべくバイトして資金を貯めて院から留学するか、実力で奨学金を勝ち取ってくれたまえ。そしてよく調べることだ。そうしないと、私のような出来損ないになってしまうぞ。

もっと日本の学生が、というか世界中の何かを学びたい人たちが、お金に苦しまずに自分のやりたい勉強をやりたい場所でできるような未来が来てくれるといいなあ……。

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