牛の話

2021年に入り、あっという間に2月になってしまった。
今年は丑年。牛。特に黒牛が小さい頃から好き。

祖母の実家は鹿児島県薩摩郡(現・薩摩川内市)で、小学校に上がる前までは飛行機や夜行列車で何度か祖母に連れられ里帰りした。

祖母の弟が車で迎えに来てくれて、空港からなら車で50分ほど。周りには何もなかったが自然豊かな環境に建つ平屋の家はなかなか立派だった。

曾祖母がまだ元気だった頃は敷地内に牛舎があり、黒牛を4頭ほど飼育していた。
その昔は牛だけでなく豚や鶏も育てていたらしい。

それぞれ名前がつけられていて、太郎、花子、仔牛のゆうこ、1頭だけ何故かザンギエフみたいな屈強そうな名前がつけられていた。

餌をあげたり、掃除をしたり。
間近で見る牛は顔も大きく迫力があったけれど、不思議と威圧感はなくて、黒々とした目や仕草がとても愛らしかった。

曾祖母はサッパリとした性格で可愛らしい人だった。
ひとつだけよく覚えているのは、ヒョイと牛舎の塀を飛び越えた姿。

被っていたキャップを牛の前でヒラヒラさせて遊んでいたら角にひっかかってしまい牛側にぽとり。
あたふたしている私を尻目に軽々と塀を飛び越え「ほれ」と手渡してくれた。
その姿がなんともかっこよくて何十年経った今でも目に焼き付いている。

しばらくして品評会で賞を貰った時の太郎の写真が送られてきた。太郎の横でピースサインする曾祖母の誇らしげな表情が印象的だった。

小さい頃に牛と触れ合えたことはとても良い経験になった。
祖母をまた鹿児島に連れていってあげられなかったのが心残りだ。


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