見出し画像

2週間後、ぼくは再び東南アジアにいく(まえがきその4)

 タイ旅行を計画しはじめた頃から、自分の中で海外行きの航空券を調べるのがブームになっていた。16歳になるまで、国内線にすら乗ったことのなかった僕にとって、海外行きの飛行機には、言葉にできないワクワクが詰まっていた。
あの街に行くには、いったいいくらかかるんだろう。そんなことを思いながら、世界中の都市の名前を検索し、日本からの航空券をぼんやり眺めていた。LCCがすっかり移動の手段として定着した今日、海外には意外と手軽に行けてしまう。韓国(ソウル)往復26000円、タイ(バンコク)往復48000円。そんな文字列の中に、その街の名前もあった。

ハノイ(ベトナム) 往復36000円

 ベトナムには、行ったことがない。イメージとしては、社会主義の国で過去に大きな戦争があったこと、そしてそれが冷戦時代の資本主義と社会主義の代理戦争であったということ。これくらいだろうか。
 これからどんどん発展していくという、その国に不思議と惹きつけられていた。観光地も国の成り立ちもそんなには知らない。けれども日本とは違うであろう社会のあり方とそこで暮らしている人たちをみたいと思った。ただ思った。

 正直なところ、ベトナムに行っている場合ではない。日本でやらなければいけないことが山のようにある。それでもぼくは、ベトナムという国を見たいと思った。見なければ気が済まなかった。
 ぼくはベトナムに何かを捨ててきたかったのだと思う。周りには、社会主義国を見るんだとか、飛行機が安かったとか言っていたけれど(これらは決して嘘ではないんだけれども)、ベトナムに行くことで自分の人生にひとつの区切りをつけようと思っていた。
 もっと言えば数週間前、それなりに心を揺さぶられた東南アジアにもう一度行っておくことで、トラウマのようなものを払拭しておきたかったのかもしれない。

 ぼくは、自分と自分の人生に向き合うために、初めてひとりで外国に行こうと決めた。気づけば、一心不乱にベトナムの首都・ハノイ行きの航空券を予約していた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?