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骨盤骨折。Part.42

生き残った意味。

怪我から6週間。手術から5週間、経った。
左足への荷重練習は体重の2/3に増加。
痛いけど、なんとかクリアしてる。

骨盤骨折のリハビリなんて初めてだけど、順調なんだろう。多分。
痛いけどな。

墜落した直後は、本気で「死ぬだろうな」と思ったんだから、
痛いのはしょうがない。
生きてるだけで幸運。
歩く練習ができてるんだから、奇跡に近いんだよな。

きっと、守護霊様とか指導霊様、ご先祖様、神様とかが、
総出で助けてくれたんだ。

右中間に飛んだ浅めのフライの落下点に、ライトとセンター、セカンドが全力で走って一斉にグローブを差し出すように。
3枚ブロックをすり抜けたボールが味方のコートに落ちる寸前に、手の甲一枚で繋ぐバレーボール選手のように。
目に見えない皆さんが、助けてくれたんだ。
間一髪で。

ありがとうございます。

生き残ったということは、やるべきことがあるんだろう。
それが何かはわからないけど、いつか、わかる日が来る。
そのために今、できることをやろう。

痛みに耐えること。
リハビリを頑張ること。
助けてくれる皆さんに感謝すること。
それくらいしかない。
できること、それくらいしかないよな(笑)。

頑張ろ。

マッサージ。

リハビリの前に、T塚さんがマッサージしてくれる。
「痛み。どうですか?」
変わりませんね(笑)。

左足側面と左の腰は、いつも痛い。
痛みを感じないのは、ストレッチャーに寝たまま宙吊りで風呂のお湯に浸かってる時だけだ。
お湯の中で身体が軽くなって、痛みが消えていく。
あれ、天国なんだよな。

「俯せ。できますか?」
はい。
車椅子からマッサージ台に移動する。
前は、ここへ座るだけで痛かったな。
手をついて、足を上げて、仰向けで寝てから、俯せに。
体勢を変える度に痛くて、時間がかかってた。
だんだん、早くできるようになってる。

左足側面に、雷のような電気が走る線がある。
坐骨神経っていうのかな。
墜落のショックで傷ついた神経。
腰から足先まで繋がってるから、どこを押されても足先まで響く。
指先で押されると痛いから、T塚さんは掌全体でマッサージしてくれる。
強過ぎず、弱すぎない。
いつも、絶妙な力加減だ。
安心して任せられる。

マッサージの後、ストレッチ。
「左足を伸ばして、足首を反らしてみてください。」
はい。
「左膝の裏を伸ばしたままキープします。20秒。」
はい。
「できますね。次は30秒続けてみましょうか。」
頑張ります。

「左足、だいぶ曲げられるようになりましたね。」
ありがとうございます。おかげさまで。

心から信頼できる。
担当PTがT塚さんで良かったな。

自立練習。

翌日のリハビリ室。
平行棒での荷重練習の後、T塚さんが言う。
「手を離して立ってみましょうか。」
え?
「左足に46kg荷重する感覚。わかりますよね。その感覚で、平行棒から両手を離して立ってみてください。」
はい。

平行棒で歩く時と同じ要領で、左足に荷重していく。
46kg。今練習してる最大荷重だ。
このくらいかな。
ふくらはぎの張り、痛み。痺れ具合でだいたいわかる。

平行棒に置いた手から荷重を抜いていく。
もう少し。
まだ触ってる。
これを、離せばいいんだよな。

離せた。
おお! 立ってる。

「できますね。」
T塚さんは笑顔だ。喜んでくれてる。

できました(笑)
嬉しい。
いつも、ありがとうございます。

松葉杖。

翌日のリハビリ室。
平行棒での荷重練習の後、
「ちょっと、休んでて下さいね。」
車椅子で待ってたら、T塚さんが松葉杖を持って戻って来た。

「使ったことありますか?」
はい。高校の体操部に入った直後に前宙(前方宙返り)の着地に失敗して、
右足首の骨にヒビ入れた時、使ってました。
「じゃあ、使い方わかりますね。歩いてみましょう。」
はい。

松葉杖を受け取る。

軽いですね。
「最近のは、アルミ製ですからね。40年前は木製でしたか?」
はい(笑)

そっか。あれから40年も経つんだな。

銀色の松葉杖。
両脇に入れて持ち手を掴み、左足を浮かして右足だけで歩いてみる。

「できますね。じゃあ、左足をつけて歩いてみてください。」
えっと…。
「平行棒と同じです。右足は全荷重。左足は2/3荷重で歩いてみましょう。」

そうか。そうだよな。
左足を床に着けなきゃ、リハビリにならない。
でも、どうすればいいかわからない。
「僕が支えてますので、大丈夫ですよ。」
はい。

右足を支点にして、松葉杖を左右2本とも前に出す。
左足を床に付けて、体重を乗せていく。
平行棒と違って固定されてないから、怖いな。
転倒しそう。
思わず、左足に充分荷重する前に、右足を着いてしまった。

ビビり過ぎ(笑)。
これじゃダメだろ。
もう一度だ。

左足に荷重していく。
うっかり体重をかけ過ぎたら、左足全体にカミナリみたいな痛みが
走るだろう。
嫌だな。

松葉杖の横にチラッと、T塚さんの腕が見えた。
「大丈夫ですよ。」
掛けてくれた声を思い出す。

そうだ。僕一人で頑張ってるんじゃないんだ。
バランス崩しても、この人が支えてくれる。
大丈夫だ。
きっとできる。できる気がする。

左足に荷重して、松葉杖を動かす。
1歩、2歩、3歩、
少しづつ、体重移動が楽になっていく。
5歩、6歩、7歩、
繰り返すうちに、スムースに前に進めるようになっていく。
8歩、9歩……

今、俺、歩いてる。
歩いてるよね。

嬉しい。
泣きそうだ。

頑張ろ。


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