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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい…
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2021年1月の記事一覧

「輸液」をシンプルに理解する第一歩

「初学者が輸液をシンプルに理解するには、こう考えてみては?」という提案です。 まず、  ① 急性期の輸液  ② 慢性期の輸液 を分けて勉強することです。 「主な輸液の目的が、シチュエーションによって違う」ということをしっかり理解しておいてください! そして、① 急性期の輸液は細胞外液を使用すること。 判断が難しいことや、判断ミスが命取りになることもありますが、「循環が破綻していれば基本的にはまず細胞外液を入れる」ことを覚えておいてください。 ② 慢性期

心臓の解剖は「骨格」から①

※ 本記事は、「医学生」「循環器に配属になった新人〜若手ナース・コメディカル」「循環器ローテートの研修医」に役立つよう記載しています。 簡単そうでわかりにくい心臓の解剖 これから心臓の解剖を「きちんと」勉強しよう。こう思って何度も挫折した人たちを見てきました。「やろう」と決めて勇ましく高額な医学書を買ってはみたものの、気づいたら「文鎮」化している。これはあなただけではありません。 実際、解剖の本は難しすぎて、本を読んでもしっくりこないと思います(情報量が多すぎる)。しかも

ICUでの輸液反応性 〜SVV〜

では、ICUシチュエーションならどのように輸液しますか? 実は、「輸液管理(stressed volumeの管理)が大事な患者がICUに入る」といっても過言ではありません。時々刻々と変わる患者の病態に合わせて、そのつど補液が適切かどうかを考えながら管理するには、ずっと看護師さんがついていてくれるような環境でないと厳しいからです。 ICUでは、「SVV」が利用出来ることが多い しかしICUという環境はそれだけに輸液管理に特化した装置を沢山使用できます。資源が相対的に潤沢

輸液反応性(入れるべきか 入れぬべきか)

ショックへの戦略は補液と血管収縮薬(と強心薬) 循環動態が不安定(つまりショック)のときに、①補液と②血管収縮薬が主な戦略になると思います。強心薬の使い方は、別記事にあります(しぶい薬なので難しいかな?)。  いずれも前負荷を増やす行為ではありますが、②血管収縮は後負荷も増やします。その代表であるノルアドレナリンは若干ながら心収縮能も上昇させます。 血管収縮薬だけで戦うな(〜これはみんな知ってる〜) 血管収縮薬であるノルアドレナリンは、高流量で使用しすぎると心負荷による不整

「しぶい」効き方をする「強心薬」

 ここまで、ほぼ触れてこなかった、心収縮能と、「強心薬の立ち位置」について話します。ぶっちゃけていえば、「強心薬は渋い効き方をする」のです。特に研修医の先生が「思っていたほど派手じゃない」と感じるタイプのお薬です。 強心薬は、「心拍出量」を増やして「循環」を改善させる ポイントは、血圧を上げるとか、そういう「見た目にすぐ分かる」ハデな効き方をしない、ということです。「循環が良くなる」とはどういうことか?「循環が悪い」とはどういうことか?が分かっていないと、効き目が理解できな

フランク・スターリングの曲線【基本編】

 ここまで、ある程度みなさんよく知っている前提で話してしまっていた「フランク・スターリングの曲線」について立ち返って説明したいと思います。 本日のポイント・心臓は、静脈から多くの体液が帰ってくる(静脈灌流が多くなる)と、それだけ次の収縮で押し出す体液(一回拍出量)の量を増やす。 ・最初は、その影響は大きいが、徐々に心拍出量の増加は「頭打ち」になる。 まずはこの図から  上図をみてください。下の曲線がみなさんの見覚えのある曲線です。右軸は[stressed volume

その場が「しのげる」循環作動薬の知識

臨床で必要な知識は、その場をしのげる知識 研修医がなかなか調整を任されたり、自分の判断で開始したりすることがめったにないのが循環作動薬ではないでしょうか。これらの薬剤が必要な患者さんというのは、(補液のときも述べましたが)重症なことが多いからです。  だからこそ、いつか自分が使わなければならないときのために学びたい。そう思って熱心に勉強している人もいると思います。しかし、教科書に出てくるのはカテコラミンの分類、α刺激、β刺激、、、などなど。β1, 2まであって、「β1刺