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ソムリエの仕事の裏側~2020年8月Sakeラインナップのセレクト編~

お酒のリストにはソムリエの意図がふんだんに込められています。それを今回7つほど御紹介いたします。


北仙台『和酒バル 二喬/NIKYO』のSakeラインナップ(1グラスにてサーヴ)の大前提として

①宮城県の新澤醸造店さんと長野県の小布施ワイナリーさんのアイテムをオンリストする

②ワイングラスを用いるのを基本とする

③Barスタイルのお酒がメインの飲食店である

これらを挙げておきます。


1.ボトムレンジアイテムとしていわゆる夏酒

夏酒は、流通の都合から早いものだと5月頃から出荷されるようになりました。流通の都合というのは端的に言えば東京です。東京は梅雨入り時期など6月頃から暑いのです。その時期にはもうサッパリ系夏酒が需要がある訳です。東北出身東北育ち東北在住の自分としましては、6月に夏酒があるのは違和感なのですがしょうがないかと思います。お酒が楽しく美味しく飲まれればOKです。

それで、『二喬/NIKYO』では「御客様が同時期に酒販店さんに行って購入する事が出来るお酒は価値が低い」ので必然的に夏酒はボトムレンジの価格帯になります。今回は福岡県「三井の寿」です。実は去年もでした。二年連続。ラインナップにおいて唯一のにごり酒で、且つリンゴ酸生成酵母仕込みなので、にごり酒全体の流通状況を鑑みてもユニークです。良かったら御客様におかれましては、是非ガブガブとお替りするくらいにお飲みいただきたいです。その時の夜の雰囲気によっては、オンザロックやプチソーダを加えるのも良いですね。瓶が空いてしまったらウチもまた仕入れます。酒販店さん、蔵元さんに顔が立ちます。蔵元の井上宰継さんはかれこれ二十年近くお付き合いさせて貰っている御仁です。実は自分の結婚パーティーの時もわざわざ福岡県から駆け付けてくれた数少ない公私ともに親しくさせて貰っている蔵元さんです。東北でももっと×100知名度を上げたいと考えていますので、どうぞ宜しくお願い致します。


2.県内限定アイテムを夏酒にリンクさせつつ

新澤醸造店さん「大学生の純米大吟醸」オンリストしています。実はこのアイテム、宮城県内限定流通品でして飲食店さん、また新澤醸造店さんの取扱いがある酒販店さんでもそれほど見かけないものです。酒販店さんと蔵元さんの関係性において、蔵元さんの商品ラインナップのうち、1から10を取り扱うのと、1から100全て取り扱うではなかなか違いが出るものです。また、蔵元の新澤醸造店さんとしても、それほど量を生産しているアイテムでもないのでどの酒販店さんにも御案内しているものでもありません。ただ、このようなアイテムを扱うのも『二喬/NIKYO』の使命の一つであります。またこのアイテムはストーリーが素敵なのです。是非この裏ラベルを御参照くださいませ。

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加えて実は、公表されていませんので変動する場合もあるのですけども、このSakeには宮城県の飯米ひとめぼれが主に使用されています。そのひとめぼれ、御存知の左党の方々も多いかもしれません、新澤醸造店さんの夏酒「あたごのまつ ひと夏の恋」(『二喬/NIKYO』でも先月までは当然オンリストしていました)にも使用されていまして、今現在新澤醸造店さんではひとめぼれを使用するラインナップはこれらのSakeしかありません。よって、左党の方々は、もし先月までに「あたごのまつ ひと夏の恋」をお飲みになられていましたら「大学生の純米大吟醸」に共通点を感じられる事でしょう・・・。そのような価値のシナジーを御用意するようにしています。


3.コロナ禍だからこそ生まれた価値あるアイテム

石川県「手取川」は僭越ながら昨年末にネクストブレイクする銘柄の一つとして猛プッシュさせていただきました。あと二年後ほどが待ち遠しいのですけども、そんな醸造元の吉田酒造店さんから今年マニアックなアイテムがリリースされました。ザックリと言いますと、醸造責任者が異なる全国新酒鑑評会用出品酒達です。二十年近く酒類業界に身を置いていますけども、非常に珍しいスタイルの商品リリースです。しかもしっかりと表ラベルを醸造責任者ごとに作成してストーリーを乗せるパッケージデザインまで。

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このような商品は、通常だとイベント時にサーヴされるとか、商品流通上の品数確保の為に一色単にカウントされてリリースされたり、ごく一部の酒販店さんに流通するとか、とにかく滅多に流通しないですね。御苦労も感じさせつつも、思考を重ねた賜物だとも感じます。やはりこれからも強く応援させていただきたいと思います。パッケージに留まらず加えて、近年において全国新酒鑑評会用出品酒なのにも関わらずセルレニン耐性酵母としては今や古めかしさも感じさせる金沢酵母での仕込み(個人的に大好きです金沢酵母)、更には山廃酒母です。吉田酒造店さんと言えば、映画「The Birth of Sake」でも記録された業界屈指の衛生的な山廃造りが魅力なのです。繊細さを重ねたSakeにはワイングラスが似合います。今月のトップレンジに位置するSake達です、左党を自認される方々は必飲でしょう。じっくりと御堪能いただきたいです。

超余談で不備がある裏ラベルにも注目w


4.素晴らしいSakeだったので再びオンリスト

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