見出し画像

地方移住者が移住者のためのコミュニティを立ち上げたら100人集まった話

昨年の6月に「うみねこ」というコミュニティを立ち上げて今日でちょうど1年が経った。

このコミュニティは、主に静岡県沼津市へ移住してきた人たちを対象に、ネットとリアルの両方で集まって交流をする場の提供をする活動を行うものである。

普段は Discord を使って沼津に関する様々な話題のやりとりをしたり、月に一回ぐらいの頻度で交流会と言う名の飲み会を開催したりといった活動を行っている。

様々な方とのご縁もあって、現在では登録者数が100名近くとなった。

今回は、これまで話す機会がなかったコミュニティの立ち上げについての経緯や、手探りで1年間運営してきた中で見えてきた今後の方向性などを述べられればと思う。

なぜ沼津で移住者コミュニティを立ち上げたのか

4年ほど前に自分が沼津へ引っ越してきて以来、沼津やその周辺の様々なスポットに足を運び、静岡東部の街と自然の魅力を存分に楽んできた。そうすることが沼津に住む目的のひとつであったし、実際に心から楽しいと思いながらやっていたことである。

しかしその一方で、会社は東京で就業環境はリモートワークということもあって、沼津での知り合いを増やしたり、地域のイベントなどに参加する機会はあまり多くなく、そのせいかどこか自分が地域から浮いた存在であることを感じることが悩みでもあった。当時はコロナ禍ということもあって、なかなか地域の人と触れ合ったり、イベントなども開催されなかったりしたから余計にそう感じてしまったのだろう。

そんな悩みを抱えている中でも、SNS上では「沼津に移住しました」という人をそう少なくない頻度で見かけていた。なので「実はそういった人たちが集まっている場所があるのではないか」と思って、インターネットの海を彷徨ったものの、意外とそういった団体は見つからなかった。

そうしている間に、コロナ禍も終わりというムードの2023年の春になる。

この頃、偶然にも沼津の移住者と会って話す機会が何度か立て続けにあった。その人たちとの会話の中で「そういった集まりや組織があると思ったけどなかった」とか「あったらいいとは思って探している」という言葉を聞くことがあり、これは「ただ誰もやってないだけなんだな」と気づいたのである。

であるならば、やることはひとつだ。自分が必要とされているものの立ち上げをすればいい。それ以降、どういったものが良いかの模索をすることになる。

立ち上げから本格始動まで

現在、コミュニティの運営を手伝ってもらっているメンバーが5名ほど居るのだが、彼らは立ち上げ当時の初期メンバーでもあり、全員沼津の移住者である。

その中の1人とは、もともと移住以前から Twitter 上での交流があったのだが、お互い「沼津に住んでるんだなあ」という共通の認識のみがあって、実際に会って会話したことはないという不思議な関係性だった。そんな中、たまたま行きつけの店のランチで相席することがあり(冒頭のオムライスの画像はその店のランチ)、その場の会話で「今度お互いの移住者の知り合いを集めて一緒に飲みましょう」という約束をすることとなった。

その飲み会では、必然的に友達の友達(の友達)という関係性の人たち同士が集まることになったのだが、ラブライブ!のことや、沼津移住あるあるといった共通の話題で盛り上がり、比較的早くに打ち解けることができたように思う。

そして、その時改めて実感したのは、移住者同士の関係性の薄さである。実際、お互いの知り合いを呼んだだけでも、同じ地へ同時期にの移住をした人間が5人も集まるのはすごいことではないだろうか。しかしながら、それぞれが移住以前から知り合い同士の小さなコミュニティの中に収まっているばかりで、移住者同士をつなぐ仕組みがまったく無い状態なのであった。

そこで、私はその場で以前から構想を練っていたコミュニティについて話すことにした。お互いに移住者の知り合いを増やす方法が少ないという問題の認識は共通していたこともあって、コミュニティの立ち上げを手伝って欲しいという半ば押し付け的なお願いにも概ね同意を得ることができた。

飲み会の最後には、同じような境遇の移住者を集めて交流会を開いたり、移住者の連名で来年の夏祭りの協賛をしたりできるぐらいの組織にできるといいよねという夢を語った。そうしてその場で連絡用にと立ち上げた Discord サーバーが現在の「うみねこ」の始まりである。

今では登録者数が100名となった Discord サーバー

立ち上げ初期は本当に手探りで、特に最初の頃に行っていた勧誘活動といえば、以前から知り合いだった移住者に声をかけたり、よく行く沼津の商店に協力してもらってチラシを置かせてもらったりといった形で、足で稼ぐ形で細々とやっていたものである。Discord のチャンネルの運用方法についてはかなり試行錯誤の上にできていて、ようやく形になった頃にインターネットで大々的に募集を行うようになった。

ねこと白鳥さんには立ち上げ当初からお世話になった

また、このコミュニティは参加のためにかかる費用は一切なく、無料で誰でも参加できることにしている。もともと移住した人同士をつなげることがメインテーマとなっていたこともあり、月額課金などの体系にして敷居を作ってしまうと趣旨と反するというのが主な理由だ。そんな手軽さがあったからこそ、1年で登録者数が100人になったとも言える。

とはいえ宣伝用のチラシを刷ったり、イベントで使う備品の購入とか、運営のために必要な持ち出しはあるが、それらはほとんど自分やスタッフの負担で運営されているのが実情だ。まったく健全な状態とは言えないが、額が大きいわけでは無いし、参加者からお金を取って変に責任が生まるよりはマシと考えているので、今のところは今後も「自分の趣味」として運営していくつもりではいる。

これまでやってきたこと

先にも述べた通り、メンバー同士の日常的な交流や情報交換は Discord を使ってやり取りを行っているのだが、それ以上に大事にしているのが、「うみねこ会」と呼んでいるリアル交流会である。

うみねこ会 第2回 の様子。現在まで10回開催。多いときは20人弱ほど集まる大きな会だ。

大げさに「交流会」と言っても、基本的にはただの飲み会でしかないのだが、こういった場を設けて実際に顔を合わせて集まらないと話せないことは結構多い。初めて会う人達がお互いのバックグラウンドを知ったり、そこから共通の趣味のことを話したり、沼津の生活におけるちょっとした不満を聞いてもらったり、そういった会話で参加者が楽しんで盛り上がっているのを見ると、やってよかたなあと思えるものである。

また他にも、奥駿河湾海上花火大会という地域の花火大会への協賛を行ったりラブライブ!のイベントにフラスタを出したりメンバー内で人を集めて沼津アルプス登山を行ったりなど、コミュニティ内でさらに小さな活動グループを作るといった「ハブ」として活用されていることも起きている。

花火大会の協賛 自治会に直接お願いして協賛させていただいた

うみねこが目指すところ

そもそも立ち上げ当初は「コミュニティはどうった方針でやっていくのか」ということをあまり深く考えていなかったというのが事実である。まさかこんなにも人数が集まるとも思ってなかったこともあって、自分でもどうしたらいいのかというのは日々悩んでいるところではある。

「移住支援」と呼ばれる活動は、以前から沼津市が中心となって、他の多くの団体や企業も行っている。ただ、それらが手を差し伸ばしているのは「これから移住したい人」の方向に向かっていることが多い。まずは移住希望者に移住を決断してもらうこと、そのために大きな人生のターニングポイントを迎える人が多いという点からも、住む場所の提案や働く場所を探すための支援というのは役立つことは間違いない。

しかし、地方への移住というのは「ゴール」ではなくむしろ「スタート」であり、実際に移住した後にある生活という道のりで、大小さまざまな悩みによってつまずいてしまう人も決して少なくはない。そういった人たちが、かつての自分のような「孤独」を感じて悩むことがないように、地域でのつながりを持つきっかけとなるコミュニティとして存在しているのが、うみねこである。つまり我々が、移住支援として手を差し伸ばしている相手は「移住をした後の人」であるのだ。

そういったコミュニティに求められるのは、大きな目標に突き進むより、継続されてそこに存在することなのではないだろうか。

よく雑談の中で「うみねこの次の野望はありますか」と聞かれたとき、自分は「野望を持たないことが野望」と返している。もちろんマネタイズとか、法人化とか、そういったことが理想として語られるのだろうけども、少なくとも今の自分はあまり興味がない。なぜならそういったことをすると「続ける」ということに過大な労力を割かなければならなくなるからである。

ただ、持続のために「現状維持」をするのかというと、それも違うと思っている。今自分が危惧しているのは、コミュニティ自体がかつての自分のような地域から浮いた存在になってしまうことである。

ただの「仲良し飲み会グループ」のまま終わらせるにはあまりにももったいない人数だし、各方面から期待の眼差しも感じている。そういった中で、次の行動を考えていくつもりであるので、ぜひとも暖かく見守っていただければ幸いである。


[PR] 1周年記念イベントのお知らせ

うみねこの1周年を記念して6月16日(日)に沼津の「ねこと白鳥」というバーを貸し切ってイベントをやります。沼津に住んでなくても、うみねこのメンバーでなくても誰でも参加できる手作り感満載のパーティです。

地方移住をしたメンバーが多く会場に居ますので、移住に興味がある方や、当日たまたま沼津に居るという形はぜひご参加ください。