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メタバースとAI領域で、未来を先取りした職種の創出は可能なのか?私の働き方実験 #研究報告書

本記事は、ランサーズ新しい働き方LABの「研究員制度」の活動の一環として、私個人が行う「働き方実験」についてまとめたものです。

https://hosting.lancers.jp/lp/lab_researcher/

<今回の実験計画書>

◆実験のタイトル

メタバースとAI領域で!未来を先取りした職種の創出は可能なのか

◆実験の目的と背景

メタバースによって今後どのような企業がどのような事業を立ち上げることになるのか。そしてその結果としてどのような仕事や人材が必要になってくるのか。

 もともと今回の活動に応募したきっかけは、今回の指定企画の1つにあったメタバースというキーワードがきっかけでした。
 実は最近、女性のパラレルワークを推進するコミュニティで、大阪万博に向けてメタバース上でのイベントをやりたい!という話が持ち上がりました。
 私自身は、はるか昔に一時期話題となったセカンドライフ、という仮想空間を少しだけ使ったことがあるのですが、最近のプラットフォームはclusterを少しだけ体験したくらいで、若干この世界からは遠ざかっていたのが正直なところです。
 ただ日頃から(女性のパラレルワークとメタバースは、実は相性が良いのでは)と思っていました。メタバースというと、どうしてもプログラマーなどの技術職を想起しがちですが、例えばメタバース上のコミュニティオーナー/コミュニティガイドやイベントのファシリテーション、バーチャルオフィスのオペレーション・ガイド、キッズ向けサービスのリーダーなどは、女性に向いている職種かと考えています。

 また女性の場合は、出産・育児・介護などでキャリアが分断されることも多く、家庭と仕事の両立が難しいという課題をお持ちの方も少なくありません。また年齢が上がるにつれて新しいキャリアの機会も激減するのが実情です。一方メタバース空間では、時間・場所・年齢・そして性別の制限を超えた活動が可能であり、私自身はそこに大きな可能性を感じています。

 ただし、そういった職種の創出をマネジメント出来るシステムがまだ出来ておらず、例えばあるメタバース専門の仕事紹介サイトではポストの応募面接だけで数か月待ちという状況です。またそういったキャリアに関心を持ちながら、どうやってそういう機会に飛び込んだら良いのか、入口で迷っている方もいらっしゃると感じています。

 こういった状況を打開し、女性がメタバース上で仕事が出来るようなビジョンを描ける仕組みを創れたら、と思い、それを研究の目標とすることにしました。

◆当初想定の活動概要


活動の内容について大まかな流れとして考えてたのは以下の通りです。

1)マーケットリサーチ
(情報収集、事例研究、ニーズ分析、ユーザー調査など)
2)メタバースに興味のある女性コミュニティのローンチ
3)テストマーケティングのプラットフォーム選定
4)選定したプラットフォームを使用したイベントの開催
5)イベント実施による課題分析、仮説立案、事業計画策定
6)企業へのコラボレーション提案

◆実験の測定方法

ゴール:
1)メタバース上での女性向けキャリアに関するコミュニティを構築
2)テストイベントの実施
3)本事業計画の策定
チャレンジゴール:
実際に企業に提案し、案件化を目指す

◆スケジュール

2022年6月中旬~12月中旬の6か月間

<実際に行った活動概要>


1)マーケットリサーチ(情報収集、事例研究、ニーズ分析、ユーザー調査など)

まず「メタバース」に関する知識を得る必要があったため、複数の関連書籍、各種文献、webリサーチなどを、集中して行った。
参考にした書籍は以下の通り。

このほかにも、「メタバースとWeb3」(國光宏尚・著)、「テクノロジーが 予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる」(伊藤穰一・著)、「世界2.0 メタバースの歩き方と創り方」(佐藤航陽・著)、「図解ポケット メタバースがよくわかる本」(松村雄太・著)、「60分でわかる! メタバース 超入門」(武井勇樹・著)など、入門書からビジネス書まで、とにかく読み漁ってみた。
各著それぞれフォーカスしているところは少しずつ異なるが、バズワードとしてしか認識していなかった「メタバース」というものが、どのようなものか、少しずつ見えてくるようになった。
またメタバースやXRに関連するイベントやセミナー、各プラットフォームやデバイスを実際に利用するなど、知見を深める活動を行った。

2)メタバースに興味のある女性コミュニティのローンチ
6月の時点でFacebookグループでコミュニティの設定は行ったものの、まず自分自身がメタバースの知識を得ることを優先したため、実際に参加を呼びかけするようになったのは、10月になってからとなった。

女性のキャリアに関心のあるコミュニティ、ビジネススクールの同窓生、新しい働き方ラボのコミュニティなどに参加告知をしたところ、約2週間で約50名のメンバーが参加してくださった。

当該コミュニティ「Women’sMetaverse Network (ウイメンズ・メタバース・ネットワーク」では、様々なプラットフォームの体験会(Spatial、Clusterなど)、Vroid制作ワークショップ、メタバース勉強会などを複数回実施。またメタバースやXRに関する記事の紹介などを、平日はほぼ毎日行っている。

3)テストマーケティングのプラットフォーム選定
現在は、Women’sMetaverse Networkでの活動の中で、様々なプラットフォームの対象ユーザーやカルチャー、使用環境などを試している段階である。何度か国内外のプラットフォームを試す中で、課題も見えてきた(後述)。

4)選定したプラットフォームを使用したイベントの開催
メタバースのプラットフォーム上ではないが、Facebookグループ内で、メタバース関連の勉強会、体験会、3Dモデル制作ワークショップなどを実施。参加者は実際に2Dメタバースや3Dモデル制作が初めてという方が殆どであったが、全員が無事に体験・制作が出来たことで、実践的なコミュニティ活動が継続出来ている。

5)イベント実施による課題分析、仮説立案、事業計画策定
6)企業へのコラボレーション提案
これらについては、今後のコミュニティ活動の中で進めていく予定。

<結論と根拠・気づき>

活動開始当初は、「メタバースって何?」という状況からのスタートであったが、このラボの機会があったお陰で今まで知らなかった世界が開けてきている。

日本ではメタバース=ゲームのようなイメージが強く、コンテンツが最重要、というような雰囲気があるが、産業メタバースの情報も併せて収集することで、メタバース(というかXR)の大きな可能性を感じるようになってきた。

そもそもは仮想世界では、時間・場所・ジェンダーなどに捉われない働き方が出来ると言われており、それが女性のキャリア構築に朗報になるのでは、というところから関心をもった活動だったが、例えば高齢者やハンデのある人、あるいは才能のある若者などにも、大きなチャンスをもたらす可能性を感じている。

ただし、幾つかの課題も見えてきた。例えばインフラは、メタバースでの活動にとっては命綱といえるものだが、現状では高速な回線や高額なデバイス(ヘッドマウントディスプレイなど)、高性能なPCなどが不可欠になっていて、それなりにハードルが高い。これらを克服することが、メタバースで普通の人が働きやすくなる最低条件となり得ることが分かってきた。

また、現在日本ではメタバース=ゲーム、エンタテイメント、という雰囲気があり、かつて大企業が次々に参入して上手くいかなかったセカンドライフの二の舞になるのではないかという懸念もある。実はセカンドライフはそういった段階を経て、現在では一定の層が活発に活動する1300万人を擁する一大コミュニティになっている。ポイントは「コミュニティ」である。企業などが作ったお仕着せのシステムやコンテンツではなく、セカンドライフでは人との繋がりこそが最大のリソースになっており、それは現在のメタバース(特にSNSメタバースと呼ばれるもの)の命運を握っていくものになるのかもしれない。
そう考えたとき、メタバースが本当に私たちの生活に欠かせないものになるためには、企業や大きな組織が用意した何かだけではなく、個人同士の繋がり、コミュニティ体験の在り方に鍵がありそうだ。

そう考えたとき、メタバースという一見最先端の技術を駆使したフィールドであっても、エンジニアやクリエイターなどではない普通の人たちにも活躍の場はあるのではないかと考えた。
下の図は有名な起業家のJon Radoff氏による、メタバースにおける7つのレイヤーを示したものである。

これによれば、このレイヤーの1番外側で一番円が大きいのは「体験」となっている。メタバースで未来を先取りした技術的な職種の創出は、もちろん可能だろう。しかし「体験」というレイヤーでは、誰もが新しい職種を創出することが出来る可能性がある。インターネットも最初は軍事用、その後は学究目的でしか使用が許されていなかったが、その頃誰がインターネットを使ったユーチューバーという職種を想像出来ただろうか。同じような現象が起こることは、メタバース周辺でも十分に考えられる。

<結論>
メタバースとAI領域で!未来を先取りした職種の創出は可能なのか
→十分に可能。そしてそれは普通の人にも可能性が開かれている。

<研究に関する考察・これから>

今回の活動で一番大きかったのは、Women’sMetaverse Networkのコミュニティを立ち上げることで、エンジニアでもクリエイターでもない普通の女性たちが、メタバースに大きな期待を寄せていることが分かったことだった。メタバースの可能性を感じながらも、現在の日本の状況ではそこに入っていく入り口が少ない。多くのSNSメタバースは堅めのビジネスあるいは一定以上の大人には入りにくい独特の雰囲気がある。

一方で、アバターを利用することによる心理的安全などの研究も進んでおり、女性の多い対人支援(コーチングやカウンセリングなど)の領域で、メタバースを利用するような需要は増えてくるのではないかと感じ、同じようなことを感じている女性が多いことも分かってきた。

Spatial 体験会での集合写真

メタバースと日常を、抵抗感なく行き来するようになるためには、もちろん高速回線や低価格のデバイス、高性能PCなどのインフラ面での充実が不可欠だが、もう一つは、例えば「大人の女性が利用したくなるようなメタバース空間」があっても良いのではと思い始めている。

今後は、Women’sMetaverse Networkの中で、仮説検証を繰り返しながら、どのようなプラットフォームで、どのようなサービスが創造出来るのかを固めていきたいと考えている。

1月には早速、メタバースでの対人支援を行うために、どのような環境や要件が必要かなどをブレインストーミングするイベント、またメタバース上での女性のキャリアをディスカッションするイベントなどを実施する一方で、メタバースに関する勉強会や体験会も重ねていく予定にしている。

そのうち、自分たちが本当に使いたいメタバース・プラットフォームを、自分たちで構築出来る日が来るかもしれない。

<全体振り返り>

実は今年は個人的には波乱の一年でした。研究スタートと同時に家族がコロナに感染、同じ時期に実家の実父が突然入院する騒ぎがあり、父の入院中に今度は母の大病が判明するという事態に。仕事では、コロナで一時凍結されていた人事異動が解禁になり、上位組織のメンバーの半分が総入れ替え、直属の上司も異動になるというバタバタ。
ほかにも、プロボノ活動があったり、ビジネススクールの授業があったりと、息もつけないような状況でした。

そんな中での今回の研究活動だったのですが、私自身はこの活動があったことで1本筋がピーンと通った感じで、周囲の状況がどうあれ、この研究をしっかり進めたいという思いに突き動かされ、夢中になることが出来ました。朝4時半に起きて書籍や文献を読んだり、残業が終わった後にコワーキングスペースからWomen’sMetaverse Networkのオンライン体験会をやったり、通勤中に関連するニュースを集めたり・・・。それは私を夢中にさせるだけの魅力がありました。コミュニティに注力したため、あたらしい働き方ラボのイベントや部活には、残念ながらほとんど参加が出来なかったのが唯一の心残りです。

いまは、まだ暗い時間に出勤し、真っ暗になってからオフィスを出て、四季もわからないような毎日ですが、初めてVRデバイスから見たメタバース空間の、息をのむような世界に魅了され、いつかはそこが仕事場になると面白いなあと本気で思っています。ただ、まだ現在は自分が居たい場所やサービスが世の中には出てきていない状況です。
それなら、創ってしまえば良いのでは?などと思ったり。

そう、誰もが自分の夢に見た世界を実現出来る、それがメタバース空間なのですから。

最後に。
このような機会をくださったランサーズの皆様、あたらしい働き方ラボの皆様、同期の研究員の皆様、本当にお世話になりました。ありがとうございました!


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