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[WS音源探訪01] Vital

星の数ほどあるシンセサイザー音源の中から「ウインドシンセにあう音源」の視点でいろいろ探してみた記録です。今回はVITAL AUDIOのVITALを試してみました。

VITAL概要

Wabetable方式ポリ発音シンセ, Mac/Win プラグイン、スタンドアロン
無料〜$80   https://vital.audio/

 定評を得ているWavetableシンセの中では唯一(?)無料版があり、Pro版でも買い切り$80と充分な低価格で導入しやすいのが嬉しいです。ユーザー数も多くいろいろな紹介ページやyoutube動画もあがっていますので、シンセとしての概要や特徴はリンク先(感謝)をご覧いただければと思います

また、ウインドシンセとしての使用についても、プロフェッショナルwoodwinds/electrowinds奏者のStef Haynes氏がyoutubeで解説したりパッチを販売されていますので、それを見ていただければ「使える!」ということは一聴瞭然かと思います。


と、ここまですっかり他力本願な紹介になりましたが、以下は自分の感想。

結論

 ウインドシンセで充分使える。息で何でも自由にモジュレーションできてパッチ毎に保存できる。Wavetableまたはアナログシンセ的な音作りがしたくて無料または$100以下なら最強かも。

メイン画面

機能概要

・Wavetableオシレーター3基と主にノイズサンプルを重ねるためのサンプル再生オシレーター
・フィルター2基(lo-pass以外にも多彩、並列直列可)
・自由にカーブ設定(手書きも可能)なエンベローブ、LFO
・ほぼ全てのパラメーターにMIDI Learn可能
・ほぼ全てのパラメータにブレス(After touch)その他でモジュレーション可能。モジュレーションは自由にカーブ設定(手書きも可能)最大最小値設定・反転も可能
・CC#2も間接的に使用可能
・順序が任意に入れ替えられるマルチエフェクト。エフェクトもブレス等でコントロル可能。

エフェクト画面

どんな音が出るの?

一言で言えば、アナログシンセと同じことができますし、wavetableを利用して複雑な音色変化を簡単に息でコントロールすることができます。
 wavetableシンセなのでオシレータで鳴らすwavetableを選んで、あとは変調→フィルターというアナログシンセと同じ考え方で。無料版でも相当な数のwavetableを持っていますし、有料版はさらに使えるwavetableが増えています。wavetableの中には通常のアナログシンセ波形(SAW、Pulse、Sin等)も含まれますので、これを使えば普通にアナログシンセと同じ音作りができます。ブレスでパルス幅を変えたりブレスを使ったオシレーターシンク(と同じ音色変化)もできます。

 wavetableは上の図の中央で3D表示されているもので、これの場合一番手前がサイン波、奥側がパルス波になっています。少しずつ違う波形(Wave Frame)をたくさん並べているわけです。並べているWave FrameをエンベローブやLFOでパラパラめくって、簡単に複雑かつなめらかな音色変化を得ることができます。普通のアナログシンセだと、こういう音色変化を得るためにはややこしい変調の設定が必要ですが、Wavetableの場合はFrameを変えるだけ。そしてウインドシンセ的には、息の強弱によってFrameをめくることで複雑な音色変化を簡単に得ることができます(やり方としては後述のマトリクスモジュレーションでOSC Wave Frameを動かす)。

ブレスコントロールの自由度

 ウインドシンセ的に気になるところは、ブレスで何をどのようにコントロールできるかですが、Vitalが初期設定で使える外部モジュレーションソースはAT、MW、Note、PB、Velocityです。ですので一般的にはコントローラーから息の信号として、AT(Aftertouch)を出すのがおすすめです。
 間接的にCC#2も使えます。Macroノブというのが4つありますので、たとえばMacro1ノブにMIDI LearnでCC#2をアサインすれば、モジュレーションソースとしてMacro1を選ぶことで間接的にCC#2を使えます。
 ほぼ全てのノブにMIDI Learnできるので、たとえばボリュームとフィルターカットオフのスライダーに直接MIDI LearnでATやCC#2をアサインしても良いのですが、カーブ設定はできないことと、MIDI Learnの設定は音色パッチ毎には記録されないため使いにくいので、モジュレーションマトリクスを使うのがおすすめです。下がモジュレーションマトリクスの設定画面。

モジュレーションマトリクス画面

例えばATで最大最小値・反転・手書き含む任意のカーブが設定できます。NuRAD本体のブレスカーブのZ1やZ2の挙動をEWIで再現することだってできちゃいます。ATでなくどうしてもCC#2を使いたい場合は、前述のようにMacroノブにCC#2をアサインしておけばOK。PB(ピッチベンド, VitalではPitch Wheelって表記)が使えるのは結構珍しい仕様なので個人的には嬉しいです。
一言で言えば息で何でもできる自由度MAXの仕様になってます。しかもわかりやすい。

グライドは使える? その他コントローラーは?

グライド使用可能です。メイン画面のGlideノブにMIDI Learnでアサインするか、Macroノブにアサインすれば使用可能です。その他のMIDI信号でコントロールしたいコントロールも同様。

パツパツ音は出るのか消せるのか

 ウインドシンセ奏者の悩み、音の出だしと終わりにパツパツ音が出てしまう点について。結論から言うと、MONO発音であれば消せます。方法例としては下記1〜4を組み合わせます。

1.メイン画面下のほうの「VOICES」を1(同時発音数1)にしたうえでその少し右側の「LEGATO」を有効にする。
2.モジュレーションで、ブレスでフィルターカットオフを全閉(ゼロ)からコントロールする
3.各OSCのLEVELをブレスでコントロールする
4.ENV1(VCAのENV)で、ATTACKとRELEASEをほんの少しだけ上げる
4.はやらなくてもOKな場合がありますので(ATTACK、RELEASEともゼロでも良い)吹きながら調整。

 ポリ発音の場合はパツパツは消しにくいです。ATTACKとRELEASEを長めに調節するしかないかも(まだ研究不足)・・
 この辺の感じは、他のシンセでよくある傾向と同じですね。パツパツ問題に関しては特に優位でもなく劣っているわけでも無いので、使いこなすしかない感じ。

Vital特徴的機能(入力テキストを喋って演奏できる)

 Text to Wavetable機能はVITALの特徴と言われてます。これが無料版でも出来てしまうのは超強力です。入力した単語を喋ってくれる機能です。音階をつけられるので普通にウインドシンセでしゃべったりスキャットできます。リセットに入っている「Text To Wavetable Template」を開いて、しゃべりたいテキストを入力するのが第一歩かと思いますがこれもこちらの解説がとても詳しいのでご紹介にて。

イマイチな点は?

 初見の操作性はとっつきにくいですよね。アナログシンセであればここらへんにあるはず・・・というパラメータが別のところにあったりしますが、慣れてしまえばわかりやすく操作しやすいと思いますのでデメリットとは感じません。
 MIDI Learnが音色パッチ毎に保存できないのもプラスポイントではありませんがモジュレーションマトリクスが極めて充実しているのでデメリットとは感じません。
 パツパツ問題に関して、プラスポイントはありませんが他のシンセと同レベルなので、マイナスはつけられないかなと思います。
 唯一イマイチな点でしょうか、フィルターカットオフを息で開閉したときのブチブチノイズが少し目立ちます。最近のシンセはこれがとてもきれいなものも多いので、ちょっと残念な点。ただし、デチューンや変調した音色であれば目立たなくなりますし、伴奏付きでにぎやかな曲を演奏したりすれば実質問題無いレベルなので充分使えるというか、問題ありません。

まとめ

 というわけで、ウインドシンセ用に使えますVital。無料でこの自由度でMacでもWinでもどのDAWでも使えるのも大きなメリットですね。ただ、波形も豊富だったり機能も多いので、逆にめんどくさい、と感じてしまうかもしれませんね。Stef Haynesさんのパッチを買ってしまうのもありかもしれません。Wavetableシンセ触ってみたい!という場合の第一歩には好適と思います。今回自分で触ってみてこんなに使えるんだ!と思いました。

 自分的にはWavetableシンセはArturiaのPigmentsを導入済みなのでVITALをメインにするかは微妙ですが(Pigmentsのほうが後発だけあってマトリクスモジュレーションの設定操作が更にしやすくていじっているだけで楽しい)、ウインドシンセパッチ集でも作ってみようかな・・・・

[2022/4/10追記]・・というわけでパッチ集つくりました。

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