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音源設定メモ04 Roland SE-02 その04 あるいは「NuRAD / NuEVI / EWI5000奏者のためのはじめてのRoland SE-02 その2」

〜ウインドシンセ用の音源の設定の備忘録シリーズです〜。「NuRAD / NuEVI / EWI5000奏者のためのはじめてのRoland SE-02 その2」。
SE-02を買ってきてまず最初にウインドシンセで吹いてみる、というときのケース例として。

 長いのでまず結論だけまとめると、ウインドシンセ演奏に適するSE-02用デフォルトのシンプル音色を作ったので、それを見ながらSE-02のパラメータを解説していこうというお話です。余談が多く入っているのでとりあえず太字のとこだけ読んでいただければ重要なとこは把握できます。

本稿は前回(https://note.com/windsynth/n/n92f7bc33ecf8)の続きです。前回はSE-02に入っているプリセットをウインドシンセで演奏するためのコントローラー側の設定と、いじると楽しいツマミのお話でしたが、プリセットの設定パラメーターがブラックボックスなので、それ以上進むにはなにか基準となるパラメーターが明らかな音色があったほうが良いということで、僕が基準用に作ったデフォルト音色をご紹介しました。今回はこのデフォルト音色の各パラメータの簡単な解説を中心にお話します。

デフォルト音色「No.70」

自分の中では「70番音色」として定着しているのでこの解説では以降この音色をNo.70と呼ぶことにします。VCO1つ、SAW波のみ、EGなし、ブレスでVOLUMEとCUTOFFを変えるだけの超シンプルな音色です。しかしSE-02の素性の良さでしょうか、低音から超高音までノイズの少ない伸びのある太くて通る良い音が楽しめると思います。フィルターの開き方だけ個人の奏法や好みにあわせてCONTOURを微調整、お好みでショートディレイ、最後にリバーブをかければこれだけで気持ち良くなれること間違いなし、これだけでもOK!とも言えますが、それでは解説にならないので、続けて書いていきますね。
音色パラメータは下図の通り(前回と同じものの再掲です)。まずは何の音色から初めても構いませんが、必ず全てのツマミとスイッチを1回は操作して(各ツマミの設定値をリセットする意味)、この図の通り設定して、ご自分のユーザーバンクに保存してください(できればNo.70にいれていただけると嬉しい)。

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コントローラー側の設定は、前回の設定での「設定2」(下記)をおすすめします。
NuRAD / NuEVIの場合、本体のSETUP BRから
BRTH CC A = VL (VL+ではない) (VL=VOLUME=CC7のこと)
BRTH CC B = OFF
CC B RISE = 1x
BREATH AT = ON
VELOCITY = 100 (いくつでも良いがとりあえず100。DYNにはしないこと)

EWI5000の場合、
ブレスセンサーからVOLUMEとAT(アフタータッチ)が出るように設定。CC74は出さない。
VELOCITYは固定で例えば100。

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以降、各パラメータを解説していきます。

CONTROL

GLIDE(ノブ)はとりあえず0にしてます。かけたい時はコントローラーでCC5でグライドをかけます。
・GLIDE TYPEの選択は「お好み」ですが、No.70では僕の好きな「EXP」にしています。EXPにするとスラーで吹いた時に音の切れ目がもっともなめらかです(ポリシンセで言うところのレガートモードみたいな感じ)。OFFにすると、スラーで吹いてもわずかに切れ目が入ります(ポリシンセで言うところのポリモードみたいな感じ)。LINはその中間。僕はなめらかなのが好きなのでEXPですが、フュージョン系とかはあえて切れ目を入れたほうが曲に合う場合もあります。
 実際のところEXP、LINもグライドツマミをゼロにしていても実際には極めて短いグライドがかかっているように感じます(高速オクターブ往復フレーズをやるとわかる)。これのせいで、他の音源や通常のEWIに慣れていると最初は高速フレーズが吹きにくいかもしれません。ずっとSE-02で練習しているとそれなりに慣れますけど。
なお、OFFだとCC5を送ってもグライドしません。EXPとLINはグライドのかかり方のカーブが異なります。どちらにするかはお好みです。
・ちなみに超マニアックな設定として、NuRAD / NuEVIはグライドに対してCC9と同時にCC5を送信するというSE-02用に追加されたと思われる設定項目があります。これを使うと普段はGLIDE OFFで演奏、グライドしたいときだけLINまたはEXPに切り替えてCC5でグライド、ということができます。
(SETUP CTRLS→GLIDE MOD SEE or SEL。詳細はhttps://note.com/windsynth/n/n73176f347e02で紹介した自家製マニュアルPDFを御覧ください)
WHL MIXはモジュレーションホイール(CC1)の効き方を設定するところですがウインドシンセ的にはあまり使わないと思うのでとりあえず気にしなくて良いと思います。デフォルトとしてはセンターにしています。(これの上手な使い方をご存知の方は教えてください!)

OSCILLATORS

SE-02は3つのオシレータがあります。メインで鳴らすオシレータ(VCO)のRANGEは8がお勧めです。8にするとNuRAD/EWIのオクターブローラー操作の領域にぴったり適合します。通常VCO1をメインにすることが多いのでNo.70ではこれを8にしています。波形はスタンダードにSAW波。VCO2はとりあえずVCO1と一緒のRANGE=8。VCO3はオクターブ下を重ねやすいように、および XMOD3を使いやすいようにRANGE=16にしています。本体のVCO1の位置にあるTUNE(画面には出ていない)は全体のチューニング(440Hzとか442Hzとか)用に使用します。VCO2とVCO3のFINEはNo.70ではとりあえずゼロにしてますが、アナログシンセなのでピッタリゼロは不可能です。どうやってもわずかにデチューンがかかってしまいますがそこは味であるとあきらめます。どうしてもデチューンしたくない場合はVCO1とVCO2に関してはSYNC=ONにすれば、デチューンゼロになります。VCO3はデチューンゼロにならないので、デチューンしたくない場合はVCO3はMIXERをゼロにして発音しないようにしましょう。なおVCO3のFINEはSE-02の個体差によって微妙にデチューンする位置が違うとも考えられるので、ご自分のSE-02で一番デチューンしない位置を見つけて保存しておくのが良いと思います。No.70ではSYNC=ONをデフォルトにしていますので、VCO2を使ったデチューンサウンドが欲しい場合はSYNC=OFFに変えて、FINEを少しずらしてください。またNo.70では波形はVCO1,2,3でそれぞれ変えておき、MIXERで各OSCを上げるだけで違う波形が重なるようにしています。
ENV1はFILTER/ENVELOPESセクションにある上段のEG(フィルター用のATTACK,DECAY,SUSTAIN)の設定でVCO2のピッチをどれだけ動かすかを設定するツマミです。MIXERセクションでOSC1をゼロ、OSC2の音量を最大にあげた上で、SYNC=OFFにしてからENV1を動かしてみると、音程が大きくかわるのがわかると思います。ここでSYNC=ONにしてみましょう。ENV1を動かすと音色が変調されてクワークワーとなりますね。いわゆるハードシンクの音色です。そのままでも良いですが、高域が強調された音になったところでVCO1のSAW波と重ねてみましょう。結構良くないですか?
ちなみにウインドコントローラーからブレスでCC27(VCO2のFINEをコントロール)を送信するようにして、SYNC=ONにして、VCO2をパルス波にして、ENV1を調節するとブレスで変調しながらクワークワー鳴る、マイケル・ブレッカーが良く使うシンク音色になります。
KYBDのスイッチはVCO3のピッチが鍵盤に追従するか否か、XMOD to MWのスイッチはモジュレーションCC1でXMODをどうするか、のパラメータですがウインドシンセ的にはあまり使用しないと思うので気にしなくても良いかも。

XMOD

とりあえずNo.70のデフォルトでは全てゼロにしています。音色の味付けにはもってこいのパラメータなので気軽にいじってみて、気に入らなければゼロにもどす、という楽しみかたもアリと思います。多くの場合、歪んだり荒れた音が加わります。VCO3のRANGEがVCO1,2より1オクターブ以上低い状態だと効果がわかりやすいです。またO3-PW1,2はVCO1,2がパルス波形の時のみ効きます。モジュレーションソースはVCO2またはVCO3の波形です。MIXERでOSC2、OSC3の音量を上げていなくてもXMODの効果が得られます。

MIXER

No.70ではVCO1のみ10(最大)にしています。各VCOのバランスをとって音色づくりをすれば良いのですが、VCO1=10を基準にしてVCO2,3をどんどん重ねていくと、パッチ全体の音量が大きくなってしまいVCO1だけ使っている音色と複数のVCOを使っている音色で音量感がズレてしまいますので、必要に応じVCO1を5〜8くらいまで下げてから他のVCOのバランスをとっても良いかもしれません。
FEEDBACKはNo.70ではとりあえずゼロにしていますが、これを上げるとディストーションのような効果が得られます。上げすぎると、周期的な雑音が混ざるような効果になることもあります。明らかに歪む前くらいに押さえておくと適度に音が太くなるかもしれません。ある程度音色をつくった上で最後に味付けでツマミを回してみる、というのが最初の使いかたかと思います。
NOISEはウインドシンセではあまり使わないと思いますのでNo.70ではゼロにしています。XMODやFEDDBACKで歪ませたうえにさらに歪感を出すのにはアリかもしれません。

FILTER

CUTOFFはまずはゼロに設定すれば問題ないと思いますので、No.70でもゼロにしていますが、弱く吹いた時と強く吹いたときの音色の差を小さくしたいなら、ある程度CUTOFFを上げておくのもアリと思います。なお前回説明したコントローラー設定1、すなわちCC74でCUTOFFをコントロールする場合CUTOFFノブの設定値はブレスで変わるので設定しても意味がありません。アフタータッチを使用している場合、CUTOFFノブで設定した最小値からフィルターが開いていきますが、息でフィルターをどこまで開かせるかと、開き方の傾きをCONTOURで調整します。フィルターの開き方を最も簡単に変えるにはスイッチひとつで調整できるKEY TRACKを使用することも全然アリです。KEY TRACKは鍵盤の音が高いほどフィルターが開きやすくするものです。1/3単独ON、2/3単独ON、1/3と2/3両方ONの順で開きやすくなります。No.70では両方OFFにしていますが、ONにしていただいても全然構いません。僕も普通に1/3をONにすることはよくあります。
 No.70では、ブレス最大でもあえてフィルターが少しだけ閉じた状態になるように作っています。CUTOFF、CONTROUR、KEY TRACKを少し上げると、フィルター全開になります。最初にも書きましたが、ブレスでどのようにフィルターをコントロールするかがウインドシンセ奏法でのキモと思います。息の使い方は奏者によって異なりますので、CUTOFF、CONTOUR、KEYTRACKの値は自分にとって一番気持ちいところを注意深く探ってみてください
 なお、アフタータッチ(AT)を使用している場合のATのかかり方ははPATCH SETUPの[4] After to VCFの値も大きく影響します(COMPとPLAYボタン同時押し→[4]のあとVALUEノブで調整)。No.70では無難な値の80にしていて多くの場合はこれで問題ないと思いますが、さらにこだわる方は、このパラメータも併せてフィルターのかかり具合を調節してみてください。
 さらに、ENVELOPESの上段SUSTAIN(フィルター用のSUSTAIN)もカットオフの開きの最大値の上限に影響しますので、こだわる方はここもあわせて調整。でもSUSTAINの優先順位は低いと思います。
EMPHASISは一般的なシンセでいうところのレゾナンスのことです。No.70ではゼロとしていますがお好みですので、ミョンミョンさせたい場合やクセのある音色を足して味付けしたい場合に上げていきましょう。SE-02の場合これを単純に上げるだけだと少し音が細くなる気がしますので、MIXERのところにあるFEEDBACKを同時に少し上げてやると音痩せを補えます。
CONTOURの下のNORM-INVERTスイッチは通常NORMにします。EMPHASISを積極的に使った音作りをしたい場合はINVERTにしてCUTOFF,EMPHASIS,CONTOURを調節してを使うこともあるかと思います。

ENVELOPES

ウインドシンセなのであまり音の立ち上がりにクセはつけないこととして2つのATTACK、DECAYはどちらもゼロに、2つのSUSTAINはとりあえず最大値にします。ちなみに中段がVCF用のADS(R)、下段がVCA用のADS(R)です。鍵盤シンセではADSRでコントロールするVCAもVCFも、ウインドシンセなのでブレスでコントロールできます。強くアタックして吹けばATTACKゼロで短いDECAYの音、ふわっと吹きだせばATTACKが長い音を息で表現できます。シンセとしてのEG無しで吹奏表現を磨くのもアリだと思います(もちろんそれで表現しきれない音色をシンセ的に作るものを否定するものではありませんし、生音でできないシンセ的表現を積極的に活用すべきというのも正しいと思いますが。Judd音色とか)。
・なので他のスイッチ群もEGに関わるところなのでNo.70では全て無効状態です。MTRIGスイッチはスラーで吹いてもトリガー(EG)がかかるようにするもの。いわゆるJuddっぽい音を作りたいときは使いますが今回はとりあえずOFFのまま。RELは、DECAYの値をリリースとして使うときに設定するスイッチですがこれも今回はとりあえずOFF。LFO/GATEのスイッチは特に意味はないですがとりあえずGATE側。

LFO

LFOは鍵盤シンセ的には自動ビブラートをかけたりする時に使うのがよくある活用法ですが、ウインドシンセなのでビブラートはブレスやビブラートセンサー(ベンド信号の揺れ)を使った奏法でかける、ということでNo.70ではLFOは全く使っていません。LFOセクションのパラメータの中ではOSCをゼロ、FILTERをゼロにすることで他のツマミ・スイッチがどの位置でもLFOは無効になります。なので他のツマミの説明は割愛。

DELAY

No.70ではAMOUNTはゼロにしてDELAY無効としていますが、TIME、REGENとも2といういわゆるショートディレイの設定にしてありますので気が向いたらAMOUNTだけ2〜5くらいに上げれば簡単にショートディレイを使った音作りになるようにしてます。外部エフェクターでリバーブをかければショートディレイ+リバーブという、ジャパニーズフュージョンで良くあるセッティングになります。

セットアップ・パラメーター(PATCH SETUP)の説明

ツマミでは無く、COMPボタンとPLAYボタン同時押し+数字ボタン+VALUEツマミで設定するパラメータです。音色パッチ毎に設定して保存できます。
[1] BENDはピッチベンドの幅。通常2。
[2] MODWはモジュレーションホイールの効き方。とりあえず使わないがプリセット音色では127の設定が多いのでそのままにしています。
[3] AT OSC MはアフタータッチでオシレーターLFOにかかる量をコントロールするもの。プラスにするとピッチ変化幅が多いLFOビブラート になりますが特殊効果を除いてウインドシンセでは使わないと思うのでゼロ。
[4] AT VCFは前述の通り重要。アフタータッチによるVCFの開き方を決めます。プラスにすると開きやすくなります。フィルターの開き方がCONTOUR ツマミでの調整で満足できない場合は、ここもいじってみてください。
[5] DYNAはベロシティでフィルターが開くレベルを決めます。ウインドシンセではベロシティ無効が一般的なのでゼロ。
[6] VOLUMEはパッチ全体の音量でとりあえず127にしてますが、CC7で動きますのでウインドシンセで使う前提であれば0でも鳴ります (0のまま鍵盤シンセで鳴らそうとしても鳴らないのでそれを避けるため127にしてます)。今回ご自分でウインドコントローラーを使いながら作って保存した音を鍵盤シンセで鳴らそうとしても鳴らない場合は、ここがゼロになっている可能性が高いです。
[7][8] ver1.1.1から追加の機能でLFOでVCOのパルス波の幅を変えるものですが、ウインドシンセではまず使わないのでゼロ。

その他のSE-02情報源

・Roland SE-02公式ページ(Japan)
 https://www.roland.com/jp/products/se-02/
・公式サポートページ Q&A、ファームウェア/ドライバアップデート、取扱説明書、MIDIチャート等
https://www.roland.com/jp/support/by_product/se-02/
・STUDIO ELECTRONICS SE-02公式ページ https://www.studioelectronics.com/products/desktop/SE-02/
・STUDIO ELECTRONICS製 SE-02 Editor (SE&Roland公式エディタ)有料。 ※この解説中のパッチ画像はこのエディターで画面のクリーンショットを使用しています。
https://www.studioelectronics.com/products/Software-Editors/SE-02/
・Sunshine Jones氏のSE-02解説、取説、ファクトリーパッチ、オリジナルパッチ等
http://sunshine-jones.com/roland-boutiquestudio-electronics-se-02-the-missing-manual/
・Sunshine Jones氏作成の、最新Firmware1.11verのマニュアル直。Roland公式取説ではよくわからないところも解説されてます。必読です。      https://www.manualslib.com/manual/1648604/Roland-Se-02.html

・Five G さんのSE-02レビュー。minimoogとの比較から各パラメータへも言及が有りマニュアルに無い知見が得られます。http://fiveg.keyboard.jp/2017/07/09/roland_se02/

まとめ

長文スミマセン。半年ほどSE-02をウインドシンセで使ってきた個人的なメモを長々と書いてみました。SE-02を使っているウインドシンセプレーヤーも結構多いようですがWEB上には何も情報が無いようですので、もしこの記事が少しでもお役にたてば幸いです。感想・間違い・的外れ・もっとこうしたほうが良い、ウチではこうしている、要望、疑問点、疑念点などありましたらこのnoteへのコメントか、Facebookでメッセージいただければ嬉しいです。ご要望と自分のスキルが貯れば続編書くかも・・・

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おまけ

このNo.70の音色で一曲演ってみました。

コントローラーはNuRAD。
外部リバーブとして ALESIS MICROVERB II (MEDIUM No.2)を少々。
NuRAD BREATH設定はCC B RISE = 2xにしてます(前回記事参照)
 BRTH CC A = OFF
 BRTH CC B = 7
 CC B RISE = 2x
 BREATH AT = ON

伴奏はこちらの楽譜です。


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