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[02] Roland S-1 ウィンドシンセ日記その2 ・CCマップ、ブレスへのCCアサイン

ウィンドシンセサイザー用の音源として2024年6月25日にRoland S-1を買いました。使っていく過程を日記感覚でメモします。日記なので、しばらくあとに訂正が入ったりするかもしれませんがその場合はすみません。第二回目はウィンドシンセ的な観点でまとめたS-1のMIDI CCマップと、ブレスセンサー出力をどのCCにアサインしたらよいかなど。


S-1 MIDI CCマップ(不完全版)

 近年のハードウェアシンセの多くはツマミやいろんな機能に、MIDI のコントロールチェンジ(CC)番号がアサインされています。Rolandのシンセだと、フィルターカットオフにはCC番号74(以下、CC74)がアサインされているものが多い、とかです。この場合ウィンドコントローラーのブレスセンサーの出力としてCC74を選んでやれば、息でカットオフのツマミをぐりぐりと動かして音量と音色を変えてられる、ということになります。どのツマミにどのCCがアサインされているか、S-1のマニュアルには一応全て書いてあるのですが(P90 つまみ割り当て表、P94 MIDIインプリメンテーションチャート)、
わかりにくいのでMIDIマップが欲しくて発売1年経っているのでどなたかつくっているかなぁとWEBを探しましたが見つからなかったので自分で作りました・・

S-1 MIDI CC map(完全ではありません) (クリックで拡大)

他にもいくつかのCCがアサインされてはいるのですがここではとりあえずウィンドシンセにそこそこ関係のありそうなものだけ載せています。あとCC11、CC1、CC64、CC65、CC10、Velocityは詳細がマニュアルに記載してなかったので簡単に効果を調べて載せていますもちろん全部覚える必要はないんですけど、ブレスで何か動かせないかなーとか、演奏中にCCを送るボタンを押して何かギミックできないかなー、とか考えるのには役に立つと思います
ツマミの緑の数字はそのツマミにアサインされているCC、ツマミの横の赤文字と数字は、[SHIFT]ボタンを押しながらそのツマミを回すと変えられるパラメターとそのCCです。例えば矩形波の音量はCC19コントロールできて、SHIFTを押しながらそのツマミを動かすとパルス波幅が変えられてそれにアサインされているCCはCC15である、という具合です。

ブレスで何をコントロールするか(基本)

さて、ウィンドシンセなので、「息」でシンセをコントロールするわけで、普通は「音量」と「音色」をコントロールしますね。CCマップを見てそれに関連しそうなところから、個人的オススメな設定を書いてみます
なお共通して、ウィンドコントローラー側のVelosityはLock(固定)で、127(最大)にしておきます。

【設定案1】  CC74のみ

ブレスセンサーから「CC74 (値は0〜127)を出力」これだけです。
主要コントローラー別では
EWI5000の場合
 
EWI EditorマニュアルP17の
 CC Sendで CC Number:74、 No Breath:0 , Breath: 127
 Breath、Volume、AftertouchはS-1では無視されるがOFFにしておいたほうが無難。ExpresssionもOFF。
 Lock VelocityはLockにして、値は最大(127)

NuRADの場合
 BRTH CC Aを「CF」に設定。
 BRTH CC BはOFF

MWiCの場合
 Breath CC A を#74に設定
 Breath CC BとCはOFF

設定はひとつだけで簡単ですし、これでも充分すぎるくらい演奏できて問題はありません。コントローラーの設定にもよりますが結構音の立ち上がりが鋭く出るかと思います。これがちょうどよいと思う方はこれでも良いと思います。音の切れ目が少しパツパツするかもしれませんが、実際にバンドの中や伴奏にあわせて演奏するとそんなに目立ちません。
ただ、立ち上がりが鋭すぎるとか、好みでは無い、という方もいらっしゃると思うのでその場合は案2。

【設定案2】 CC74 + CC11

CC74と同時に、CC11を出力します。ブレスで同時に2つ以上のCCが出力できるウィンドMIDIコントローラーが必要です

CC74だけの場合はCC74=フィルターカットオフで音色(音の柔らかさ)をコントロールしつつ、フィルターの機能として音量も変わっていたわけですが、音量は音量でコントロールします。その時のおすすめがCC11です(ちなみにS-1はCC7=volumeは認識しません)なお、CC11はS-1ではエフェクタのwet音の音量には影響しないので、息を抜くと同時にリバーブの反響音も消えてしまう、ということはなく安心して使えます。

NuRADの場合
 BRTH CC Aを「CF」に設定。
 BRTH CC Bを「11」に設定

MWiCの場合
 BRTH CC Aを「#74」に設定
 BRTH CC Bを「#11」に設定 (カーブ設定はAと同じにする)
 Breath CC CはOFF
 
これで、音の立ち上がりが「鋭すぎる」音の切れ間が「パツパツしすぎる」と感じている場合にだいぶ改善できるかと思います。
あとはこれで、コントローラーのブレスのキツさ(感度)設定や、ブレスカーブのなどもあわせて好みに近づけていきましょう。その時ひとつご提案できるのが「CC#11出力のブレスカーブや感度設定を変えてみる」という案3です。

【設定案3】 CC74 + CC11(カーブ調整)

CC74とCC11で、独立してブレスカーブや感度といった設定を変えられるウィンドコントローラーが必要です。

NuRADの場合
 案2にした後BRTH CC Bのすぐ下に表示されるメニュー
「CC B RISE」を2〜10の好みの値にする
こうすると、CC B(ここではCC11)のブレスカーブの傾きが急になります。例えばCC B RISEを2(=2倍)に設定しておくと、CC Aで出力されるCC74の値が10のとき、CCBで出力されるCC11の値は10☓2の、20になります。パツパツしないけど音の立ち上がりがCC74だけの場合に近づいたかと思います。

MWiCの場合
 案2にした後Brearh CC Bのカーブや感度を変えます。例えば、カーブの種類を変えてみる、センサーのRANGE(設定画面グラフの下に出る数字)をCC Aの半分の数値にしてみる、などです。パツパツ感と音の立ち上がり感のバランスを取ります。

また、MWiCの場合は、更に慣れてきたらで良いのですが、 Breath CC BとCは、出すCC値の範囲指定ができますので(0〜127だけでなく、30〜100とか)、CC74とCC11を入れ替えてこのCC値の範囲設定をしたり、というアイデアも考えられます。シンセの音色づくりと平行しながら細かい設定を詰めていくのも良いと思われます。

ブレスで何をコントロールするか(マニアック)

先ほど作ったCCマップを見ていくと、息で音量を変えられるパラメーターは次のものが考えられるので、場合にもよりますがこれを使っても良いですね

音量、フィルター関連

 CC30 エンベローブ(ENV) Sustain
 CC24 Filer EVNの有効量

モジュレーションアイデア

・CC15でパルスWidthをブレスで変える(PWMソースをマニュアルnAnにしておくこと)

グライドのコントロール

S-1でグライド(ポルタメント)する場合は方法が3つあります。個人的には方法1がおすすめですが方法2も問題無し。方法3は少し問題あり。

【方法1】
S-1のPorta modeを Autoにしておいて、ウィンドコントローラーからはPorta timeにアサインされているCC5を送る。送るCC5の値はコントローラー側で最大値・最小値を設定する

【方法2】
S-1側でPorta timeを(パッチごとに)設定しておく。そのON/ OFFをCC31で行う。
ウィンドコントラーのグライドセンサーから送信するCCはCC31。
S-1ではCC31に入ってきた値により次の通りモードが切り替わる。
CC31=0だとOFF、CC31=1がON、CC31=2以上がAuto
Autoが適しているので2以上のCC31を出力する必要あり。

【方法3】やや問題あり
S-1側でPorta timeを(パッチごとに)設定しておく。そのON/ OFFをCC65で行う。
ウィンドコントラーから送信するCCはCC65。
CC65=0〜63でOFF、 CC65=64〜127でONになります。困ったことにCC65ではPorta modeをAutoにすることができません Porta mode = ONではタンギングしていてもグライドがかかってしまいウィンドシンセとして一般的に不適なので方法3はやめておいたほうが良いと思います。

その他の何かのセンサーやスイッチで何かのCCを出してギミックするアイデア

EWI5000、NuRAD、MWiCではブレスとグライド以外にもCCを出力する手段があるので、演奏中にそれを使ったギミックが出来ます。例えば

・LFO mod depthを深くしておいて、modulation (CC1)でグロウルする
・CC22でサブオシレーターのオクターブを切り替える
・CC71でレゾナンスを変える。
・CC80でモノ/ポリモードを切り替える
 ※CC80の挙動は、値0=OFF、1=Unison、2=Poly、3以上=Chord

まとめ

 とまあ内容の割に長文になりましたが、ざっくりまとめますと、
ブレス設定として【設定案1 CC74のみ】または【設定案2 CC74+CC11】のどちらかにするか、それだけでよいので決める。
・グライドを日常的に使う方はグライドの設定を方法1または方法2のどちらかに決める
シンセの音作りをして自分の基本音色を決めましょう!
・細かい設定は基本の音色が出来てから

となります。基本音色の作り方のアイデアはまた次回以降、、、のつもりですがひとしきり触って作ってみた試し吹きはこちら

ノコギリ波と、LFOでPWを揺らしたパルス波を重ねた音です
・NuRADのブレス設定は上記の【設定案3】でCC B RISE=2
・グライドレバーからCC5出力(MAX 39)
・EXCT CC BセンサーからCC82を出力
音源の設定でちょっと裏技的なものをひとつ見つけたので書いちゃいます
POLY MODEでCHORDを選ぶとトリガーのかかり方が普通のPolyでなく、Monoと同じ(いわゆるレガートモード)になるみたいですね。なので、常にCHORDモードにしていてVOICEを重ねない状態にしていれば普通のmonoモードを同じ挙動。VOICEのKEYを0にしておけば他のシンセで言うところの2VCOを重ねた状態が作れます。12や-12にして重ねれば音色のバリエーションが出来ます。で、ここではVOICE3のKEYを+7にしておいて、VOICE3をEXT CC BセンサーでCC82を出してON/OFFしている、というタネとシカケでした。

おまけ「S-1 Editor」について

余談的に。S-1は全ての機能を本体のツマミとパッドだけで操作できて保存もできて、その点は良いのですが、表にツマミとして出ていないパラメーターに関しては前回も書きましたがシフトキーを押しながらアレコレ、という操作が非常に面倒くさく時間がかかるため、効率アップのためにEditorを購入しました。購入先はhttps://roland-s-1-editor-soundbank.jimdofree.com/

6.9ユーロ、執筆時は記録的な円安でしたがそれでも1230円、効率アップはできたので数日使っただけでも充分元は取れました。MacのStandalone版を起動するとこんな感じです。

S-1 Editor Standalone版画面 (クリックで拡大)

最初に1回だけ行うMIDI入出力の設定画面は別にありますが、この画面だけで操作します。で、買ってみてわかったのは残念ながら操作できるのはS-1に対しMIDI CCで動かせるパラメーターだけなので、例えばリバーブのTYPEを選んだり、波形を描いたり、これでシーケンスパターンを組んだり、という、MIDI CCがアサインされていないS-1の機能はこのエディターでは操作できません。
とはいえしつこいですがS-1の操作性の悪い点をかなり補えるのと、CCアサインがある機能は全てこの画面に出ているので、S-1で何ができそうか、どのパラメータを組み合わせればどんな音が出来そうか、というイメージをつくには大いに役に立ちました。あとDAWと連携することもできます。

ということで、他のシンセで「既にある程度シンセの音作りに慣れている」方はこのエディターを買うと効率UPになると思います。ただ、シンセに慣れていない方はかえってややこしくなると思うので、いきなり最初からEditor購入する必要は全然無いと思います。

他にはAbelton Live の、Max for Liveが使える方にはこんなEditorもありますね。Abelton Live用に限定すれば使いやすそうです
https://martinezivan.gumroad.com/l/RolandS1EditorMaxforLiveMIDIdevice 


以下、続く...…


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