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靴選び難航記

わたしは靴選びが下手だ。
どのくらい下手かというと、数年前まで自分の足のサイズより2センチほども小さい靴を、足指を丸めて履いてそれがちょうどいいと思っていたぐらいの下手さだ。数年前にそのことに気づいてからは靴選びには絶対的な自信のなさがある。どういう状態が足に合っているのかがわからないし、おそらくそんな履き方をしているから、靴を買っても一年未満で履き潰してしまう。以前記事に書いたスニーカーも、前回と同じく、踵のところに穴が開くというかたちで履き潰してしまった。

無意識ながら無理な靴を履いていた理由はふたつ。
ひとつは、身長の高い母より自分の足が大きいわけがないと思い込んでいたこと。私は小さな頃から今の身長なのだが、結局母よりも5センチ以上背が低いまま大人になった。5センチ以上も身長差のある母より自分の足が大きいわけがないと思っていたのだ。
そしてもうひとつは、小さい靴の方が可愛いと思ってしまうこと。足の大きな女性なら想像がつくかもしれないが、女性用の見本として置かれているのは23センチほどが多い印象で、それが可愛いと思って自分のサイズを持ってきてもらうとイメージと違う……ということがままある。できるなら見本に近いサイズを履こうと思ってしまって、少し小さいかなと思っても足が入れば、買ってしまったりしてきた。

そんなわけで、私の足は大してヒールも履いたことがないのに外反母趾気味である。足のサイズが自分で思っているより大きいらしいということはわかったが、どんな靴が足に合っているのか全くわからない。一度ある革靴ブランドに行ったらうちの靴はサイズが合わなくて履けませんと売ってもらえなかったことがあるが、あの時の店員さんにどんな靴なら履けるのか聞いておくべきだった。

後悔しても仕方がない。外に行ける靴がないのだ。靴探しの旅が始まった。
しかし靴を見にどこかへ行っても結局買えずに帰ってきた。自分の足が何センチなのかも定かでないし、どういう収りかたがちょうどいいのかもよくわからない。どこかで悩みを聞いてもらえないだろうか。

紆余曲折あって、ある革靴のお店に行った。
緊張しながら、ことの経緯を話す。今まで小さな靴を履いてきて、一体どんな靴が自分の足に合うのかわからなくなってしまった。普段からどちらかというと歩く方で、普段使いできる靴が欲しい……。

店主の男性は私の話を聞くと、足のサイズを測ってくれ、いくつかあるモデルの中からひとつを選んで試着させてくれた。その靴は足をくるぶしまでしっかりとホールドしてくれる作りで、そういったかたちの方が長距離を歩く場合には疲れにくいのだそうだ。決して安い買い物ではなかったが、ほぼ即決でこの靴を買うことにした。購入した靴の取り扱い方を説明してくれる店主の声を聞きながら、私はとても嬉しかった。はじめて靴選びのスタート地点に立てたような気がしたのだ。

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