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忍殺トリロジー感想/書籍第二部(4)『ゲイシャ危機一髪!』(下)

◇注意◇
現行AoMシリーズからニンジャを読んだ人が、
旧三部作(トリロジー)に戻って色々読んだ感想記事です。
感想の中でAoMのお話もします。

こんばんは、望月もなかです!
『スズメバチの黄色』で忍殺に復帰し、以来AoMの連載を読んでいるタイプの人です。最新話を追いかけながらの並行トリロジー、第2部の2・後半です! AoMに繋がる新キャラも多数登場。贅沢なエピソード群でした。

前回感想はこちら

◇◇◇

今回読んだのはこちらです。

ニンジャスレイヤー第2部 ♯2/ゲイシャ危機一髪!

ネオサイタマに新たな戦争の火種あり。ラオモト・カンの末子、ラオモト・チバを旗印に台頭するアマクダリ・セクト。混乱に乗じてネオサイタマに版図を広げんとするキョート共和国のザイバツ・シャドーギルド。二組織が火花を散らす中、ニンジャスレイヤーの復讐劇は如何なる役割を果たすのか。

 【ライズ・オブ・アマクダリ】

ラオモト・チバは弱冠十二歳にして次期ソウカイヤ首領と目される尊大な少年であった。だがある夜を境に、父は還らぬ人となり、忠臣と信じ切っていたニンジャ共は卑劣にもチバ少年を裏切った。残ったのは実力も頭も足りない傷だらけの名もないニンジャが一人だけ……絶体絶命のチバの前に現れた不気味な男の目的とは?

まだ幼いチバを見捨てて有力な後継者候補のヨルジさんにおもねる三下ニンジャ二名がすごいノリノリ。「ラオモト・ヨルジ」さん……スズメバチの黄色で見た覚えがあります。チバくんと敵対していた、性悪サイコな異母兄ですよね。

「あいつは低能だ! ぼくは他のどの兄弟より有能で……」「モンドムヨー! メンツの問題だ。女子供に頭を下げる気は無い!」アイアンフィストが机を叩く。「くッ!」言葉に詰まるチバ。

圧倒的なニンジャの力で「わからせ」されかけるショタ若……涙……強引にはぎ取られるジャケット……標本めいて床に縫い付けられる薄い背中………

……はっ。
危うく未知の扉をオープンセサミされてしまうところでした。危なかった。

オニヤス登場。えーと、確かこの人のニンジャ名が「ネヴァーモア」なんですよね。合ってるかな。まさかこんなドラマチックな登場をなさるとは! 素晴らしい。いや~これは、つよいですよ……すごい。勝てない。

改めて、S1第10話【ソウカイ・シンジケートにおけるマスラダの判断(身を挺してネヴァーモアを守った)がチバへの交渉カードとして「効いた」理由が理解できます。マスラダくん大正解じゃないですか。

「貸しだ……! おれの要求を聞け」「借りなどない」チバが睨み返した。「ネヴァーモアが俺の盾になった。お前が防ごうが、防ぐまいが、同じ事だったわけだ」チバは冷たく言った。「無駄だ」「だが、少なくとも貴様のそのヨージンボは……ハーッ」ニンジャスレイヤーは超自然治癒の苦痛に唸った。「無事では済まなかっただろう」

チバ親分本人を守るよりも好手だった可能性すらありますね。偉いぞマスラダ!わかってる!!

それにつけても幼チバとオニヤス、良いです。良い。

「邪魔する奴は全員殺せ。いいな。お前はぼくを守れ。今日のような屈辱が、二度と起こらんように。お前はぼくを守れ」「ハイ」

だからニンジャ名が『ネヴァーモア』なの~!? うわぁうわぁうわぁ……! こ、こんな……感傷の巨大熱量が膨張し、じりじりと私の心をセンチメンタリズム熱で焼きつくそうとしてくる!! 良すぎる!!!

耳触りのいい言葉を聴きながら、即座に「この男は、求心力のある傀儡としてぼくを必要としている」「だが今宵を生き延びるにはほかに道もない」と理解し、運命を受容し、覚悟を決めるショタ若が自己評価にたがわぬ優秀さで痺れました。あまりにも聡明。好き。

ヨルジ一家はチバ少年によって皆殺しにされたようですが、『スズメバチの黄色』によればニューロンチップ再生(シキベさんみたいな感じでしょうか?)で蘇り、月破砕後もチバくんの命を狙っていたんですよね。そのあたりも『スズ黄』続編などで描かれることがあるのでしょうか。とても楽しみです!

そしてザイバツが何かを探索しているらしいことが判明。なんでしょ、ナラクちゃん関連かな。第二部のキーポイントになりそうな予感がしますね……そもそも以前、ザイバツが「マルノウチ」で抗争を仕掛けてきたあたりにも怪しさを感じる。今後の展開にも期待です。


◇◇

【ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ】

ネオサイタマ、ネオカブキチョ、ニチョーム・ストリート(二丁目通り)。外れ者やセクシャルマイノリティの聖地である。人知れずニチョームの自警団として街を守るのは「絵馴染えなじ」の店主ザクロ、ニンジャ名をネザークイーン……逃亡の末「絵馴染」に流れ着いたヤモトは、彼女の「仕事」を手伝いたいと願い出る。

最近までコミカライズでやっていたところですね!

(最近だいぶ麻痺したというか慣れてきたので最初は読み流しましたが、警察が近づいてくるときに「御用!御用!」っていう警告音が流れてくるの……だいぶ変では…?)

「疑いやしないわ、ニンジャちゃん」ザクロはため息を吐いた。「ついでに、アータがザイバツやアマクダリ・セクトの奴らとも思えない」

ナチュラルに「アマクダリ・セクト」の名が出てくるということは、フジキドさんの殺ビラばら撒きテロ事件から、かなり時系列が進んでますよね。

ザクロさん人情味があって優しくて、混沌の中でも大切にしたいものがはっきりと定まっていて、そのためにできる手を尽くして、自らも行動しているところがとても素敵です。

マスラダくんの目指している「職業・ニンジャスレイヤー」の姿って、かなりこれに近いんじゃないでしょうか。そうなると、マスラダの理想でもある「尊敬するひと」の職業についても、ぼんやり見えてきそうです。大金を稼げる仕事だったようなので、自警団と賞金稼ぎを足して二で割ったみたいなお仕事だったのかな。

(考察未満もにゃもにゃ記事)

居場所を与えられて泣いちゃうヤモトさん、愛おしい……頑張ったね。

ってシルバーキー氏がいるじゃないですか!!!?

エッ、何……? (ガンドー=サンがニンジャじゃなくて本当に良かった、殺さなくてはいけなくなるから……)みたいな殺忍理屈で生きてきた孤独な男の隣に当たり前のような顔してニンジャの青年がおり……しかも「立てるか」って振り返って待ってもらえてる関係性になっているの……えっ、な、何?! 何!??!?! 

その詳細な理由、彼が腰に帯びる謎めいたヌンチャク、そして彼がキョートからネオサイタマへ一時的に取って返した顛末を皆さんに語って聞かせるのは、あらためて別の機会となろう。

ヌンチャクを入手してる。やっぱりだいぶ時系列が進んだエピソードなんですね。

それはそれとして、突然の親密度★★★なニンジャが隣にいるのは何!? 謎めいたヌンチャクよりもそっちの方が気になるなあ!

路地を抜け、二人はけたたましい宣伝音楽とネオンライトの渦の中へ飛び込んだ。上空を行き交うマグロツェッペリン、特許カブキ・ホログラフィ看板、「アバタ」「モシモシだ」「お家」「ふかしポテトでも」ネオサイタマ的な巨大ネオン看板の数々、ただし他の地域とは比較にならぬほどに高密度で極彩色。

ネオカブキチョの描写すさまじいですね、素晴らしい。筆が冴え渡ってる。

すぐにパニクったり閃光弾くらって転げまわったりしているシルバーキー氏が若くて和みます。AoMでは落ち着いた大人になっていたので……こんな頃もあったんですね……。

「詩的インスピレーション……キューピッドの矢……そういうもの。生き延びたら話すわ」

マークスリーちゃん、ザクロさんのお店に流れ着いたりしない? 潤んだ目で「ワカル……切ないわよね。一目惚れ」みたいに頷いてくれそう。

そんで勢い込んで具体的な告白エピソードを聞かせた結果「ハァ~!? そんなのダメに決まってるわよ、ダメダメダメ。アータは。そこが。ダメ!」ってはちゃめちゃに叱られてほしいよお!(幻覚がすごい!!!)

「ドーモ。レッドゴリラです!」巨大シルエットが告げた。

あっレッドゴリラさん。主にシャドウウィーヴくんの影響でパワハラ横暴体育会系上司という先入観と風評が私のなかで定着してしまったレッドゴリラさんの現物だ!! ドーモこんにちは!

ネザークイーンさんムテキバリヤー使いだったんですね! 結構いますね、ムテキ使い。すごくザクロさんらしいジツでいいと思います。

「アイエエエ!」漢字サーチライトに照らされたシルバキーは戦闘不能だ!

実は見ないふりしてたんですけど、ここで無視できなくなった。漢字サーチライト is 何? なんでサーチライトで戦闘不能に……?

全体的に、「あの」ニンジャスレイヤーがシルバーキー氏の動きを前提に戦闘を組み立てているので(えっ……何なん……)という気持ちになりました。そんな長期間一緒にいたわけでもなさそうなのになぜ……シルバーキー氏が人たらしだからかな。きっとそうなんだろうな。

なぜなら死ぬ前に、惚れた男を助けられたのだから! 彼のアイサツを見た瞬間、ザクロのニューロンは沸騰したのだ、二度と恋をしないと決めていたザクロの、それは稲妻めいた一目惚れだった……! ニンジャスレイヤー=サン!

その男はやめとけ。

いい人で真面目だけど、ちょっとフジキドさんなので……。泣かされるよ。だめ。ザクロさんにはもっといい人が。

「……アタシ、本名はザクロって言うの。さ、最後にザクロって呼んでくれる?」ニンジャスレイヤーはネザークイーンを脇に放り出した。「ンもう!ヒドイ!」「無事なら己の足で立て!」

フジキドォ!!
貴様!! ロマンを解せよ少しはァ!!! まったくもういいじゃん別に名前で呼ぶくらいさァ減るもんじゃなし! 簡単でしょ!? アータはね! アータはそこが! ダメ!!!!!!!!

なのに通り過ぎざまに肩を叩いて「休んでおれ」は言えるところが……フジキド・ケンジはさぁ……そうやって! そういう態度で、在りし日はフユコさんをハラハラさせたこともあったんですよね! わかるぞ!!(マスラダ)

今際の際にパータコおねえさんの名前を呼ぶレッドゴリラさん、どんな関係だったのか気になります。

別れ際の「オタッシャデ」がじんわりと沁みる、賑やかで楽しい良エピソードでした。

「でもあの人とってもカッコイイし優しいとこともあるの」「だーから! そこがダ! メ! 優しいこともある、って何よ? こともある、って」

(フジキドおじさんのことじゃん……)

ヤモトさんにようやく安心できる居場所が出来て良かったです。


◇◇

【デス・フロム・アバヴ・セキバハラ】

ザイバツ・グランドマスターのイグゾーションに敗れたニンジャスレイヤー。照りつける灼熱の太陽、飢えと渇き……磔にされたニンジャスレイヤーは、復讐を果たせず、このまま力尽きてしまうのか。

キョート郊外に荒野があるわけがないんですよね……冷静になったら負けなのは分かっているんですが、感想を書くために読み返しているとふと我に返ってしまう。

そしてまたネチネチスシ苛めプレイしてる。また、と書いてしまいましたが、第一部から順番に読んでいくと実際ここが初出ですね。

「ヌウウウーッ!」脂の乗ったトロを見せ付けられ、身を捩る復讐者。だが強化ナノカーボンチューブ製の枷は、彼の手足を磔台から逃そうとしない。

AoMの拷問描写に比べるとだいぶマイルドというか、描写がさらっとしていて控えめな気がします。スシ苛めプレイ、十年の時を経て何か間違った進化を遂げてしまったのでしょうか。進化とは。

見極めの巧さを自認するイグゾーションさんはとてもえっちだと思いました。言動のひとつひとつに求心力がありますよね。DVD店でR18カーテンの向こう側から現れるきれいなスーツのおじさん存在ですよこれは!!

……かくして孤立無援のニンジャスレイヤーを窮地から救い出したのは、ニンジャですらない、ZBR中毒私立探偵の蛮勇であった。

ガンドーさん良すぎる~~~~~ッ! 初登場以来ずっと株が上がりっぱなし、下がる隙が一切ない。なんていい男なんだ!!

フジキドの窮地を伝えてくれたのがナンシーさんだった、という情報にもグッときます。なんて頼りになる最高の相棒なんだ。心強すぎる。ロブスター3で卓球台に拘束スパンキングされていたとは思えない頼もしさですよ!!!

「クラミドサウルス君は残念な事故で脱落してしまったが、将来的に彼の穴を埋められるのは……君しかいないと思っているんだ。まだ君の位階は低いがね。いや……不相応に低いとも言えるだろう。君の能力は、ギルド内でもっと評価されるべきだ」「ハイ!」

ひええ死亡フラグ。

にこやかスマイルで肩を叩かれて「期待しているよ」と熱っぽく言われるのが死亡フラグなの、なんか……こう……一部の人の嗜好の背骨をさば折りして強引に方向を変えさせかねない強力なパウァーを感じ……

最近似た行動原理のひと見たぞ、と考えたらゴールデンカムイの鶴見中尉ですね! 部下がバッタバッタと使い潰されて死ぬか、役に立ち続けたくてしぶとく生きるかの違いはありますが魔性っぷりとかもわりと似てる!!

「それを調べて……マッポーとの関連性……マッポーの予言の一側面にも似た……び、ビジョンを視たのです、恐るべきビジョン……コワイ(略)……その者はヌンジャへと近づく!そして恐るべき太古のオーパーツが!ジゴクめいた装置がその封印を解かれ!黄金の構造物の浮上!無数の死!無数のモータルソウル!無限の焦土!マッポーカリプス!ヘル・オン・アース!キョートは、ヘル・オン・アースと化す!ジゴク!ジゴクだ!コワイ!!」 

ウミノさんのビジョン、AoMシーズン2終盤にシトカで引き起こされた「アレ」そのまんまじゃないですか! そういうことだったんですか。

己はニンジャであり、ガンドーは人間だ。そしてこの人間らしい人間が己の隣にいてくれる事こそが、このジゴクの如き復讐のイクサの中では、不幸中の幸いと言えるのだろうと考えた。

ギエーーーーーーーーッ!!!!

す、すごい、すごいですよこれは……うわぁ……うわああぁ……

すごい。

そしてガンドーさんを見捨てられなかったせいでピンチに陥ったことを精神世界でナラクちゃんに謝るフジキドもすごい。そこで謝っちゃうところがフジキドさんなんですよねえ。真面目だなあ。高飛車な態度で意気揚々と起きてから思った以上に肉体が瀕死だったので焦るナラクちゃんも通常運転でかわいい。

「……何がセキバハラ貴族だ……てめえらの時代は……数百年前に終わったんだよ、時代錯誤のイーヴル・スピリットめ……くそったれめ……」

ガンドーさんカッコイイーーーーーーーーー!!!
すごいすごい、大金星どころかプラチナかダイヤモンドレベルの大勝利!!!!すごい!!!カッコイイ!!!!

そしてイグゾーションさん、あんなにも強敵だったのに、ここでガンドーさんの手で退場しちゃうんですか……思ったより早くてびっくりしました。最終決戦近くまでニンジャスレイヤーの前に立ちはだかるのかとばかり(実際それだけのポテンシャルを持ったキャラクターでしたよね)。

どんな美しい理想も、強力無比なジツも、爆発四散すればそこで終わり。諸行無常、『ニンジャスレイヤー』らしい散りざまだったのかもしれません。


◇◇

おまけ

手書き感想ノートを端末カメラで撮っただけのやつです。
記事では取り上げなかった細かな感想メモや、こんな感じの

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ちまちましたノート隅の落書きがたまにあります。

補足代わりにどうぞ。

というわけで、今回はここまで。次巻は表紙からしてワクワクですね!
ではでは、また次の感想でお会いいたしましょう。

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次の感想はこちら。

【感想目次】


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