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ニンジャスレイヤーをAoMシリーズから読む/S4_幕間【ロンドン・コーリング】後編

こんばんは、AoMからニンジャに出戻りしました望月もなかです。
今年も白鳥が渡ってきました。もうじき冬です。毎朝毎晩、空を見上げては鳥影を目で追うようになると、季節の移り変わりを感じます。

前回の感想はこちら。


【前提】望月のニンジャスレイヤー知識

・書籍第一部を3巻まで(諸事情で中断)
 →6年経過(ほとんど内容を忘れる)
 →『スズメバチの黄色』で復帰
 →AoMシーズン1〜3読了+後、PLUS加入
 →AoMシーズン4実況+旧三部物理書籍12冊目(今ここ)

◇◇◇

今回のエピソードはこちらです。リマスター版を読みました。

シーズン4幕間:「ロンドン・コーリング」(後)

ロンドン・ネクロポリス中心部に、ケイムショの支配及ばぬ領域が存在する。大英博物館。博物館奥には、ひときわ異彩を放つミイラ展示エリアがあった……。そのミイラこそが、バトル・オブ・ムーホンでドラゴン・ニンジャと共に死線をくぐり抜けた偉大なるニンジャ六騎士が一人、ケイムショの仇敵、ゴダ・ニンジャその人だったのである!

 ♯1

フジキド&ユカノは、大英博物館エントランスホールに突入した。目指すゴダ・ニンジャは目と鼻の先だ。だがそのとき、逆方向からニンジャの二人組が現れた。案内人スプリガンと因縁浅からぬデッドアイズ、また一人は旧アマクダリ所属ニンジャのアンブレラである。

 鎧が垂れ流す瘴気は空気より重く、床を這うように広がってゆく。鼠たちが瘴気から逃れ、狂い走り、散っては集まり、折り重なる。さらには床に散らばっていた骸骨がカタカタと揺れ、ひとりでに起き上がり、

このあたりの描写ほんとすごい。映像が音つきで鮮明に脳内再生されるんですよね。いやー相変わらず文章が上手すぎて、

カラテを構え、シャウトを伴ったセイケン・ツキを始めた!

端末からすぐさま距離をとった。
やめて。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」骸骨の半数が床板を剥がして持ち上げると、もう半数がその床板にセイケン・ツキを繰り出して打ち砕いた。恐るべきカラテ・デモンストレーションだ!

カルシウムの分際でやかましいわ。
ヨーグレットより下位の君たちが床板を割ってカラテの真似事など滑稽極まりないね!はいホイッスル! レッドカード! 退場退場退場!!!

『(略)力になれるかどうかはわからぬ。チャでもてなす事もできぬが……』「構いません」『……』微笑めいた余韻がニューロンに響いた。

ゴダさんの微笑たまらんですね……いい……。旧知の戦友同士の穏やかな会話(周囲はゾンビランドですが)、非常にいいです。

◇◇

 ♯2

アンブレラにUNIXを強奪され、満身創痍のメイが受信したノイズまみれの通信。それは数ヶ月前に全滅したと思われていたカタナ・オブ・リバプール第十三次大英博物館強行偵察連隊からの救援要請であった。彼らの一部はゴダ・ニンジャの内部領域――特別展示エリアに逃げ延びており、徐々に数を減らしながらも生存していたのだ!

尖塔の高みから見下ろす大英博物館は、さながら死の海に浮かぶ要塞島の如きことざま。Y2Kの後、マケグミを寄せ付けないよう高さ二十メートル近いゴシック様式隔壁が作られ、博物館の周囲を取り囲んだ。壁面には鋼鉄製の長いスパイクが何本も打たれ、治安を乱すパンクスが吊るされた。

大英博物館の展示物は確かに強奪と傲慢と圧政の集大成かもしれませんが、果たしてここまで嘘歴史を塗りたくられるほどの罪があったのでしょうか。

あるいは、翼持つ死の獣にまたがったニンジャローブ姿の乗り手たち。異色の空に絶叫を刻む彼らが、死者の行軍の上空、手に手にカナタを掲げ

おおエルベレス!ギルソニエル!死ねェ!!!(フロド・バギンズはこんなこと言わない選手権)つらぬき丸だぞ下がれ下がれ!

「一つの目」が指輪物語リスペクトだからって(ですよね?たぶん)ナズグル模造品みたいなのを追加で量産するんじゃない。同じ英国だからってやっていいことと悪いことがあるんだぞ。気の狂った再定義はロンドン・アイだけで十分ですわよ!

「いいえ。誰が悪いかといえば、全てあのアンブレラとかいうクソ野郎です。ブッダから見ても明らかでしょう。私の言葉遣いも許されます」

「テンプルの物なので返してもらいます云々、一時的にお借りします云々、書き置きは残す予定でした。ハハハ、つまりは盗掘ですね(略)」

スマイターさん清々しいまでの開き直り。一周回って癒されます。
(アコライトさんの時も思ったんですけど、コトブキちゃんとボンズさんって気が合いそうですよね)

◇◇

 ♯3

大英博物館の特別展示エリアに到着したニンジャ一行は、それぞれの目的を果たそうとする。彼らの前に現れたのは、KOLの生き残りモータル、十三連隊の兵士たちであった。アンブレラが同胞メイから不法に強奪したUNIXをめぐり、両者は一触即発になるのだが……

「「「「「イヤーッ!」」」」」直後、恐るべきカラテシャウトが響いた。開け放たれた大扉をくぐり、特別展示エリアへ駆け込んできたのは、得体の知れぬ五人組であった。(略)摺り足からのセイケン・ツキを繰り出す黒いニンジャを、マット達は息を殺して畏怖した。

フジキドさんが一番怖がられてるじゃん!www 爆笑。

第二演舞に移ろうするところをユカノに肩ポンされてやめたくだりも笑いました。流れるように続けるんじゃない。

怖いといえばケイムショの攻撃もホラー&スプラッタで怖いんですけど、カリュドーン儀式で全方位から失笑された姿を見せられているためどうしても(子供の喧嘩にしゃしゃり出る目玉のおやじ……)的な目線で見てしまうんですよね。

そういう意味では、ゴダさんへの呪詛( (((死と腐敗の抱擁を受け容れよ。我とひとつになるのだ……))))も、つまりゴダさんのこと好きなの? 可愛さ余って憎さ百倍ってだけなんじゃないの? と感じてしまったり。これまでの描写を見る限りケイムショさんってだいぶ大人げないので、さして複雑な動機ではない気がするんですよね…

投擲型鮮肉フック

は?(二度見)

◇◇

 ♯4

ゴダとの再会もそこそこに、事態は急展開を迎えた。ケイムショが宿敵ゴダとその仲間を滅ぼさんがため、大攻勢をかけてきたのである。ガラス天蓋に覆いかぶさる腐敗眼球!稲妻、雷鳴、破砕音!ムテキ・フィールド破れたり! 瞬く間に死者の軍勢が雪崩れ込み、大英博物館内は凄惨な戦場と化す!

愛憎入り混じる師弟のやり取りがいいですね。「師匠気取りをやめろ」と言っていたくせに、最後に思わず口をついて出たのが「師……」だったのさぁ……ねえ……こんな、一生忘れられないじゃん……。

高レベル聖職者に聖なる伝説武器を装備させ、特攻属性(アンデッド)相手に全体攻撃させたときのダメージ値がエグすぎて笑いました。
スマイターさんかっこいい~!

サツバツナイトは笑みを返した。彼の胸中には奇妙な感慨があった。再びボンジャンの徒と巡り会えるとは、何たる僥倖であろうか。

ヴワアアアァ゛アアアア゛!!
貴重なフジキドさんのデレ! こっちまでつられて頬が緩んでしまいます。デヘヘ……。アコライトさんのこと覚えてくれてるんですね、嬉しいな嬉しいな。笑顔まで引き出すって相当に好感度高かったんじゃないですか? フフフ、ウフフフ!

ゴダ・ニンジャは今、ドラゴン・ニンジャの最終処置を受けようとしていた。横になったゴダは、チャドーを循環させ、包帯の中で確かなカラテを脈動させていた。

こうして正統なチャドー循環による治療を見せられると、マークスリー戦でマスラダ君がやった邪悪炎強制循環攻撃の酷さが改めて実感させられ、遠い目になる。

然り、サツバツナイトは天井へ逃れたロンドン・アイの上にしっかと両足を踏みしめて立っていた。彼は両拳を固く握りしめ……足下の眼球めがけ、タイコを打つようにリズミカルに、交互に打ち下ろした!(略)「何処へ行くのだロンドン・アイ=サン! イクサは終わっておらぬぞ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

目の上のたんこぶって実在するんだぁ〜……

怖すぎ。
ユカノさん、あなたの大事な弟弟子、やっぱりちょっと変じゃないですか?

◇◇

 ♯5

はいっご一緒に! 眼球打ち据えセイヤッサ―! リズミカルにリズミカルに! 調子を合わせて! チャドー呼吸を忘れずに! いいよいいよ~!はい鉄傘も! 閉じて!開いて! 突き刺して!輝いてるよォ!

ドラゴン姉弟師弟のスムーズな連携に悶死。

「ユカノ!」サツバツナイトが叫ぶと、ドラゴン・ニンジャはバレーボール・レシーバー姿勢で中腰!
「フジキド!」ドラゴン・ニンジャはサツバツナイトに叫んだ。

ギョエェェェエ〜〜〜!!

はぁ最高。危うく精神が爆散するところでしたわ。

だが彼が手段を選ばぬ男である事は当然知っていた。月にまで行き、アガメムノンを爆発四散させ、大気圏を越えて再び地球に落下し、受け身を取って生還した男なのだ。

何ですって? 大気圏を超えて……何?

さながらカラテ空中給油めいた狂気の合体沙汰である!

何ですって???

目が疲れてるのかな……

死の都に取り残されし幾千万の哀れなる不死者に捧げる弔鐘めいて鳴り響かせた! ゴウランガ! ゴウランガ! ゴウランガと!

それはさすがに幻聴ではないでしょうか。地の文さん落ち着いて。ゴウランガの鐘なんてないのよ。それはあなたの中にだけ鳴り響く幻の鐘なの。

おお……刮目して見よ。その刀身には、控えめな古代ルーンカタカナで『エクスカリバー』と刻まれているではないか。

大英博物館の展示物は確かに強奪と傲慢と圧政の集大成かもしれませんが、果たしてここまで嘘歴史を塗りたくられるほどの罪があったのでしょうか。

ああもう畳みかけるようなフェイクヒストリーの錬成をやめろやめろ!! そんなわけあるか!

その危険なニンジャ真実は闇に葬られて久しいが、かつてアーサー王が振るったとされる伝説の聖剣エクスカリバーは、実のところ、カタナだったのだ。

そんなわけあるか!!!

実のところとか自信満々に言いきってくれますが、私はゾンビランドで判断力が鈍ったりしていませんから~!信じませんからね。アフタヌーンティーの捏造チャドーだけじゃ飽き足らずアーサー王まで汚染するんじゃないよ! 限度ってもんがあるんじゃい!!

精神の負担が大きくなってきたな。
気を取り直すために散歩してきます。

ただいま帰りました。

……エクスカリバーが刀だろうがソードだろうが、好きにすればいいよ。秋の空を見ていたらどうでもよくなってきました。拙僧寛容です。

というわけで戦いは一時集結し、皆がそれぞれの宝を手にするのでありました。

アンブレラさんはアダナス社の要請に従い何らかのレリックをゲット。アダナスってイータさんが所属してる邪悪変態メガコーポですよね。エメツの人体抽出実験とかしてたところ……今度は何をする気なんでしょう。

どさくさに紛れて盗み出したレコードを売る気がなさそうな描写が良かったです。音楽好きなのかな?

メイの肩を抱いたのは、降りてきたスマイターだった。「貴方も宝をゲットしたわね」「ええ。まことに」二人は短いキスを交わした。

完全にできてるじゃないですか。

どこからどう見ても完全無欠のLove&Love Happy Endである。おめでとうございます。今夜は勢いじゃなく合意と熟慮の上で一晩を明かすんだろうな。一晩とは言わず二晩も三晩も宝の確認は続くんだろうな。愛、それは永遠の輝き。

デッドアイズさんは指輪。

石をずらすと、そこには不吉な小箱があり、中には、装飾のない黒い指輪がおさめられていた。指輪の表面には奇妙な文言が金で記されている。

その指輪、指にはめると姿が消えたりしませんか? 所持者になっても大丈夫なやつですか?


「あなたはネオワラキアで戦うブラド・ニンジャを見ましたね、フジキド。彼をネオワラキアの〈夜〉の下で殺すことは不可能に近かった筈。それとほぼ同義なのです」
(略)それをなお押し通る力となれば、それはある種の狂気。ニンジャを、殺す力。それはかつて彼が有し、今は持ち合わせぬ力……。

フジキドさん……。ひょっとして、「普通なら不可能なことを押し通す狂気」は全面的にナラクに由来するものと思っている? 探偵として己の内面理解がちょっと足りていないのでは?

確かに、どんな強大なリアルニンジャであろうと、

版図をひろげようが、帝王を名乗ろうが、所詮はニンジャ一匹。

ナラク・ウィズイン#10

と躊躇なく断じてしまえるのはナラクだけなのかもしれませんけれど。フジキドさんも相当だと思いますよ。

『解らぬ。おれは多くを忘れた。おまえと同じようにな。それに、ここは狭い。再び地を歩めるようになるまでは、いくらかの時を要するだろう。ならば若きドラゴン・ニンジャよ、若きダイ・ニンジャよ、世界をめぐってそれを調べるのは、おまえたちの役目なのではないか?』

ゴダさんがユカノさんとフジキドさん二人共を「若き」と形容したの、いいですね。特にユカノさん。長命のリアルニンジャである彼女をあえて「若きドラゴン・ニンジャ」と呼んだところ。ゴダさんが現代世界で新たな生を模索する「ドラゴン・ユカノ」を言外に肯定してくれているのが伝わってきて、嬉しくなりました。

「オハヨ。ゴダ・ニンジャ=サン。この時代も、それほど悪いものではないですよ」

ユカノさん最高~~~~~~~~~~!
ゴダさんとユカノさん、この時代に生きるリアルニンジャ同士として、奥ゆかしさとリスペクトを伴った珍しく健全な関係性を保っていて、とてもよかったです。

(若きダイ・ニンジャとレッドドラゴンも、奥ゆかしさとリスペクトを伴った友人同士になっているわけですが、体液を捧げたりオリジナルスマホケースをプレゼントしたりしているため、健全の欄に留保マークがつくんですよね)(カラテで返すエピソードをいつまでも楽しみに待っています)

おまけ・手書きノートログ

いつもの。
手書き感想ノートを端末カメラで撮っただけのやつです。内容はほぼ同じですが、ところどころ記事では取り上げなかった感想メモがある+こんな感じの

ちまちましたノート隅の落書きがたまにあります。
補足代わりにどうぞ。

ではでは、今回の感想はこの辺で。
また次の感想記事でお会いいたしましょう!(【ラグナロク・オブ・ピザ・タキ】の予定です)

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次の感想はこちら。

シーズン4本編感想の続きはこちら。


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