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人種・女性・LGBTQ差別およびマイノリティー優遇措置 in Medicine

日本は単一民族なのもあってアメリカ留学未経験の人に馴染みがないテーマなのは当然ですが、実はアメリカに留学しているほとんどの人もUnderrepresented in medicine (UIM)という概念を知りません。私がこれを詳しく知ったのも正直最近で、循環器フェローシップに応募してハーバードやUCLAといった ”トップ中のトッププログラム” からインタビューオファーをもらってから深く理解した次第です。

Background

ある人種というだけで入学や雇用が不利となった過去がアメリカにはあります。今でもゼロではないかもしれません。医療の領域でも伝統的に不利な立場に置かれてきた人達が存在し、それらをまとめてUIMと言います。具体的には黒人、ラテン系アメリカ人(中南米出身)、アメリカ先住民、ハワイ・アラスカ先住民を指すことが多いです。しかし、UIMの定義は医学部によって若干異なり、AAMCと異なる定義を使用する医学部もあります。例えばPacific Islander(南太平洋のミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの住民)はUIMとして含まれることが多いです(フィリピン人は厳密には含まれませんが、自分達はUIMと強調するフィリピン人もいます)。女性というだけではもちろんUIMには入りませんが、女性も対等に扱われなかった過去があります。循環器内科は女性比率がまだ高くなく、自分たちをWomen in cardiology (WIC)と呼び、女性医師を強くサポートする強いコミュニティーが存在します。そして、マイノリティとして忘れてはいけないのはLGBTQです。

レジデンシーやフェローシップマッチにおけるマイノリティー優遇措置というのは、マイノリティーに分類される人達を公平に評価するだけでなく、時には雇用を優先的に検討します、というプログラム側の方針になります。つまり、マジョリティーに該当する人達と同じ基準を使用するとマイノリティーが排除されてしまう可能性があるため、“マイノリティーに属する人を積極的に雇用しよう” と意識してスクリーニングをかけ、多様性のあるプログラムになるよう雇用していく訳です。アメリカ全体での差別是正措置に関しては「Affirmative action」とググって是非調べてみてください。現在では人種や性別を全てマスクして公平に雇用する会社がほとんどです。が、レジデンシーやフェローシップのリクルートではそういうのもチェックされています。

上にハーバードやUCLA等の「トップ中のトッププログラム」とあえて記載したのは理由があります。ハーバード等の超有名医学部レベルになるとある程度誰をマッチさせるか選ぶことができるのでUIMに属する人をバランス良く雇用できる可能性が高く、それをプログラムの1つの売りとしているからです(人気なプログラムだと、プログラム側が上位にランクさせた人を取れる可能性が高く、マイノリティの申請者を高くランキングして最低1人は確保するよう努力している)。トップ中のトッププログラムは多様性を強調し、実際に現在のフェローリストをみると性別や人種のバランスが良いです。インタビュー期間中はUIMやWIC専用のミーティングも別途用意されていたり、マイノリティーの人が新しい施設に来ても温かく受け入れることができる体制がしっかりと整っている印象を受けました。。

私が感じたReality

私のような日本人男性は「Asian」という括りで中国や韓国人と一緒にマジョリティーに分類されることになります。「日本出身」ということが有利に働くことはありません。競争率が高いspecialityでハーバードレベルに途中から入りたい場合はマジョリティーに属するのは不利かもしれません(が、だからといってマイノリティーに入るのが良い、という逆のことが言えないのも事実です)。プログラム側はマイノリティーの人達のためにポジションを一定数確保しようとするので、残りをマジョリティー(白人やアジア人等)で埋めることになります。そして常にAMG>IMG。アジア圏出身のIMGが入るこむことができるポジション数というのは、トッププログラムがオファーしているポジション数よりももっともっと数が少ないということは知っておくべき事実です。もちろん、「Asia出身のmale applicant」という事実を変えることはできません。強くてユニークなセールスポイント(研究業績とグリーンカードを持っているのは当たり前)やコネがない限り、競争率が高い科ではTier 1のアカデミックプログラムに入ることはほぼ不可能です。一方で競争率が高くない科では敷居がぐっと下がり、アジア人IMGでも簡単にどこの施設でも入ることができます。

この目線で同僚の強みを考えてみる

プログラム側の応募者選択基準の記事ではあえてこの点に触れませんでしたが、私の同僚で、研究歴があまりないにも関わらずTier 1のアカデミックプログラムからインタビューに呼ばれた人がいます。その同僚から話を聞くと彼ら自身のselling pointは
①黒人で、チーフレジデント (H1Bビザ)
②中南米出身で、LGBTQ (Green card)
だったようです。特に②は稀なapplicantなので、②の人はレジデンシーマッチの際にもMayo, CCF, UTSWなどの内科トッププログラムからもインタビューに呼ばれており、自己アピールの戦略を変えることで呼ばれるインタビューの数も質も大きく変わるなと感じました。また、①の人も「黒人のフェローが欲しい」と実際に言われたりと、人種を理由にした直接的なリクルートがあったようです。ちなみに女性の同僚で循環器内科にアプライした人は全員WICを猛アピールし、コネクションをフルに使っていました。WICをアピールするという戦略は一般的になっている印象を受けます、良くも悪くも。

Conclusion

人種のサラダボウル”ならではの問題がレジデンシーやフェローシップマッチにも影響を及ぼしています。今回、マイノリティーの団結力を強く感じた一方で、異国の地で自分にはそういうグループ、サポートがなく、なぜか孤独感を感じてしまいました。どこに分類されようが循環器フェローシップは結局狭き門ですが、その団結力やその中で生まれるコネクションこそマッチ結果を変える大事な因子だと個人的に思います。日常生活の中でこういった側面を学ぶ機会がこれまでなかっただけに、良い意味でフェローシップマッチは社会勉強になりました。

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