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ざっくり解説:オセロ

こんにちは!ウインドオーケストラオリジンです!
今回は演奏曲解説シリーズ第二弾、来る第5回定期演奏会のプログラムより、「オセロ」をお届けいたします。

本投稿を読めば、第5回定期演奏会をもっと楽しんでいただけること間違いなし!

担当は原田さんです。
それでは本文をどうぞ!



オセロとは

『オセロ~5つの場面によるコンサートバンド/ウインドアンサンブルのための交響的ポートレート』は、1977年に初演されたリードの代表作の一つです。
リードは若い頃より文学に興味を持っており、『春の猟犬』(1980)などの文学に発想を得た作品も多いのですが、とりわけシェイクスピアについては以下の吹奏楽作品を残しています。(カッコ内は初演された年)

・『「ハムレット」への音楽』(1971)
・『オセロ』(1977)
・『魔法の島』(1979)
・『十二夜 シェイクスピアに基づく音楽仮面劇』(2003)
・『アーデンの森のロザリンド シェイクスピアの「お気に召すまま」に基づく吹奏楽のための森のセレナード』(2004)

本作は、これらの作品の中でも最も高い知名度を持つといえるものであり、プロフェッショナルからアマチュアまで多くの吹奏楽団に取り上げられています。
 人の心の弱さをドラマチックに描くシェイクスピアの傑作戯曲『オセロ』は、発表から現在に至るまで、様々な形で上演されてきました。マイアミ大学リング劇場でも『オセロ』の上演が企画され、その舞台音楽を依頼されたリードは1974年に16人の金管楽器と3人の打楽器のために14の音楽を作曲しました。
この中から5曲を抜粋した組曲を同年に初演していますが、イサカ大学の指揮者であるウォルター・ビーラー(1908-1973)より作品を委嘱された際に、この金管・打楽器版組曲を拡充、補筆して現在の広く演奏されている吹奏楽版を完成させました。
その後ビーラーが亡くなり、「ウォルター・ビーラー追悼バンドシリーズ」の4作品目として、1977年10月にリード自身の指揮、イサカ大学シンフォニックウインドアンサンブルの演奏で初演されました。


tutti練習風景

オセロのあらすじ


異国の血をひくムーア人であり、ヴェニスの将軍であるオセロは、美しい女性であるデズデモーナと愛し合う関係にあります。オセロは副官として若いキャシオーを登用しますが、それをよく思っていないのが数々の軍功をあげた旗手のイアーゴーでした。
キプロスに到着したのち、イアーゴーの奸計によってキャシオーは騒ぎを起こして怪我人を出してしまいます。オセロはキャシオーの罷免を決めますが、イアーゴーはデズデモーナに復職を弁護してもらうようキャシオーに助言します。
一方でイアーゴーはオセロに対して、デズデモーナとキャシオーは不倫している、と告げ口をします。これによって、キャシオーを弁護すればするほど、オセロの中にデズデモーナに対する疑いの心は大きくなっていきます。また、イアーゴーはデズデモーナが持っているはずのハンカチをキャシオーが持っていたと仄めかします。
デズデモーナに対する疑いが憎しみに変わったオセロは、キャシオーの殺害をイアーゴーに命じ、自分は公衆の面前でデズデモーナを罵倒して殴り飛ばします。そしてついには、無実を訴えるデズデモーナを絞め殺してしまいます。
イアーゴーの妻により、すべての真実を知ったオセロは短剣で自分ののどを刺し、妻の遺体に折り重なって死んでしまうのでした。


木金管セクション練習風景

各曲の説明


副題に「交響的ポートレート」とあるように、この組曲版ではシェイクスピアの原典を綿密に舞台音楽化したわけではなく、原典の様々な場面について音楽で描写したものとなっています。


1.前奏曲(ヴェニス)
「戦の庭にあって石を枕に鋼を床にしてまいりました我が身には、今や戦場こそが羽毛の寝床なのでございます」
金管楽器による強烈なファンファーレで始まり、戯曲全体の強い悲劇性を表現しています
。冒頭に掲げられた言葉は、第1幕第3場でのオセロがヴェニス公に行った演説の一節で、勇壮な音楽によってオセロの力強さが表されますが、一方で3楽章の夢見るようなメロディーが少しだけ現れ、愛を持ったオセロの一面ものぞかせます。
しかし、それらも最後は叩きつけられるような強奏に飲み込まれて、破滅を暗示させて終わります。


2.オーバード(キプロス)
「おはようございます、将軍殿」
オーバードとは朝の歌を指します。オセロとデズデモーナの窓の下で旅回りの楽隊が演奏し、そんな楽団に対して腹心の副官キャシオーは「おはようございます、将軍殿」と挨拶するように促します。
重厚な展開が続くなか、明るく軽やかな音楽が特徴的です。


3.オセロとデズデモーナ
「あれは私が冒した艱難ゆえに私を愛したのであり、またそうした我が身の上を哀れんでくれたが故に私もあれを愛したのでございます」
オセロとデズデモーナの情熱的で深い愛を描写した音楽となっており、冒頭の文章は第1幕でオセロがデズデモーナに求愛したことについてヴェニスの議官たちを前に行った弁明の引用です。
1楽章で少しだけ登場したメロディーが優しく歌われ、また高声部でも答えを返すかのようにメロディーが紡がれます。それらのメロディーは絡み合うようにして盛り上がり、2人の愛を表現します。


4.廷臣たちの入場
「見よ、あれがヴェニスの獅子か!」
冒頭の言葉はシェイクスピアの原典にはなく、ヴェルディの歌劇の為にボーイトが脚色した台本「ここに獅子が!」という台詞に起因するものと思われ、おそらくリング劇場でも同様の演出がなされたものと考えられます。
勇壮な行進曲風の音楽ですが、人を信じ切ることが出来ない弱さが色濃く出ているシーンです。
オセロを英雄として称えるために訪れた廷臣たちでしたが、オセロはデズデモーナに対する強い嫉妬で半狂乱に陥っており、廷臣たちの前でデズデモーナを罵り殴り飛ばします。そんな様子を見ていたイアーゴーは、「あれがヴェニスの獅子か!」と嘲り笑うのでした。


5.デズデモーナの死、エピローグ
「お前を殺す前に口づけしてやったな。こうするより他は…」
疑いの心をもってデズデモーナを殺してしまったオセロの悲劇を表すかのように、第1楽章のファンファーレが少し形を変えた状態で始まります。
その後、第3楽章で現れたオセロの愛を表現するメロディーが歌われますが、それは不協和音や短調のハーモニーによって痛々しく歪められ、クライマックスを形成していきます。
最後はオセロがデズデモーナの遺体に口づけ、死んでいく様を弱奏とティンパニの律動が表現します。
妻を信じ切ることが出来なかったオセロの「こうするより他は…」というつぶやきを表すかのように…。


以上、オセロの解説でした!


★次回演奏会情報★

<ウインドオーケストラオリジン 第5回定期演奏会>

日程:2024年2月10日(土) 13:15開場 14:00開演

場所:江戸川区総合文化センター大ホール


【オールリードプログラム】

曲目:アルフレッド・リード作曲/

アルメニアン・ダンス パート1
アルメニアン・ダンス パート2
オセロ
第2交響曲

指揮:高野義博
入場無料(未就学児入場不可)

当団の記念すべき第5回定期演奏会では、名曲プログラムとして吹奏楽界の巨匠、アルフレッド・リードの作品を取り上げます!

曲目は、日本で最も有名なリード氏の作品と言っても過言ではない「アルメニアン・ダンス」、シェイクスピアを題材にした作品群でも人気の高い「オセロ」、リード氏の初の吹奏楽編成の交響曲である「第2交響曲」を演奏します。いずれも1970年代に作曲、初演された作品です。

挑戦的なプログラムではありますが、当団の記念すべき第5回演奏会に是非ご期待ください。

団員一同、皆様のご来場を心よりお待ちしております。


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