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あなたと私はどっちが上でどっちが下? 日本語はそこに敏感だから、みんな消耗していく。

パン屋に背の高い、白人種のお客さんがやってきました。

入店には整理券が必要な時間です。以下のようなやり取りを、彼としました。

「ナンバーチケット?」

「ノン」

「ウェイト、プリーズ」

最後のウェイトプリーズは、入店待ちの行列を指差して。

単語を並べただけですが、特に失礼はなかったかな、と思います。

そう。失礼。日本人は、みんなこの概念に消耗しています。

尊敬語。謙譲語。丁寧語。日本語のコミュニケーションは、これらをうまく運用しないと、すぐにギクシャクします。

身分差があるからです。偉い。目上。同輩。後輩、立場が上か下か。自分と相手がどのポジションか察知して、それに最適な日本語を運用しなければならないのです。

私は、そんな身分差が嫌いです。

でも、日本語で思考する限りは、身分差から抜け出せません。冒頭のやり取り、相手が日本人だったら、

「お客様、整理券はお持ちでしょうか?」

と発言します。

「整理券は?」

とは、とても言えません。

この尊敬語、謙譲語、丁寧語は、正確に運用しなければ、途端に変な日本語になってしまいます。しかし、あまりにも難しいので、正確な運用はあきらめて、知ってる限りの尊敬語、謙譲語、丁寧語を混ぜこぜにする無茶苦茶な運用が、特に「会社」で目立ちます。

会社は「身分」でガチガチの世界です。上の者が少しでもあなたに無礼を感じれば「お前は誰にものを言っているんだ」と怒声が飛んでくるからです。

この身分差から抜けるには、会社を辞めるか(それでも日本語で思考する限りは完全には抜け出せませんが)、日本から出ていくしかありません。

私は、パン屋だけでなく、法人相手の仕事もしています。半分、会社に足を突っ込んでいるようなものです。相手に失礼のないよう言葉を選んでメールを書くのが、ふとしんどくなることがあって、日本を出たい、日本人を辞めたい、と思うことがあります。

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