食品ロスは誰のせい? 廃棄と便利の上に立ってみた。
食品リサイクルの現場を長年歩いてきました。
食べられるのに捨てられる「食品ロス」が日本では年間523万トン発生しています。
食品ロスは企業の責任?
523万トン。その数倍が飼料や肥料や発電の原料としてすでにリサイクルされています。食品ロスを出している企業はさらにサイクルを増やそうと必死です。
食品ロスは、それを出す企業の責任でしょうか? 問題はそう単純ではありません。
売り切れはダメ、ちょっと余るのが理想
コンビニでお弁当を買おうとしたら、ほとんど売り切れてしまっていたこと、ありますよね。コンビニ側としては、買いたいお客さんがいるのに売るものがないのは機会損失です。
しかし、お弁当を発注する数を増やせばいいというものではありません。余れば廃棄しなければならないから。
そこで、できるだけ余らないよう、でもできるだけ多く売れるよう、予測される販売数より気持ち多めに発注します。ほとんど売れてしまって、ちょっと残るのが理想です。
廃棄しながら「便利」を維持する
お弁当を作る工場があります。コンビニから受注して、出荷します。受注数は変動します。「お米と肉が足りないので、その数は出荷できません」とは言えません。機会損失を避けて、発注にはできるだけ応えたい。
だから、やはり予測される受注数より多めに材料を仕入れ、仕込みます。
かなり端折って単純にしましたが、このようなシステムのおかげで、日本全国のコンビニやスーパーで、我々はいつでもお弁当を安価に入手できるのです。
食品ロスは我々消費者のため
その便利さを支えているのが食品ロスです。作った瞬間から品質が低下し始めるものを我々消費者が望むように流通させる。企業はそのニーズに、ロスを出しながら応えるしかないのです。
食品ロスの責任は、我々消費者ひとりひとりが負っています。
一つの店舗ではわずかな量でも、集まれば廃棄される量は膨大です。目の当たりにすれば、この流通システムが持続可能かどうかをいやでも考えます。
「偽善でしょ」とうそぶく前に
この課題は、今すぐ解決できることではありません。コンビニやスーパーでお弁当が買えることを前提に、我々の生活は成立しているから。
この記事を書いたのは、知人がSNSで「SDGsなんて偽善でしょ」と発言していたのがきっかけです。
偽善でしょとうそぶく前に、少しでも持続できる方向へシステムを変えられないか、模索してみません?
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