歴史発想源_ローマ建国篇_

第二回:ルビコン渡河の決断「カエサル」 [永遠の帝都・ローマ建国篇]

いよいよルビコン川で、歴史的な賽が投げられる……!

長く混迷の続く紀元前のローマ共和政時代に突如現れた風雲児、名将ユリウス・カエサル。彼はどのような意識で、どのように悪習を打ち破り、どのようにして新たなローマ帝政時代への道を切り拓いていったのか。「歴史発想源・ローマ建国篇」では現代ビジネスの視点でその歴史を紐解いていきます。経営やマーケティングに活かせるヒントを見つけ出してみてください。

ヨーロッパ全土に激震が走る「ローマ建国篇」第二回、スタートです!

▼歴史発想源「永遠の帝都・ローマ建国篇」〜アウグストゥスの章〜

-----------------------------------------------------------

【第二回】ルビコン渡河の決断、カエサル

-----------------------------------------------------------

■ 国内外で次々に実績と名声を重ねていくカエサル

簡単に、前回(第一回)のおさらいです。

紀元前という大昔なのに、既に「物事は、市民みんなで決めようよ」という近代的な「共和政」の国家だった、紀元前1世紀頃のローマ。

今でいう国会や県議会にあたる「民会」、内閣や官僚にあたる「政務官」、政務経験者の長老らによる「元老院」という三権が鼎立することで政治が進んでいました。

でも、長老的な発言権のある「元老院」どもが、偉そうに市民集会や軍人たちも押さえつけていて、国内の揉め事がいっこうに収まらず、国外の有事にもすぐに対応できない形になっていました。

現代の企業に当てはめるならば、社長や管理職(=政務官)と、社員(=民会)の決定が、会長やOB会(=元老院)の度重なる横やりでいちいちケチをつけられるようなものです。

この変な現状を打破しようと政界に躍り出たのが、各地で着実にキャリアを重ね始めていたユリウス・カエサル。

彼は、当時お互いがローマ軍人の第一人者だといってすごく仲の悪かった、ポンペイウスとクラッススという二人の実力者のどちらの派閥につくかではなく、自分を加えてポンペイウスとクラッススを結びつけて「三頭政治」を行なう、という離れ業を見せました。

ここまでが、前回お伝えした内容ですね。


さて、紀元前61年にこの「第一次ローマ三頭政治」が始まると、カエサルは「政務官」の最高の位である「コンスル(執政官)」の座に就任します。

そして執政の責任者となったカエサルは、ポンペイウスとクラッススの軍事的求心力を背景に、長年「元老院」が行なってきた悪政の問題点をビシビシと容赦なく指摘して、バシバシと迷いなく政治を正していきました。

例えば、それまで非公開だった「元老院」での議事録の公開を求めたり、「元老院」らの特権階級だけが甘い汁を吸えるようになっている土地に関する法律の問題点を追求したりして、市民にも平等になるような法案を通すわけです。

特権階級の悪行に鉄槌を下し、市民の権利を確保する。

そんなカエサルの果敢な断行は、ローマ市民たちから絶大な人気を集めていきます。

これまで圧倒的政治力を持っていた「元老院」も、今まで好き放題やってきたことが痛いツケとなり、二人の名将軍と、正義感の強いカエサルを前に、なす術もなくおとなしくなっていきました。

こうして、カエサル、ポンペイウス、クラッススによる「第一次ローマ三頭政治」は、これまでの共和政よりに比べれば、はるかにスッパリと物事が早く決まる政治形態になりました。

そして紀元前58年、カエサルは「コンスル」の任期が終了するのですが、今度は「ガリア総督」という地位に就任します。

ガリアというのは、ローマの北にある属州で、今でいうフランスやベルギーのあたりを指します。

とは言っても、この頃のフランスやベルギーなどは、中心地ローマからすると遠いド田舎の地であり、アルプス山脈より手前(イタリア側)こそがガリアの中心地、という認識が当時は当たり前でした。

つまり、カエサルの就いた「ガリア総督」という役職は、「東北地方も一応全部管轄する、福島支社長」とか、「中国全土も一応担当する、上海支店長」みたいな感じだったんですね。

だから、実質的には「ガリア総督」とはガリア全土というよりも、アルプス山脈より手前側を重点的に治めるという役職でした。

ところがカエサルは、これまでのローマ軍人とは全く異なる視点を持って仕事にあたります。

「ガリア中心地を治める」のではなく、「ガリア全体を治める」ことに注力したのです。

つまり、一応は属州になっているけれどもあまり支配が及んでいなくて野放しになっていた遠いフランスやベルギーにまで、どんどん軍を進めて、反対勢力を徹底的に潰して支配を強化していったのです。

現代にたとえて言うならば、これまでの「上海に支社のある中国支社長」が上海とその近郊ぐらいしか営業に力を入れてなかったのを、新しく上海に赴任してきた中国支社長が、これまで未開拓に近かった西安や成都などの遠い地方都市にも全部ローラー営業をかけ始めたようなもの。

カエサルは、このガリア全土の鎮圧、いわゆる「ガリア戦争」を7年に渡り実行し、ガリア全域を完全屈服させることで、ローマの勢力範囲を大幅に広げることに成功し、ローマ市民から絶大な人気を集めていきます。

しかも…


ここから先は

5,089字 / 2画像
この記事のみ ¥ 145

noteマガジン『マーケティング発想源』では、皆さんのお仕事やご商売に活きる有用で有益な発想源を多数お届けしています。新事業や新企画のアイデアの発想源がいろんな視点から次々と。応援よろしくお願いいたします!