見出し画像

「木綿のハンカチーフ」の分析

先日テレビを見ていたら、歌謡曲の解説のようなコーナーがあって、アイドルだかなんだか知らぬが若い人が出てきて、歌詞の内容を表示された画面を棒で指しながらしゃべっていた。
(内容が想像つくので、音声を消して次のコーナーが始まるまでコンピュータの画面の方を見ていた)
いつもたいてい、「歌」を取り上げると歌詞の内容に終始して、曲そのものに関しては一言もふれないことが多いらしい。つまり、「音楽の解説」のふりをして文学の話をして済ませてしまっている。
冒頭のテレビのコーナーでは「木綿のハンカチーフ」に関して、いつもながらの文学話をしているようだった。(音を消していたのでわからない)

この「木綿のハンカチーフ」は名曲であろう。それは歌詞の内容が「男の考え」やら「女の気持ち」など云々かんぬんということではなく、1~4番の歌詞のそれぞれの前半が男の言葉で後半が女の言葉で書かれていて、男の言葉の部分は5音音階、女の言葉の部分は7音音階を使い分けているという点がひとつある。

画像1

上の譜例は曲の冒頭の音の並びである。
(便宜上ハ長調の音階に移調してある。また、リズムは無視してある)
曲の最低音から最高音まで4小節で駆け上っていって、男の高揚する気分が表される。
(歌詞がついていない部分の音は曲が進行すると歌われる。音階がわかりやすいように並べてある
下段の歌詞は北島三郎氏が歌った「函館の女」。これは最低音から最高音まで3小節で駆け上がる。
「演歌」と称され、大抵が5音音階の類の曲群と「木綿のハンカチーフ」の男の言葉部分の音は同じなのである。

画像2

上の譜例は女の言葉で使われる音を並べてある。
使われる音の違いだけでなく、高揚する歌い出しと比較して、女の言葉は高めの音から次第に下がりながら最低音を拾う。
しかも、男の出だしが長三和音(メジャーコード)に対し女の出だしが短三和音(マイナーコード)という違いもある。

画像3

作曲の筒美京平氏がこれを意識してやったのか、何かで公表しているのかどうか知らないし、歌った太田裕美氏が知っていたかどうかもわからない。
が、しかし、歌を作ったり歌ったりする人は歌詞の内容ばかりでなく、「音」に関しても工夫や関心を向けて欲しいものだ。

いつだったか、FMをきいていたら、作詞の松本隆氏が出演していて、「木綿のハンカチーフ」の詞をレコード会社のディレクターを通じて筒美京平に渡しておいたところ、詞が長すぎるから短くさせろとディレクターに電話したとか。松本隆氏はすでに飲みに出かけてしまっていた。まだ、携帯電話の無い時代の話である。連絡が取れないことがわかると筒美京平氏はしかたなく作曲を始めたが、意外にもうまくできたので、気分良く寝た。・・・という話だった。

気が向きましたら、サポートお願いします。