マガジンのカバー画像

小説・「塔とパイン」

27
作:よわ🔎 概要:45歳、片田舎の洋菓子店のパティシエが、紆余曲折、海を渡ってドイツでバームクーヘンを焼き始めた。 ※毎週日曜日更新(予定) ※作品は全てフィクションです。著…
運営しているクリエイター

#喧騒

小説・「塔とパイン」 #15

小説・「塔とパイン」 #15

そろそろ陽が傾いてきた。「Konditorei Weise」への客足も時間が経つにつれて少なくなっていく。店内の喧騒も小さくなってきた。夜遅くまで店を開いていることはなく、ディナータイムにはもう店は閉まっている。それがこの店のスタイルだ。

だから、閉店時間も決まっているようで、決まっていない。売り切れたら早めに終わることもある。とはいえ、延長して長く店を開けるということもない。

時間で縛るんじ

もっとみる
小説・「塔とパイン」 #08

小説・「塔とパイン」 #08

僕が今、働いているショップ「Konditorei Weise」は、ドイツ第三の都市の旧市街にある。旧市街と呼ばれる地区は、規模の大小はあるけれど、どこの街にも存在する。いかにも「ヨーロッパの街並み」だ。

石造り、煉瓦造りの屹立した伝統的な意匠の佇まいの建物が、これまた石畳の旧道に面している。一見すると画一的に見えるが、よくよく目を凝らしてみると、同じではない。

俯瞰して見ると「あぁ、全部一緒だ

もっとみる