一足遅れの、同窓会

このnoteは、#バトンズの学校同窓会 として書きました。投稿日は1月3日とのことで、期限超過していることがタイトルから受け取れると思うのですが、やっぱり私も同窓会したくて……(みなさま、申し訳ありません……の流れといってはなんですが、新年あけましておめでとうございます。また、みなさんに会えるのを楽しみにしています。図々しいこと百も承知でnoteを書きました&みなさんのnoteをハッシュタグから読みました。いいなあ、と思って自分も遅ればせながら参加させていただきます。にしても、カッコの中に書く量を、これまた超過しているのでこのへんで。今年も良き一年になりますように。重ねて、期限超過失礼いたしました……)。反省の色、見えずらいと思いますが、それでは本編へ。

「チキン」は鶏だけでなく、人に対して使うこともある。臆病者、小心者、弱虫。けっこうマイナスな意味で使われることが多い。


7年前、確実に後悔していることがある。

その日は、成人式だった。

当日は朝早くからレンタル衣装屋さんへ行き、振袖を着付けてもらった。選んだ振袖の色は生成り。白というよりはアイボリーって感じで、オレンジとピンクを混ぜたような色の桜が散っていた。半年ほど前にカタログを見て、一目で「これを着るのだ! 私は! 成人式に!」と思った振袖だった。

私は瘦せっぽちなので、タオルを何重にも重ねて振袖が綺麗に見えるように着付けてもらった。終わった瞬間、「あ~これを選んでよかった」と私は心底思った。実際に好きな色は青だけれど、今はこれがいい。これが、一番いい振袖だ。


満足した仕上がりで成人式会場へ行った。久しぶりに会う小学、中学、高校の友達と挨拶を交わし、ちょっとヤンチャな同級生たちを「まあまあまあ」「ほほほほほ」と上級貴族のような気分で眺めていた。地方の田舎の成人式なので、そりゃあ、いるのだ。レインボーヘアとか、自分の名前が金で縁取られた旗とか、ふぁさっふぁさっの白い羽毛マフラーをぶんぶん振り回している人とか。あとは、あれね、そういう成人たちを祝いにきた先輩。すんごいときのオナラのような音をさせた車をキュキューッと駐車場へ入れて、ぼわんとした花束を持って運転席から登場するのだ。ヨッせんぱ~い、というお囃子が一部で聞こえる。

私はそれをきつねのような目で見ている。こういうのってテレビだけじゃないんだ……と思っている。同時に、準備に余念がないな……とも思っている。言葉にせず、こっそり思うのだ。

すると、

「朝早くから準備したんだね~すごい」

隣にいた友達が言った。よくぞ言った。だから、私たちは友達になったんだなと思ったのだった。


成人の集い、と書かれた看板が上に架かっている舞台。市長が挨拶をする。「今日からみなさんは成人で~」。そして、まさかのノーモア映画泥棒! のニュアンスでノーモア飲酒運転! という映像が流された。成人を超えるといろんな権利が付与されるけど、同じくらい守らなければならない規則やルールが増えるらしい。選挙も、お酒も、タバコも、アダルティないろいろ。よくわかっていないくせに、権利をくれるらしい。


成人式が終わると、地元で一番大きなホテルで中学校の同窓会が行われた。私は中学生のときにクラス委員長をしていた関係で、他の子たちよりもすこし早めに会場入りし、出欠をとることになった。

別のクラスの委員長たちとも久しぶりの会合。5年ほど前、私たちは一緒になって行事を成功させたり、体育祭ではライバルとして戦ったりした。一時代を築いてやるぞー! と意気込んでいた私たちは、成人を迎えた。その照れくささと、時の流れの速さを一丁前に語ったりした。

きゃっきゃと昔話で盛り上がっていると、同級生たちが少しずつやってきた。やってきたなかに、「あ」と思った人がいた。


元カレだ。


グレーのスーツを着た彼は、私と付き合っていたときよりも身長がすごく高くなっていて、すらっとしていた。地元の野球チームに入っていたから坊主だったはずなのにその面影はなくなり、髪の毛をセットしていた。

いや、ちょい。ふつうにめっちゃかっこいいんだけど!? 私は思った。

彼は別のクラスだったから、隣の隣に座っていたクラス委員長のもとで受付をしていた。ちょうど私のところに同級生は来ていなかったから、ちらりと彼を盗み見た。

左手を添えて、出欠簿に名前を書く様。

あのときは、プリクラに書かれた彼の字にすら恋をしていた。すごく、好きだったのだ。


オンタイムで同窓会は始まった。中学校の先生たちも合流し、写真を撮ったり、立食形式でご飯を食べたりした。久しぶりの再会をする同級生も多くて、私は夢中だった。

目の端で元カレを見ていたけど。

彼も彼で、同じクラスの友達たちと笑っていたから、「まあいいか」と思っていた。


縁もたけなわ、同窓会がお開きになるとき。

「あのさ」

私は、声をかけられた。


元カ……ではなく、元カレの一番の友達から。きっと小学校が一緒だったからだと思う。

「え! 久しぶり~!」

「あ、うん、久しぶり」

彼は、ちょっと話し下手。

「ね~!」

「うん」

……。

…………。

え、気まずい。なんだこれ。にこにこはしているけど、何も話しが盛り上がらない。


「……えっと、あのさ」

彼が重そうに口を開く。

「うん? どうした?」

「あとで、あいつが「たなべ~! クラス写真撮るよ~!!」

割り込んできたのは、同じクラスの人たちだった。呼ばれたほうを見ると、私のクラスがクラス担任だった先生をセンターに、3列になって集合写真を撮る準備をしていた。

「あ、うん! 行く~!」と返事をして、彼を見ると「あ、いや、いい。向こう行って」と言われた。

「あ、ほんと? じゃあ、またね。元気で」

「うん」

その言葉を最後に、私はクラスの集合写真へ合流した。


それで、同窓会は終わった。


今思うと、あれは絶対元カレからの呼び出しだった。彼が「あいつ」と呼ぶのは私の元カレしかいないし、そもそも話しかけてくる用もなかったと思う。小学生のとき、すごく仲良いわけでもなかったから。

元カレの話でしかなかったのに、私は。


もしあのとき、クラスの集合写真がなくて私がちゃんと彼の話を聞いて元カレからの呼び出しに応じていたら。何かが変わっていたのだろうか?

そもそも、元カレはどうして私を呼び出したのか。自分じゃなくて、友達を使って私を呼び出したのはどうしてなのか。

私は、どうしてちゃんと「なに?」ともう一度聞かなかったのだろうか。

今でも覚えているくらいの後悔なのに、そのときの私は後悔になることも想像していなかった。

ああ、そうか。これが後悔先に立たず、というやつね。


……なんて自分本位で語っちゃってるけど、実際は私がチキンだったのだと思う。

ほんとうに知りたいなら、集合写真撮影が終わってから彼に「さっきは途中でごめんね。それで?」と言えばいいだけの話。なのに、その選択をしなかったのは私だ。

「あいつ」と言いかけたのを聞いていたのに。何を言われるのか心の真ん中で気にしていたはずなのに。それにも関わらず、ってやつだ。情けない。

携帯を変えたタイミングもあり、元カレも、私に話しかけてくれた彼の連絡先も知らない。知らないから私は、成人式が終わった今日に至るまで、後悔し続けている。

私は臆病で、弱かったから、後悔を抱えていくしかないのだ。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。