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分数とASMRに気がつく人
「あのとき、天才に出会っちゃったって思ったよね」
そう話したのは、家庭教師のアルバイトをしていた友達だった。彼女が教えていたのは、確か小学校3年生の男の子だった。
「分数を教えてたんだよ」
そのときに起こった出来事らしい。
「1/3 は、割り算したら 0.3333……で無限になるんだよ~って教えてて。そしたらふと、男の子が言うわけ。『え、それじゃあおかしくない?』って。私が『なんのこと?』って聞くと、めっちゃ真剣な顔して、
『1/3 = 0.3333…… になるけど、両方に ×3 をしたらイコールにならないよ』って言われて。
確かに、1/3 × 3 は、1になる。でも、0.3333…… × 3は 0.9999……。
そうなると
1=0.9999…… になるから、イコールじゃないよね、っていうことを言っててさ。
あのとき、私は天才に出会っちゃったって思ったよね」
と、彼女はうんうんと頷きながら話していた。
「で、なんて答えたの?」私が聞くと彼女はにんまりして言った。
「それは、大学に行けばわかるよって言った」そうだ彼女は、都内理系の賢い大学に通っていたことを思い出した。
この話を聞いて、そんなことに気がつけるってすごいことだなと思う。私からしたら「言われてみれば確かに……」程度の話で、「そういうものでしょ」と疑問も持たずに受け入れてしまっていた。
これと同じ気持ちを、ASMRが流行り出したときにも感じた。
人が食べている咀嚼音なんて、もし目の前でやられたら「うっ……」ってなってしまう行為第1位だ。クチャラーなんて言われて嫌がられるし、100年の恋も冷めるってやつだ。
なのに今、私は暇があればASMRを聞いてしまっている……。
バリィバリィッ!! とか、カリカリカリッ! とか、なんで聞きたくなってしまうんだろう。不思議でならない。むしろそれで食欲が湧いて、思わずコンビニに走って牛肉コロッケを買ってしまうぐらいだから恐ろしい。
「咀嚼音って、言わないだけでみんな好きでしょ」って思った人は天才だなあと思ったりする。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。