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ちょうどよく元気なく生きている

坂元裕二さん脚本のドラマ「最高の離婚」にね、めちゃめちゃ皮肉だけど、自分がそういう状況になったときに堪らなく刺さる言葉があるんだよね。

人がいちいち元気かどうか聞いてくる人が鬱陶しい。

元気がないのが普通の状態の人間もいるんだ。

ちょうどよく元気なく生きてるのに、元気なことが当たり前みたいに聞いてくるな。

ありがとう、坂元裕二さん……こんなことを言ってしまえるのは、生み出してしまえるのは、坂元裕二さんだからだなとひしひしと感じてます。


このセリフを言ったのは永山瑛太さん演じる主人公夫妻の旦那さん、濱崎光生だ。光生は几帳面で、神経質。かくれんぼをしていたら、見つけられないまま夕方17時のチャイムが鳴ってしまうような人。車道と歩道を区切る石段の上を歩くけど、最後の最後でいつも落ちてしまうような人なのだ。


私はこのセリフを、ほんとうに、ほんとうに不意に思い出してしまうときがある。

元気でいること。健やかでいること。ご機嫌でいること。自分が常にそうでありたいと願っているからこそ、それを基本にしてしまっていることにハタと気づかされる。

自分だってそうできないときがあるのに、そうでないと悪いことっていうか、ダメな自分って勝手に判断してしまっていたり。

0にある目盛りに、「元気」「健やか」「ご機嫌」と書いてあるとは限らないよね。もしかしたら5の目盛りなのかもしれないし、人によっては10の目盛りにあるかもしれない。となると「元気」「健やか」「ご機嫌」は、けっこう無理してテンションあげないといけない人だっている。

ご機嫌とれてないと、 ”悪” って思ってしまう可能性があるって怖いな。だから、光生の言う「ちょうどよく元気なく生きてる」の言葉が痛い。

ちょうどよく、元気なく生きてる。

坂元裕二さんはどの目盛りに「元気」「健やか」「ご機嫌」らの文言が書かれているのかはわからないけど、その範囲まで想像が及ぶのがすごい。

ちょうどよく元気がないし、ちょうどよくご機嫌ではいないだけなのだ。

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