本のために。今日、新しい目標ができました
今日、新しい目標ができた。
ブックマンションに入居すること。できれば秋までに。これが私の当面の目標だ。
「引っ越しするの?」と思った方。いいえ、違います。
ブックマンションは、建物名ではない。お店の名前だ。
お店の両壁にある本棚は、下から上までびっちりと本で埋まっている。
しかしこの本棚、よく見ると縦横30センチ角で細かく区切られている。そしてその1区画にはそれぞれ数字が割り当てられていて、その1区画に自由に本を置くことができる。いわばシェア型の本屋さん。これがブックマンションだ。
1区画に本を置く人を”棚主”といい、棚に本を置くためには月額4,000円がかかるものの、それ以外の制限はまったくない。誰でも自由に本を置くことができる。
私は、秋までにこのブックマンションの1区画で小さな本屋さんを開きたい。それが、今日できた目標だ。
このお店の存在を知ったのは、4月2日にボランティアとして参加した「吉祥寺本とTシャツ蚤の市」が最初だった。
このイベントを企画した方こそが、ブックマンションを運営している中西さんだ。この中西さんが、とっっっっても面白い方で。本の可能性を、本の希望を、本の魅力を、私よりもずっとずっと信じていて、それを形にしている人だった。
中西さんはブックマンションの他に、三鷹で無人古本屋「BOOK ROAD」も運営している。
とにかく本が好きで、本を諦めない。そんな人だった。
「吉祥寺本とTシャツ蚤の市」というイベントにボランティアで参加したこの日、私はずっとふわふわしていた。世の中には、面白いことを企画して実行している人がたくさんいることに気づいた1日だった。そんな面白い人たちに、たくさん会ってしまった1日。その世界を「知らなかった私」から、「知ってしまった私」になった日だった。
それぐらいどきどきして、羨ましくって、悔しくって、わくわくした。たくさんの感情が混じり合って私はふわふわしていた。世界には、当たり前の会話の一部として本の話をする人がいるのか、と。自分の好きな本を押し付けることなく語って、人の好きな本の話を受け入れる。そういう人たちばかりだった。
私にとって、本は、蛍雪の功のようなものだった。
中学生のとき、国語の時間に「蛍雪の功」の成り立ちを教えてもらった。中国の貧しい少年が、電気をつける灯油が買えないがために、蛍の光で勉強する。冬になると、雪が月明かりを反射するのを利用して勉強する、というのが成り立ちのストーリーだ。
蛍雪の功のように、本をひらすら読む、ということではなくて。私にとって本は、夜という孤独の中、誰にも理解を求めず、たった1人でこそこそ読むものだと思っていた。
共有できない。だけど、共有したいとも思っていない。私が本を読むために作り上げた、私だけの空間。本は、物語の世界に没入すれば1人ではないけれど、現実世界でみると、私はいつも結局ひとりだった。
本を読んでる私に、誰も干渉できない。誰とも繋がることができない。そういうものだと思っていた。
でも、今日。ブックマンションに行ってみて、出店している棚主さんと話をした。お店番は棚主さんが交代で行っているという。
「すっごく楽しいですよ。私たちは、みんなそれぞれ全く違う人間ですけど、”本”という共通点で繋がっているんです。はじまりの点には、みなさん”本”があります。なんていうんですかね、大人になって参加できた小さなサークルのような感じです」
私は泣きそうになった。”本”という点をスタートにして、人と繋がれる。孤独だった私と本の空間に「こんこん」とノックの音が響いた瞬間だった。「こんにちは」と現れたその人は、本を持っていた。
ブックマンションでは、自分が読み終わった本を置く棚主さんもいれば、森見登美彦さんの本だけを置く人もいる。棚主さんが編集者だと、自分が関わった本を置いている場合もある。”茶色”、”歴史”などテーマを決めておいている棚もある。ほんとうにさまざまだ。部屋に行かなければ見えない、いろんな人の本棚を見ることができる。
私は、本が好きだ。すごく好きだ。
私は秋までに、ブックマンションに入室する。それが今後の目標で、そのために、私が伝えられる本の魅力をもっと深めていきたい。そう思っている。
そして、話したい。一緒に読みたい。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。