作用反作用の法則

朝の目覚めは最悪だった。
無理矢理、起床したが頭が真っ白で、鈍痛がひどく治らない。

隣には、君が寝ていた。


会社に行こう迷いながら、シャワーを浴びることにした。浴室に行き、シャワーのレバーを引いて、お湯が出る間に服を脱いだ。温水になったのを確認し、シャワーを浴びる。

程よい暑さに打たれ、僕の意識は曖昧さを少しずつ脱ぎ捨て、今の体のだるさを感じながら、昨夜の事を回想して行った。

水が肩から身体全体に滴りおちる音が、もやのかかった心をさらにざわつかせていった。

そう、昨夜僕は超えてはいけない一線を越えてしまった。そして犯してしまった罪が何事もなかったように、時間が巻き戻ってくれればいいのにと、僕は心底から思った。

長い片思いが昨日、衝動的な欲望によって、終わりの足音がし始めたのだ。。。


昨日も仕事帰りに、いつものように君の家で夕食をする約束になっていた。

君が好きな白ワインを片手に、少しでも君と長く居たくて、僕は吸い込まれるかのように家路へとついた。

君の家に着いた頃には、8時を回っていて、玄関を上がると、いい匂いが家中に広がっている。

僕:「ただいま」

君:「おかえり、今日はイタリアンにしたんだ。よかったかな?」

僕:「君が作るものなら、なんでも美味しいに決まってるよ。」

そんなどこでもありふれたコトバで答えて、コートを脱いで、ネクタイを外して、浴室横にある、洋服かけにかけた。席について、運ばれてくる料理を横目に、僕は買ってきたワインを開けるために、ワインオープナーを探しにキッチン棚の引き出しを開けて、オープナーを見つけ、ワインを開けた。

席に戻って、ワインをグラスに注ぎ、今週あったことを取り止めなく話し、食事を少しずつ、味わいながら、ワインを飲んだ。

だいぶお酒も回ったころ、僕はトイレにいくために立ち上がり、トイレに向かった。用を足して、トイレの中で壁に持ち掛けた。

この幸せなひと時が僕にとっては、この上なく幸せで。このまま君をいつまでも、いつまでも、独り占め出来たらいいのにと。そんな気持ちを抱えてトイレの扉を開けた。 

またダイニングに戻ろうとしたとき、君はトイレ横の浴室から、ちょっと後ろ向きで、後ずさりをしていた。僕に気が付かず、ぶつかりそうになったので、僕はそっと君を後ろから支えた。

君:「あ、ごめん。後ろにいると気が付かなかった。助かったよ。」

そうやって、ちょっと苦笑いした君。

その時、本来であれば、冗談でも言ってすっと手を離してしまうところを、僕は、何故か離せずにいた。手から伝わる君の体温が、暖かくて、、、

このまま手を離してしまうのが惜しいと思った。

そのまま君を、振り向かせて壁に寄りかからせた。

そして、

そっと、唇を重ねていった。

君の身体が緊張してゆくのがわかった。きっとびっくりしたのだろう。

君は僕を払いのけようと、僕の肩に掴みかかってくる。

僕は、唇から口を離した。

驚きと恥ずかしさで表情がぎこちなくなっている君に。

僕は、もうこの気持ちをこのまま収めることができないことを体で伝え、

そっと、君の額にキスをする。 緊張がゆるんでいく、君を感じながら僕は、また何度も何度も君にキスをする。

君と長いキスが、現実と世間体と歪んだ何かとまどろんで、

そして、僕と君の関係がきしむ音がした。

また唇を離した時、君がどうしていいかと不安そうな顔をした。     僕はそんな君の表情に、安堵と腹の奥から突き上げてくる、性欲と愛しさが混じった感情に翻弄されていった。そしてその熱くて、強くて、コントロールできない衝動に突きうごされていく。

こんな形で君となるなんて予想外だ。真っ直ぐに見つめてくる瞳が、僕が行けないことをしているかのように僕には映って見えた。

洋服掛けのところから、僕は自分のネクタイを引っ張り出し、君の眼を追い隠し、ゆっくり優しく結んでいく。

またキスをして、絡まる舌が、滑り合い、口の中で君の熱を感じながら、さらにまどろんで、まどろんで。

君の身体がどんどん熱くなっていく。

耳まで熱って行くのを感じながら、うなじになぞるように静かにまたキスをする。

君を引き裂きたい欲望と戦いながら、優しく、優しく、ゆっくりと愛撫していく。

もう君が体制を維持できないほどまどろんでいくのを見て僕は、そっと君を壁側から誘導し、2階に続く階段へ引き込んでいく。

君の手からはこのまま引かれて全てを明け渡してしまおうとする力と、  やはりこの友情を今まで通りに留めておきたい気持ちが反発しているのが感じられた。

僕はそんな君に階段でさらに壁に押しつけて、深いキスをする。

もう僕は後戻りなどしないと、もう友情関係には戻らないと君に強く舌を絡め合わせ、宣戦布告をした。

力が抜けていく君の腰を、支え寝室へと導いていく。

綺麗に敷いてあるシーツが、君を押し倒した反動で歪んでいくのを見ながら、僕は君の額にキスをした。

そしてうなじをゆっくり口でなぞらえて、君のシャツのボタンを一つずつ外していく。

ああ、僕は君を抱くのだろう。

ああ、君は僕に抱かれていくのだろう。


熱くなって、理性も何もかもが機能しなくなった脳みそが、本能だけをむき出しにし、僕は動物になって君を貪り、喰らっていく。

ああ、君の喘ぎ声と、僕の息遣いが重なり合って、ゆっくりと快楽の世界に入り込んでいく。

一瞬、一瞬、この瞬間が愛おしい、何も見逃したくない。

君が一瞬一瞬感じたことを共に感じ合いたい。

どうしてこの世はこんなに不条理なんだ。               いびつな僕たちの関係は決して世間では喜ばれる関係ではない。

世界の不条理に作り上げた差別も法律も、ぶちのめしてやりたい。

一つ一つの喘ぎ声と、突き上げてくる僕の腹の中の暴力的なほどの欲情が、されに君らしくない姿へさせていく。


どうか目覚めたら、これが夢でありますように。

どうか僕の歪んだ愛情が、君を傷つけませんように。

どうか、目を覚ましても、君が僕のそばに居ますように。

どうか、どうか君が僕のものになりますように。。。。



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