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新卒離職率3割超を改善する鍵がここにある!~理念共感型イベントの可能性~

「柿沼だけ人事課な」
新入社員研修終了後の配属発表のとき、当時の人事部長から言われた言葉です。入社した会社は半導体商社だったので、てっきり営業配属だと思っていたのですが、蓋を開けたら私だけ人事課配属。半導体やそれが組み込まれるエレクトロニクス製品に興味を持ち入社したのに製品には一切かかわることのない人事となり、気持ちの整理をつけるの少々時間がかかったのを思い出します。

メンバーシップ採用の問題点
メンバーシップ採用においては、私のようにその業界・製品に興味を持って入社したにもかかわらず、それを携われない部署に配属されることもあります。仮に、最初の配属が希望通りでも、その後、望まない部署に異動することもあり、それによってやる気の低下、または離職に繋がることもあるでしょう。

新卒採用で企業は何を伝えるのか?
採用において、学生に提供する会社情報として、外面的なものと内面的なものがあります。さらに、内面的なものは「見えやすい」ものと「見え難い」ものがあり、それを整理したものが下の図です。

新卒採用の会社説明会では、主に、企業の外面と内面のうちの「見えやすい」ものを中心に説明していくでしょう。勿論、内面の「見え難い」もの、つまり、組織風土や経営理念なども伝えていくと思いますが、そこに時間を割くことはあまりなく、十分に理解を得られていないのが現状だと思われます。

説明により力を入れるべきもの
必ずしも希望の部署に就けるとは限らないメンバーシップ採用においては、企業の内面、特に見え難い部分をより理解してもらう必要があります。なぜなら、社長の考えや経営理念に深くコミットしてくれている学生は、入社後、どのような職種に就いてもモチベーションを維持し力を発揮してくれる可能性が高いからです。

理念共有型イベント「ウインクオーディション」
先日、株式会社プレシャスパートナーズさんが主催するウインクオーディションという就活イベントを見学させて頂きました。こちらのイベントは、下記のような特徴があります。

1)企業側は社長自ら登壇し、経営理念や事業への思いを中心に発信する。
2)学生側は、大切にする価値観を含めた自己PRを企業に伝える。
3)互いの価値観についての対話を通じ、マッチングを図る。

勿論、企業の外面的な情報の提供もあるのですが、イベント中は、通常の企業説明会ではあまり時間をかけない企業の「見え難い内面」の共有がたっぷり行われ、より深い相互理解ができるプロセスになっています。下記は、イベント内容の詳細です。私の所感も含めて記載します。

ウインクオーディション開催資料をもとに加工

オーディションでは、採用難とされる飲食業界の企業も参加していました。最初の企業紹介では、やはり会社の良さがなかなか伝わっていない様子で、最終的にベストマッチの学生が出るかどうか、私自身心配してました。しかし、その後の学生と直接対話するトークセッションで、その事業に対する思い、創業から連綿続く価値観、飲食のイメージを払拭するための戦略が語られ、トップの情熱が学生にじわじわ伝わっていきます。4時間に亘るセッションが終了し結果発表では、見事その会社もベストマッチの学生が2名見出され、めでたく記念撮影。その過程は感動すら覚えるものでした。

今後の新卒採用で取り組むべきことは何か?
企業の見え難い内面を効果的に伝えるため、ウインクオーデションに参加するもの一つでしょう。ここではその他、自社でできる施策を二つ挙げさせて頂きます。

1)経営理念の発信と浸透に向けての努力
HPに載っているような、文字ベースの理念をいくら提示しても、学生は、頭では理解するものの、感情的な部分に触れることは少ないでしょう。その理念の背景や想い、それによってどのような顧客、社会に貢献していくかを社長自らの言葉で伝えていく必要があります。それによって、学生の琴線に触れていくのだと思います。

ただ、一点注意点があります。それは、その理念が社内に浸透しているかどうか。もしその理念が絵に描いた餅だったら、理念に共感して入社した新卒社員の希望は失望に変わります。新卒採用で理念を強調するのであれば、社内の浸透度も継続的にチェックしていく必要があるでしょう。

2)社長・社員の内面の開示
前述のウインクオーデションでも実施していましたが、社長のアセスメント結果を開示し、それをもとに、自分の強みや課題、性格特性等、社長自身が語ると良いと思います。その会社の社長がどういうキャラクターの人か、学生の関心事の一つです。定量的に把握できるアセスメントを使いながら普段のエピソードを交えて説明することで、より理解が得られるでしょう。

また、社員全員(選抜しても良いと思いますが)のアセスメント結果の平均値を開示しても良いと思います。外向的な人が多いのか、正確性を重視する人が多いのか、そういった全体傾向が分かると組織風土の解像度が上がります。

今後の展望
昨年10月に厚生労働省が公表したデータによると、2020年卒の就職後3年以内の離職率は全国の大卒者で32.3%。新卒採用に膨大なエネルギーやコストを割いている企業にとって、この数値は大きな痛手なはずです。

紹介したウインクオーデションは、まだ始まって数年とのこと。今後、こちらのイベントで入社を決めた学生の在職状況や活躍度合いのデータが集められ、他の手法で入社した社員との比較ができれば、理念共感型採用の実効性について考察が深まっていくでしょう。

【参考情報】
ウイングオーディションの紹介動画


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