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人材獲得競争を制する!中途採用成功の鍵

「2.8倍」
先月15日にパーソルキャリアが公表した転職求人倍率(※1)です。この指標は、1人の転職希望者に対して中途採用の求人が何件あるかを示しており、企業側から言えば求人難易度を表す指標となります。2.8倍は、同社が現在の基準で算出を始めた19年以降で2番目に高い数値だったようです。人手不足を背景に今後もこの流れが続くと思われ、企業の中途採用業務はますます重要性・難易度が高まってくると思われます。

その現状を踏まえ、本コラムでは中途採用を成功させるためのポイントについて整理したいと思います。


重視すべき二つのステップ

中途採用は基本的には下記のステップを踏みながら進んでいきます。

【採用準備】
1)採用リソース(人員・予算)の確保
2)採用計画の立案
3)面接評価基準の設定
【採用業務】
4)適正な母集団形成
5)候補者への会社説明
6)面接
【内定後フォロー】
7)入社承諾への交渉
8)入社後のフォロー

中途採用の成功を「採用した人が、即戦力として期待通りをパフォーマンスを発揮すること」と定義した場合、この8つのステップの中でどれが大切になってくるでしょうか。これまでの当社のコンサルティングの経験で言えば、3)面接評価基準の設定と6)面接を通じた”人材の見極め”と5)応募者への会社説明での”アトラクト”(自社の魅力を伝えながら候補者の入社意向を高める働きかけ)がより重要と考えます。中途採用で成功している企業の多くは、この二つにより一層力を入れています。

面接評価基準

人材の見極めは主に面接で行いますが、その前に評価基準を設定する必要があります。まず最初に、対象職務での求められる成果を定義し、その上でその成果を実現するために必要な3つ要素を明文化します。一つは、知識・スキル、二つ目は、コンピテンシー(成果に結びつく行動)、最後(これは全職務共通となりますが)会社の経営理念・カルチャーとのフィットとなります。例として、簡単ではありますが、経理部長のポジションで作ってみました。

経理部長の評価基準(例)

各選考段階の役割

では上記の各要素を、採用プロセスの中のどこで見極めていくべきでしょうか。実際の選考に入る前に、その部分を明らかにしておく必要があります。例えばこのような形で事前に明確にしておくのはどうでしょうか。

書類選考
過去の経験や取得資格から候補者のスキル・知識を確認する。
1次面接(配属予定部署の面接)
スキル・知識についての補足質問を中心に確認する。
2次面接(人事担当者の面接)
コンピテンシー(成果行動)の質問を行う。
最終面接(役員・幹部職の面接)
主に経営理念の理解やカルチャーとのフィットについて確認する。

選考で最も重要で難易度が高いのは、上記の例で言えば、2次面接のコンピテンシーを確認するところ。先ほどの経理部長の例で言うと、この役職に経営への施策提案まで求めるのであれば、単に数値を正確に取りまとめる「慎重さ」「丁寧さ」だけでなく、ロジカルに相手を「説得する力」も必要となります。候補者にその力があるかどうか、過去の具体的な業務経験を聞きながら見極めていくことになります。それが所謂コンピテンシー面接というものです。

コンピテンシー面接とは

コンピテンシー面接では候補者の成功体験と失敗体験について聞きます。成功体験は、例えば「これまであなたがもっとも成功だと思った仕事を具体的に説明してくだい」と質問し、失敗体験は、「これまであなたが失敗した思う経験を具体的に説明してください」と質問します。

そして、ここではとにかく過去の状況を詳しく聞きます。詳しく聞くことは、候補者が真実を答えてくれることに繋がります。それはいつの話か、その時の仕事のミッション、自分の役割、登場人物、課題の克服方法等。成功体験についてはその成功要因、失敗体験ついてはその原因とその後どのようにリカバリーしたかを聞きます。

その回答の中から、その候補者の中に「説得する力」があるかどうかを見極めていきます。

候補者をアトラクトするには?

折角、会社にとって欲しい人材が面接を通過してきても、候補者にとってその会社が魅力的に映らなければ内定には至りません。昨今のように求人倍率が高い状況において、候補者をアトラクトしてくことはこれまで以上に大切になります。

企業には、外面的な部分と内面的なところがあります。外面的な部分は、将来ビジョン・戦略、報酬や福利厚生の中身、各種教育制度等。内面的な部分は、企業風土や社員の特性など外からは見え難い部分です。会社側からの情報提供は外面的な部分が多い一方、候補者が本当に知りたいのは内面的な部分です。内面的な部分で候補者に大手を振って伝えられる企業が多くはなく、内面の課題を候補者に知らせることにリスクを感じる担当者も多いでしょう。

しかし、これだけSNSが普及していれば、企業の内面について見え隠れしているのが今の現状と言えます。重要なことは、企業側から率直且つ正確に組織の状況を伝え、課題についてどのような取り組みをして改善しようとしているか、真摯に説明していく姿勢かと思われます。その際、担当者の主観的意見ではなく、組織サーベイや全社員の適性検査の結果など、HRデータをもとに説明すれば客観性が増していくでしょう。

最後に

採用業務というのは、手間と時間のかかる大変な業務です。書類の読み込み、面接のスケジュール調整、エージェントコントロール等、細かい作業が山ほどあり、担当者はそれに忙殺されます。一方、中途採用で成果をあげるには、前述の通り”人材の見極め”と”アトラクト”が大切です。

この領域により力を注げるようにするには、RPO(採用代行サービス)を効果的に活用して全体のプロセスの効率化を図ったり、適性検査のリテラシーを向上させながらコンピテンシー面接の精度を上げていくことなどが求められるでしょう。

そして、中長期的な観点で言えば、競合に人材が奪われないよう、会社自体をより魅力ある組織にしていく地道な努力が必要となります。大事なのは、一足飛びに改善していこうとせず一歩一歩着実に課題を潰していくとこと。そして、その姿勢を候補者に見せていくことです。

中途採用は、企業にとって重要な先行投資です。今回紹介したポイントを参考に自社の課題に合わせた適切な対策を講じることで、人材獲得競争を勝ち抜き、事業成長を実現していきましょう。

【脚注】
※1)『転職求人倍率レポート(2024年1月)』パーソルキャリア株式会社