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「もし、組織開発をしなかったら?」

 暮れも押し迫ってまいりまして、そろそろ年賀状の準備を始めている方も多いのではないでしょうか。しかし、昨今のSNSの普及もあり年賀状を辞める人も多くなってきたように思います。実際に、年初に受け取った年賀状の中には、“今年で終わりにさせて頂きたい”といった旨のメッセージが書かれたものが何通かありました。時代の流れもあって仕方ないことかもしれませんが、そういった友人・知人たちとの距離が少し遠くなる気がして寂しい気もします。

友との関係も貴重な財産

 年賀状で繋がっている友人・知人も含め、わたしたちには、様々な人的ネットワークがあります。そして、そのネットワークから生じる関係性を、社会学では社会関係資本と呼びます。資本ですので、時間やお金をかけずに放置すれば、どんどん目減りしていきます。学生時代に仲の良かった友人も、
卒業後、会わなくなってしまえば、徐々に疎遠になり、連絡先も分からなくなってしまいますし、一方で、卒業後も、定期的に連絡を取って、たまに会って食事などすれば、その関係は続き、自分自身の貴重な財産となるでしょう。

社内の関係性は悪化しやすい

 会社内の社会関係資本はどうでしょうか。会社は、利益を上げるための営利組織ですから、友人との仲良しチームとはいかず、一人ひとりに、会社や上司から目標達成に向けたプレッシャーをかけれたり、自分の仕事の役割・責任を全うしようとして、他部署と利害が対立することもあります。つまり、他のネットワークに比べて会社内の関係性は悪化しやすいと言えます。

組織開発の必要性を説得する方法

 企業で組織開発が必要な理由は、その悪化しやすい社会関係資本を維持していくためとも言えます。そして、先日のコラムで組織開発の予算を取る大切さを伝えさせて頂きましたが、この予算を取るためには、経営を説得しなくてはなりません。企業の各予算は、当然として、それが収益に繋がるかどうかという視点で見られます。でも、組織開発については、これだけお金をかければこれだけ収益に結び付くとは、なかなかロジカルに説明し難いでしょう。社内でコンセンサスを得るには、「もし組織開発にお金をかけなかったらどうなるか」という問いが有効だと思います。前に説明した通り、社会関係資本は、投資しなければ目減りします。会社の文脈で言えば、放置すれば、関係性はいずれ悪化し、モチベーションやエンゲージメントの低下を招き最終的には離職率に影響するでしょう。

さらに難しくなる関係構築

 今後、リモートワークが就業環境の一つの常識となり、人材の流動化や雇用形態の多様化による有期社員のさらなる増加も予測されます。つまり、これまで当たり前だったリアルで長期安定の関係性の中で仕事をするという環境が少なくなり、お互いが分かり合え難い状態で組織目標を達成しなくてはならなくなります。そうなってくると組織開発の重要性は、今後ますます増してくるでしょう。

昔の組織への郷愁

 「その為に具体的に何をするか」という考察は別の機会に譲ることにさせて頂きまして、このコラムを書いていてふと思ったのが、そういえば私が新卒で会社に入社した頃は社員同士で年賀状をやりとりする風習が残っていた、ということ。当時は面倒だな~と思いながらも、そういうことも社員間の繋がりを維持する上で一役買っていたのかな、と今振り返ると感じるところであります。