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経営ビジョンがなぜ浸透しないのか?

 5月8日から、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。それを受けてか、当社も対面での商談の予定がより多くなってきており、おそらく今後、新幹線や飛行機を使った出張もますます増えそうです。

 話は今から20年近く前、コンサルティングファームに入りたての頃もよく新幹線を使って会社の代表と一緒に出張をしていました。普段は接点のない代表の考えを聞ける貴重な時間。”のぞみ”で新大阪までの2時間ちょっと、マンツーマンで色々なお話をしてもらったことを思い出します。社会全般の話、業界動向、会社の課題やこれからのビジョンなど、一生懸命耳を傾けていました。

 ただ、とても勉強にはなるのですが、当時の私には視点が高過ぎて、結局代表は、”われわれ社員にどういうことを期待しているのか”、”この話を踏まえて今後自分はどのように動くべきか”、なかなか答えが見つからなかったの もまた事実でした。代表と一般社員の視座の違いはかなり大きかったようです。

 経営ビジョン(ここでは会社の目指す姿を指し、ミッション、パーパス、バリューすべて含むこととします)を組織に浸透させることは企業経営の大事なイシューです。最近はIT技術の進化で、様々なチャネルを使って効果的に社長の言葉を発信できるようになり、これまでよりも社員の理解が進みやすくなったようです。しかし、多くの会社で課題になっているのは、理解は進むが日々の社員の仕事に反映されず、結局のところ画餅に帰すということ。

 そのような課題のある会社で、組織サーベイを実施したことがあります。すると “経営方針と部門戦略の連動がなされているか”という質問の肯定的回答割合が大変低い結果となり、これがビジョン浸透が上手くいかない原因の一つとなっていることが分かりました。つまり、いくら社長が崇高なビジョンを発信しても、その下の部門長やマネジャーがそれを咀嚼し自組織の方針を打ち出し伝えていかなければ、個人までの浸透には至らないということです。

 ビジョンを一人ひとりの社員まで効果的に浸透させていくためには、部課長クラスが“中間の社長”として管轄する組織のビジョンを打ち立て、頻度高く発信し、1on1等で個人の業務と組織ビジョンの関係について話し合っていくことが必要です。

 新米社員の私と代表の大阪出張にも、間を取り持つ管理職が一人加わって鼎談をしていたら、代表の会社や私に対する“のぞみ”をもっと理解できたのかもしれません。