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レンタカー試乗記 : 003 マツダ デミオ 1.3 Style C (DY3W)

実用性とカッコの両立

ご覧いただきありがとうございます。

デミオ。
今回乗ったのは2代目デミオ(DY型)の後期型。
現行型は4代目となり、名前がデミオからマツダ2に変わり、プチミニバン風なスタイルから一気にクーペ風のスタイリングになっているが、今回はそんなクーペ風スタイリングになる前のデミオに乗ることができた。
今回はそんなデミオの試乗記を書いていきたいと思う。

DYデミオ後期のグレードは大きく分けて"カジュアル"と"スポルト"の2種類、そしてその中にいくつかの仕様があるというような感じなのだが、今回の個体のグレードは"Style C"という2006年11月に設定された特別仕様車。
"カジュアル"グレードをベースにいくつかの装備が追加されたグレードだ。

ちなみに今回はワンズレンタカーで借りてみた。
格安レンタカーあるあるなのだが、こういう特別仕様車みたいな特殊な仕様のがたまにいたりするので面白い。これはこれでまた別の記事が書けそう。

左が2代目(DY型)、右が4代目(現行DJ型、マツダ2)

現行型のデミオ(マツダ2)に乗った際の写真があったのでくっつけてみた。
なんとなく雰囲気が残っている気はするものの、明らかに現行型のほうがルーフのラインが流線形、クーペスタイルになっている。



外観、内装、デザイン

なんだかとてもやさしい感じの顔である。
ちなみにこの個体は後期だが、前期と中期はもう少し目が細い。
ホイールは社外ホイールに変わっていた。

中期。前期と中期はこの形のヘッドライト
※写真はグーネットのカタログより引用

今のデミオにはない、箱型スタイル。
デザイン的にはけっこう上手くまとまっていると思う。
なかなか目立つクリアテールだが、標準車は赤地のテールライトになる。

標準車はこのテールになる 中期と後期がこのテールで、前期は別
※写真はグーネットのカタログより引用

ちなみにこの個体、板金歴が何度かあるのか、車体の塗装が一部つや消し状態になっていた。

内装は落ち着いた色合いにまとめられていて、華はないものの印象としては良い。
運転席のシートは大きさと座り心地ともに良く、出来の良さを感じた。

ちなみにセンターコンソールのオーディオの画面のパネルが白化しているのはDYデミオ後期の持病らしい。表示は全く見えなかったw
中古部品手に入れて修理もできそうだが、どうせなら2DINパネル化してナビでも入れたほうが幸せになれそう。
調べてみるとキットが出てたりするので、気になる人はGoogle検索。

後席の広さはなかなかのもの。
足元の空間はもちろん、頭上空間にもかなり余裕がある。
シートというか車体の幅的に5人乗車はキツそうだが、4人乗車であれば長距離でも快適に移動できそう。

迫真の初心者マークがチラリ

ちなみに後席は前後にスライドすることができる。これは一番前にスライドさせた状態。
この状態での後席はかなり足元がキツいことになるが、その分荷室が拡大できるので、4人でお出かけしてお買い物した際に「荷物が乗りきらない!」という事になっても、量にもよるがこれでどうにか乗り切れそうな感じ。

もう1枚上の写真の後席は一番後ろまでスライドさせた状態なので、可動域の広さはかなりのものだと思う。普段のお出かけでは一番後ろまでスライドさせておけば後席の人も快適に過ごせそうだ。

後席を一番後ろまでスライドさせた状態での荷室はこんな感じ。
上下の高さに余裕があるので、フル乗車時でもかなりの荷物が積めそう。
今回は悲しくも1人で借りて乗っているので、実際は違うかもしれないという事だけはご承知いただきたい。あくまで想像で書いている。

比較として、後席を一番前までスライドさせた状態での荷室。
微々たる量ではありそうだが、荷室を拡大させることができる。

あと個人的に気付いた事として、後席を前にスライドさせた際に荷室に穴が開かない工夫は素晴らしいと思った。
表現が難しいが、前にスライドさせた分の下側に内張りがされてある。

後席は倒すことができる。
ダブルフォールディング式のリアシートになっており、この状態からさらに後席を前側に倒して格納することが可能。
格納時の写真を撮り忘れてしまったが、使い勝手に関してはかなり良い部類に入るのではと思う。フルフラットにもなるので、車中泊もできそうだ。


乗ってみての感想とか

貸出手続きを済ませていざ鍵を受け取り乗り込んで、出発
…アクセル、これかなり穏やかに踏まないと急発進になる。
搭載される1.3Lのエンジンはパワーがあって良い感じなのだが、後期から採用された電子スロットルの特性がどうも合わない。かなり反応が過敏。
乗ってみてしばらくすると、そこまで違和感も感じなくなってきたが。

近い世代の90系ヴィッツに乗った時も同じような感触だったので、この頃の電スロは割とこういう反応のものが多いのかな?なんて思ったりした。

メーターはシンプルだが、やっぱり見やすさって重要。
針のタイプの水温計は、最近見かけなくなってきている気がする。
ちなみに、エンジンを切ってもメーター内の液晶はずっと点灯していた。
このパターンは初めてかも?

SレンジとLレンジとあるが、搭載されているミッションは4速ATである。

ハンドルは軽くもなく重くもなく、ちょうどいい感じの重さ。
ウレタンのハンドルだったが、表面はディンプル加工されていて高級感。

細かい収納類も充実していて、荷室同様使い勝手がかなり良かった。

今どきの"スタイル優先"ではなく、あくまで実用性に振ったデザインがされている(でも個人的にはカッコいいと思う)ので、運転していて視界の不満もなく個人的にはかなり良くできたクルマだと感じた。


いいところ

派手過ぎず、馴染めるデザイン。2024年現在で見ても古さを感じない。
とにかく実用面で不満がなく、よく考えられている。
かといって安っぽさもない。
そして、前席、後席ともに居住性がよく、乗っていて疲れない。
さらにコンパクトなのに荷室も広い。
軽自動車、および並みのコンパクトカーではこの役は揃わない。

荷室の横には蓋が付いており、開けると小物類を収納することができる。
また、その上には小さなフックも付いていて、何かしら引っ掛けるのにも重宝しそうだ。
(調べたら、このフックの部分を引き出すとトノカバーの土台になるらしい。ビックリ)

少しだけ地味な存在だけど、良いクルマです。


わるいところ、微妙なところ

電スロ化された後期に限っての話だが、発進時のアクセルが過敏で急発進になりやすい。乗ってみての感想欄でも述べたことだけれど。
スロコンでも入れてアクセルの反応を少しマイルドにしたくなる。
なお、前期と中期はワイヤースロットルなのでこの現象は起きないはず。
いつか乗ってみたい。

シフトレバーにあるHOLDスイッチ。押すとDレンジでは3速固定(低速域では2~3速で固定)、Sレンジで2速固定、Lレンジで1速固定となるスイッチで、普通のオートマのオーバードライブオフスイッチとは少し原理が違う。
機構を理解していれば問題ない(むしろMT車みたいな走り方もできて楽しい)のだが、仕様上Lレンジ状態でHOLDスイッチを押すとまさしく1速固定になる(自動シフトアップしないからレブまで回り続ける)ので、クルマに乗り慣れてない人が間違えて押してしまうと混乱しそう。
いや、乗り慣れてない人はLレンジになんて入れないかもしれないが。


ユーザーは、何を求めるのか?

終売から15年以上経つDYデミオ。
街で見かける台数もなんだか地味に減ってきている…と思いきやそこにいる みたいな立ち位置のクルマになってきている気がする。
同年代の初代ヴィッツやフィットも段々とそんな感じになってきている気がするので、これは経年車の宿命なのだろう。

個人的にDYデミオとフィットは似たり寄ったりな存在だと思っているのだが、現行型のフィットは話によるとあまり売れていないらしい。
なぜか?と考えてみた。
それは、今流行りのハイトワゴン系のコンパクトカーが魅力的だから。

このデミオが出荷された2006年当時、ハイトワゴン系のコンパクトカーはあまりモデルとしては多くなかった記憶がある。
(ソリオはまだ初代、サイズ的にはモビリオとかラクティスが相当か?)
ところが2024年、ソリオやルーミーといったハイトワゴン系のコンパクトカーを街で見ない日はない。それはつまるところ、室内が広くて快適だから。

無論、DYデミオもフィットも室内は広くて快適である。
でも、ソリオやルーミーの室内の広さには勝てない。
走りがすごく安定していても、ハイトワゴンに比べると車内は狭い。
消費者は、室内の絶対的な広さに惹かれるようになった。

つまり"走りと室内空間"を程々にちょうどよく両立しているクルマは、消費者には魅力的に映らなくなってしまった。
だから、デミオもヴィッツも走りに振った。室内空間を少し犠牲にしてでも、より"走り"に寄せたモデルを作るようにした。
結果、両車ともにコンスタントに売れている。

別にそれで良いと思う。室内の広さを重視する人にとって、走りとかハンドリングなんてあまり重要ではない。室内の広さは何にも代え難いのだから。

マツダ ベリーサ
ベースは今回紹介したDYデミオである
※写真はグーネットのカタログより引用

ただ、ひとつひねくれたことを言うのであれば、このDYデミオをベースとしたマツダの"ベリーサ"が比較的近年まで売られていたことが、このDYデミオの出来の良さが確実に現代でも通じることを示す証左だと思う。

ハイトワゴンとミニバン王者時代は終わりそうにないが、またいつかDYデミオのような「コンパクトだけど走りも室内空間も装備も実用性も何もかもちょうどいい」クルマが各社から出揃う日は来るのか。

とにかくそれくらい、印象深いクルマだった。

今回はこの辺で終わります。
最後までご覧いただきありがとうございました!

※2024/04/20 記事内容を一部変更しました

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