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『今しか見られない景色はある』患者様が話してくれた「当たり前」の話。

皆様こんにちは PICOです。

連日コロナウィルスの感染者数が増え続け、ついに東京都では感染者数が2400人を超えてしまいましたね…。 年明け早々に何だか嫌なムードが漂っておりますが、今年はまだ始まったばかり! 今年は丑年ですし、ゆっくりでも一歩ずつ歩いていきましょう。

前回の自己紹介記事に少し記載させて頂きましたが、私は以前「介護・看護」の職に就いていました。 私が配属されたのは「整形外科病棟」で、今回は私が整形外科時代に入院されていた患者様が話して下さった言葉があまりにも印象に残っているので、今回はタイトルの通り『今しか見られない景色はある』と言うタイトルで記事を書いてみようと思います。

◆患者様が話してくれた『例え話』

・・・ある日の夕方、患者様の夕食の準備で病棟内を歩いていた私の前で一人の男性が足を止めた。『お兄さん、若いのに偉いね』そう声を掛けてきた男性は数週間前に足の手術をした高齢の患者様で、リハビリで病棟内をゆっくりと歩き回っている最中だった。

男性は私に対して話を続ける。『忙しいところ悪いんだけど、私の話を聞いて貰えるかね?』そう言うと、男性はこんな話をし始めた・・・。

これは例え話だけれど…『ある所にとても視力の良い若い男性が居たとする。そんな視力の良い彼だが、周りの大人達を見ていると、やれ老眼だ、やれ白内障だ、緑内障だ…と嘆いている人が沢山居る事に気付いた彼は、自分も年老いたら目が不自由になるのかと思い、とても怖くなった』

『そこで彼は、自分のこの視力をどうにかして保てないかと考えた・・・。 考えた結果、彼は自分の目を老後にとっておく事にした』

『方法は簡単、視力の良い左右の目のうち、片側を眼帯で塞いで過ごし、自分が年老いて片側の目が不自由だと感じた時、その眼帯を外せば塞いでおいた方の目は老後にとっておいたのだから視力は衰えていないはず。 故に残りの人生は視力の良いもう片方の目を使って不自由なく過ごせる…と』

そこまで喋ると患者様はニッコリと笑い『この若い男性はどうなったと思う?』と私に尋ねてきたので『そりゃぁ…ずっと眼帯で目を隠していたのであれば、老後には…いや、それよりもっと前に目は駄目になってますよね…』と答えると、患者様はまたニッコリと笑い話を続けた。

・・・そう、お兄さんの言う通り、その男性の目は年老いた時には両目とも駄目になっていたんだよ…。

そんな当たり前の事が分からなかった男性は、年老いて、常に使用していた方の目が徐々に衰えていき、今まで見えていたものが見えなくなってきたところで、とっておいたもう片方の目を使う事にした、彼はきっと楽しみだったに違いない。 あの頃見ていた景色が、また見られるのだと。期待で一杯だったと思う。 そして、男性は何十年振りに眼帯を外した…。

・・・が、眼帯を外した方の目、とっておいた方の目には何も映らなかった。

視力が衰え、うすぼんやりとした視界と、何も見えない真っ暗な2つの視界。 そこで初めて男性は自分の失敗に気が付いたんだよ。

患者様はそう言い終えると『忙しいのに話を聞いて貰って悪いね、でも本当に今しか見られない景色ってのはあるから、今を大切にね』と言うと、患者様は私に背を向けてゆっくりと歩き出し、リハビリの続きを始めたのだった…。


◆患者様の伝えたかった事は何だったのか

結局、この話は患者様自身の話だったのか、それとも私への何らかのアドバイスだったのか、患者様は私に何を伝えたかったのか、未だに正解は分からないでいるが、少なからず『今出来る事は今やるべき』だと言うメッセージだけは患者様から受け取る事が出来た。

何故、あの時患者様は私にそんな話をしてくれたのか。

何故、この話の例えの男性は【目】が不自由になる事を恐れたのか。

患者様の言う『今しか見られない景色』にはどれ程の価値があるのか・・・

この話には沢山の疑問があり、分からない事が沢山あるのだが、多分この話の答えを考え続ける事にこそ意味があるのではないかと私は思ったのだ。 この話は視力や視界と言った目で見える話の事だけではなく、他の多くの事にも言える話で、多分私は残りの人生でずっと考え続けていくべき話だと思っている。

この話はもう何年も前に患者様が話して下さった話なので、当たり前だが一言一句間違いなく文字に出来ている訳ではない。 何となくのニュアンスで確かこんな感じだったと言う私の記憶を頼りに記事にしている。 故に本当に患者様が伝えたかった事とは若干異なってしまっているかもしれないが、それでも私はこの話には相応の価値があり、私の人生の視野を少しだけ広げてくれた素敵な数分間の会話だったと今でも思っている。


◆最後に・・・

本当は短い記事を書こうと思っていたのですが、随分長い文章になってしまいました・・・。 これだけ長い文章だと読む方が疲れてしまいますね。  こんな記事ですが、最後まで読んで下さった方へ心よりお礼申し上げます。

次回の記事でまたお会いしましょう。

【追伸】:前回の記事へ「スキ」して下さった皆様、有難う御座います。今後はこの様な記事を不定期に書いていければと思いますので、もし宜しければ今後ともお付き合い下さい。 有難う御座いました。

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