見出し画像

新生児の疾患:消化管疾患1

こんばんは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

新しいこと、自分の中にない考え方に出会ったとき「楽しい」と思えるかどうかって大事だなと思います。その柔軟性や遊び心が "若さ" なんじゃないかなと。

さて、今日と明日で新生児の消化管疾患について学びますよ〜。

【問題】新生児の消化管疾患について、正しいのはどれか。
a. 先天性食道閉鎖症で最も多い病型はGross A型である
b. 先天性食道閉鎖症(Gross E型)ではcoil-up signを認める
c. 先天性小腸閉鎖症ではtarget signを認める
d. Hirschsprung病では高度な便秘を認める

《問題の正解は一番下にあります》

先天性食道閉鎖症

気管原基と食道原基との分離過程に問題があると、先天性食道閉鎖症を生じます。遺伝性は認められませんが、約半数に循環器系や泌尿器系などの他の先天奇形を合併します。18トリソミーの頻度も高いのが特徴です。

Gross分類では、C型が最多で、A型がそれに次ぎます。A型以外では、気管食道瘻が存在し、肺炎を合併することが多くなっています。
食道が閉鎖しているため、出生直後から流涎*が多いほか、口腔内に泡沫状の唾液が認められます。初回授乳でむせて吐乳するほか、呼吸困難チアノーゼが出現します。瘻孔から胃に空気が入り、腹部膨満や胃破裂の危険もあります。肺炎を起こすと呼吸困難がさらに強まります。

*流涎(りゅうぜん)とは、よだれを流すことであり、唾液過多ともいいます。
成人では、唾液分泌過多、閉口障害、嚥下困難、顔面麻痺などが原因で起こりやすく、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患を持つ患者や、脳血管疾患に見られる症状の一つです。

胎児エコーで、母体の羊水過多を認めたり、胎児の胃泡を同定できない場合に本性が疑われます。(E型以外では)胃チューブを鼻腔から挿入したとき、盲端での反転が胸部X線で反転像 coil up signとして確認できます。食道造影は肺炎を起こす危険が高くなるため、原則として行いません

ぶ.001

治療では、肺炎予防がポイントで、上体を起こし、唾液を持続吸引します。脱水を起こしていることが多く、全身状態の管理には輸液が必要となります。
これらに注意したうえで、できるだけ早く外科的に気管食道瘻閉鎖と食道端々吻合を行います。

先天性腸閉鎖症

腸管の先天性閉鎖症は十二指腸から結腸までどの部位でも認められますが、十二指腸、回腸、空腸の順で多くみられます。

先天性十二指腸閉鎖症
腸回転異常、鎖肛、心血管奇形などを認めやすい、約20%にDown症候群の合併がみられる、などの特徴があります。また、40%で胎児期に羊水過多が認められることから、胎児エコーで出生前に診断されることもあります。
通常生後24時間以内に嘔吐で発症し、上腹部に限局した腹部膨満を認めます(下腹部は陥凹)。閉鎖部が乳頭開口部より遠位であれば吐物は胆汁性になります(近位なら非胆汁性)。通常24時間以内に認められるはずの胎便排泄は遅れ、閉鎖部位がVater乳頭部より肛側であれば胆汁を含まない灰白色の胎便となります。嘔吐の繰り返しで、脱水症や電解質異常を基盤とした症状が明らかになります。しばしば生理的黄疸は遷延し、間接ビリルビン優位の上昇も認められます。
検査では、立位単純X線で、胃と十二指腸それぞれにガスが充満することによって2つの気泡(double bubble sign)が認められます。下方には、たまった液体による鏡面像もみられます。
治療は、経鼻胃管を挿入し吸引減圧します。全身状態を改善させた後、外科的に十二指腸十二指腸吻合を行うのが原則です。

画像3

先天性小腸閉鎖症
十二指腸閉鎖症と異なり、本症では合併奇形や染色体異常はまれです。出生前の健診で、胎児の消化管が拡大しているのがエコーで確認され、診断される場合もあります。
通常生後24時間以内に胆汁性嘔吐で発症します。口側に近いと嘔吐が早く始まり、下部に行くに従い遅くなる傾向があります。その一方で下部に行くほど腹部膨満は顕著になります。そのほか、胎便が少ないうえ排泄も遅延し、色は灰白色、間接ビリルビン優位の黄疸の出現、脱水症の合併など、先天性十二指腸閉鎖と同様の所見を呈します。
検査では、立位単純X線で、胃・十二指腸・空腸による鏡面像を伴ったガス像(triple bubble sign)がみられます。出生後、嚥下された空気が盲腸に到達するには3〜5時間、下行結腸に到達するには約10時間を要します。したがって、出生後1〜2時間では消化管ガス像は見られなくても異常とはいえません。
治療は、先天性十二指腸閉鎖症に準じて行われます。

Hirschsprung病(先天性巨大結腸症)

Hirschsprung病の病態は、腸管壁内神経節細胞(Meissner神経叢、Auerbach神経叢)の先天的欠損です。食道壁に出現した神経節細胞は、胎生12週ころまでに肛門側まで下降・分布しますが、本症はこの下降が途中で停止したものです。停止部位より肛門側は無神経節腸管となり、蠕動運動が起こりません。S状結腸での停止が約80%ですが、小腸や大腸全域にわたることもあります。
男女比は 3~4:1 と男児に多くなっています。他の奇形合併率は高くありません。原因として、神経節細胞の分化発達に関与する遺伝子(endothelin-B receptor遺伝子, C-Ret遺伝子)の異常が疑われています。

無神経節となっている腸管の範囲がS状結腸までの場合、まず胎便排泄遅延がみられます。さらにその後も便秘やそれに伴う腹部膨満嘔吐が頻繁にかつ継続してみられ、なかには浣腸しないと排便しない場合もあります。遅くてもこの時点で本症を疑わなくてはなりません。貯留した腸内容に腸内細菌叢が増殖して大腸炎を起こすと、腐敗臭を伴う下痢を認めることもあります。
無神経節部分が直腸下部に限局していると、症状も軽いために長い間見逃され、学童期や成人になって頑固な便秘を主訴として来院し、初めて診断されることもあります。

便が直腸まで来ていないので、直腸指診を行っても便を触れることはありませんが、指を引き抜くと"爆発的"と表現される勢いでガスとともに大量の糞便噴出がみられることがあります。
注腸造影を行うと、肛門から連続する無神経節部分は狭小(狭小腸管 narrow segment)、それより口側は拡張(巨大結腸 megacolon)して描出され、その口径の急激な変化はcaliber changeと呼ばれます。
また、肛門近くの直腸粘膜生検を行うと、アセチルコリンエステラーぜ染色すると、その活性が著明に増加しています。

ヒルシュスプルング病1

患児の体力が十分でない生後3ヶ月くらいまでは、全身状態に注意しつつ浣腸や洗腸を中心とした保存的治療を行い、時期をみて一期的に根治術を行います。保存治療中は消化管穿孔や壊死性腸炎の発症に十分注意します。

解答

【正解】d(Hirschsprung病では高度な便秘を認める)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・看護roo!「流涎」
https://www.kango-roo.com/word/9535
・Radiopaedia「Esophageal atresia」
https://radiopaedia.org/cases/oesophageal-atresia
・medu4 104E43の解説
https://medu4.com/104E43
・日本小児外科学会「Hirschsprung病」
http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/hirschsprung





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?