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新生児の疾患:黄疸

こんばんは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

櫻坂46の新曲『流れ弾』に衝撃を受けています。音楽も歌詞もダンスも演出もメンバーの表情も。かっこいいですね。

さて、今日は「黄疸」について学んでいきます。少し長いです…笑。

【問題】新生児黄疸の原因として誤っているのはどれか。
a. 無効造血が少ない
b. 赤血球寿命が短い
c. 腸内細菌が未熟
d. 赤血球が多い

《問題の正解は一番下にあります》

ビリルビン代謝と黄疸

黄疸の病態は高ビリルビン血症です。一般的には、正常正期産児で総ビリルビン 15mg/dL以上, 直接ビリルビン 2mg/dL以上の状態を指します。直接ビリルビンはかなり低い値から黄疸、肝障害を考える必要があるという点に注意が必要です。
ここまで高値を示さない場合でも、生後24時間以内に発症する早期黄疸、急激な総ビリルビン上昇、黄疸が1週間以上続く遷延性黄疸は病的状態と考えられるため、精査しなくてはいけません。新生児期に間接ビリルビンが上昇しても正常な場合がありますが、核黄疸の危険があるのは間接ビリルビンです。

生体内のビリルビンは、主に老化した赤血球が網内系で分解された際にヘモグロビンから作られます。間接ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合を受けて、水溶性の直接ビリルビンとなります。胆汁として十二指腸に分泌され、腸内細菌叢の還元作用によりウロビリノーゲンとなり、多くは糞便中に排泄されます。一部は腸管から再吸収され、門脈を経て肝臓に戻ります(腸肝循環)。ウロビリノーゲンや抱合型ビリルビンは尿中にも排泄されます。

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黄疸の原因

新生児に黄疸が出現するとき、生後どれくらい経過しているかで最初に考えるべき疾患が異なります。そのため、生後何日目に発症したかは重要です。

【間接ビリルビン優位】
新生児の病的黄疸で頻度が最も高いのは、血液型不適合による溶血性貧血です。重症かつ一刻を争う血液型不適合を真っ先に否定するため、間接ビリルビン高値ではCoombsテストなどを優先して行います。
1)間接ビリルビン産生の増加
 ・溶血性貧血:血液型不適合、遺伝性球状赤血球症、G-6-PD欠損症、PK欠損症、短い赤血球寿命(生理的)
 ・多血症(生理的なものも)
 ・体内出血:帽状腱膜下出血、頭血腫、副腎出血
2)グルクロン酸抱合の障害
 ・生理的黄疸、低出生体重児
 ・先天異常:Crigler-Najjar症候群、Gilbert症候群
 ・酵素活性の抑制(母乳黄疸)

【直接ビリルビン優位】
頻度からは感染症と新生児肝炎胆道閉鎖症を第一に考えるべきです。
1)肝機能の異常
 ・感染症:敗血症、TORCH症候群
 ・先天代謝異常:ガラクトース血症、チロシン血症
 ・胆汁排泄障害:Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群
 ・新生児肝炎
2)胆道系の異常
 ・胆道閉鎖
 ・先天性胆道拡張症

黄疸の治療

高ビリルビン血症を認めたとき、原因疾患が確認できればその治療を開始します。原疾患が確認できない場合、治療を開始するか否かは核黄疸の危険があるかどうかで決定します。核黄疸のリスクは児の出生体重、在胎週数、日齢、合併症の有無など多くの要素で異なりますが、"血清総ビリルビン値が20mg/dL以上にならないようにする"ことが重要です。具体的な治療方法には、光線療法と交換輸血があります。

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光線療法は、皮膚に光を当てると皮下の間接ビリルビンが光異性体へ変化して水溶性となり、腎臓や肝臓から排泄されやすくなることを利用したものです。光線療法で不十分な場合(血液型不適合に多い)は、臍静脈を用いた交換輸血を行います。直接ビリルビン値の高い症例に対しては、bronze baby syndrome(ビリルビン光分解産物の蓄積で皮膚・血清・尿が緑褐色となる)を起こすので禁忌です。

血液型不適合による黄疸

血液型不適合があると、胎児赤血球が母体血液を感作し、母体内に不完全抗体(IgG)が産生されます。IgGは胎盤通過性があるので、胎児に移行し溶血が生じます。この溶血に反応して骨髄機能が刺激され、肝臓などでの髄外造血も亢進することで、末梢血中に赤芽球が出現するようになった状態を胎児赤芽球症といいます。ABO不適合よりRh不適合の方が胎児赤芽球症を起こしやすくなっています。重症例は、胎児水腫*と同様の症状を呈します。

血液型不適合による黄疸は出生後24時間以内に出現します。Rh不適合では、母体血清の間接Coombsテスト, 胎児赤血球の直接Coombsテストともに陽性を示しますが、ABO不適合では、胎児赤血球の直接Coombsテストは必ずしも陽性を示しません。

*胎児水腫
血液型不適合によって高度な溶血が起こると、重症の貧血となります。胎児に心不全・低蛋白血症が生じ、著明な浮腫を呈した状態を胎児水腫と呼びます。胎児赤芽球症のほかにも、双胎間輸血症候群、ヒトパルボウイルスB19感染やDown症候群などの染色体異常などでもみられます。

核黄疸

脂溶性の間接ビリルビンは、血液中ではアルブミンと結合して存在しています。しかし、血漿蛋白が少ないと、血漿に溶けきれない間接ビリルビンは血液脳関門(BBB)を通過して脳内に移行し、大脳基底核に沈着してミトコンドリアにおける電子伝達系を破壊します。これが核黄疸です。
吸啜反射・Moro反射の低下や筋緊張低下、進行すると意識障害や筋硬直、アテトーゼ型の脳性麻痺をきたします。

新生児はBBBが未完成で、血漿蛋白も少ないため、リスクが高くなります。特に低血糖や低酸素血症、アシドーシスはBBBの機能を弱めるため、低出生体重児ではさらに核黄疸の危険が高まります。

生理的黄疸・母乳黄疸

新生児は正常でも、出生後に12mg/dL程度の一時的な高ビリルビン血症を経ることになります。グルクロニルトランスフェラーゼの活性が低い、生理的多血症の状態にある、胎児ヘモグロビンは寿命が短い、出生直後に溶血が亢進する、などが理由としてあげられます。これを新生児の生理的黄疸といい、90%以上にみられます。生後3日ころ出現し、約2週間で消退します。間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症です。

間接ビリルビン優位の黄疸が遷延する場合、頻度からは母乳黄疸が最も考えられます。母乳中のプレグナンジオールが児のグルクロン酸抱合を抑制するため、生後1週間ころから黄疸が出現することがあります。母乳を中止すると改善しますが、通常は母乳栄養を中止する必要はないと考えられています。ただし母乳栄養を続けると、高ビリルビン血症は1ヶ月ころをピークに1〜2ヶ月間は持続します。

生理的黄疸や母乳黄疸は、そのほかの黄疸を起こす疾患が存在しないことをしっかり確認した上で初めて診断することができます。

ビリルビン代謝異常による黄疸

Gilbert症候群
肝臓におけるウリジンジホスホフェートグルクロン酸転移酵素(UDPGT)活性低下に起因して、肝への間接ビリルビン取り込みが障害された遺伝性疾患です。
幼児期より比較的軽度のビリルビン血症(1〜5mg/dL)を有しています。8〜10歳ころに黄疸で気づかれたり、偶然に発見されたりします。主症状は全身倦怠感、食欲不振、腹痛などです。肝組織に特有の所見はなく、肝機能は正常です。治療は不要で、予後は良好です。

Crigler-Najjar症候群
肝UDPGTの欠損により、間接ビリルビンをグルクロン酸抱合できない疾患です。
生後2日目ころに黄疸が出現(血中ビリルビン20mg/dL以上)し、急速に進行して核黄疸となります。痙性麻痺、筋強直、錐体外路症状を生じ、放置すると乳児期に死亡します。治療は、光線療法、交換輸血、肝移植などです。

Dubin-Johnson症候群
肝細胞からの抱合型ビリルビンの排泄障害です。
14〜18歳ころに軽度の黄疸で気づかれます。他は全身倦怠感や右上腹部痛を認める程度です。治療は不要で、予後は良好です。

Rotor症候群
本態は不明ですが、Dubin-Johnson症候群の亜型と考えられています。
14〜18歳ころに軽度の黄疸で気づかれます。他は上腹部不快感と発熱を認める程度です。直接ビリルビン優位で、4〜23mg/dLを示しますが、肝機能と肝組織は正常です。治療は不要で、予後は良好です。

解答

【正解】a(無効造血が少ない)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・看護roo!「黄疸に関するQ&A」
https://www.kango-roo.com/learning/3525/
・日本医事新報社「新生児黄疸」
https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d220202/




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