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新生児の疾患:消化管疾患2

こんばんは!yanagiです。
学生のうちに小児科専門医試験に受かるくらい勉強したいという気持ちで、日々学んでいます。

スーパーで買い物していると、4~5歳くらいの小さな女の子に服をクイクイ引っ張られて。その子はしばらく僕の顔をみつめて、ニッコリ笑ったと思ったら、お父さんのところへ走って戻っていきました。

さて、今日は昨日に引き続き、新生児の消化管疾患を勉強します!

【問題】新生児の消化管疾患について、正しいのはどれか。
a. 腸回転異常症では腸重積症を合併しやすい
b. 新生児胃破裂ではsaddle bag signを認める
c. 新生児壊死性腸炎はウイルス感染と関連がある
d. 新生児壊死性腸炎は巨大児に多い

《問題の正解は一番下にあります》

腸回転異常症・腸軸捻転症

十二指腸Vater乳頭部から横行結腸の脾曲部までの中腸は上腸間膜動脈(SMA)で栄養されています。中腸は腹腔外で発育し、SMAを軸として270°回転することで後腹壁に固定されます。腸回転異常症ではこの腸管回転が正常に行われないため、捻転やイレウスを起こしやすくなります。男女比は2~3:1で男児に多くなっています。

180°回転した状態で停止した不完全回転型が大半で、Ladd靭帯(結腸と後腹膜の間に形成される)による十二指腸の閉塞が起こることで、70%以上が生後2日以内に胆汁性嘔吐を繰り返すことで発症します。先天性十二指腸閉鎖症よりは閉塞が軽いため、出生時には異常を認めず、胎便排泄も正常、授乳が開始されてから発症する、といった傾向がみられます。中腸軸捻転症をきたすと、明らかなイレウス状態であるため、嘔吐に加えて腹痛が激しくなり、さらには下血も起こり、急速に全身状態が悪化してショック状態となります。

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腹部単純X線で、十二指腸閉鎖によるdouble bubble signが認められますが、この段階では十二指腸閉鎖症と鑑別できません。注腸造影を行うと、回盲部が上腹部正中付近に写し出され診断できます。

中腸軸捻転症や絞扼性イレウスの危険が高いので、新生児例・年長児例を問わず外科的治療の対象となります。したがって、脱水などの全身状態改善を行なった後、イレウスを起こす前に緊急手術を行います。Ladd手術(軸捻転を解除し、Ladd靭帯を切離)が一般的です。

新生児胃破裂

生後2〜3日の新生児にみられます。胃壁の脆弱性と周産期の低酸素血症が原因と考えられており、低出生体重児のみでなく正期産児にもみられます。

生後2〜3日ころに、突然の腹部膨満呼吸困難チアノーゼ・体温低下などの症状で発症し、急速にショック状態に至ります。免疫機能が低いため、新生児腹膜炎の原因として重要です。腹水が貯留し脱水状態となり、心拍出量低下、末梢循環不全、代謝性アシドーシスに陥ります。

腹部単純X線で大量の遊離ガスが横隔膜の下にたまっているのが、立位ではsaddle bag sign、仰臥位ではfootball signとして確認できます。

治療は、気管挿管による呼吸管理、代謝性アシドーシスと低蛋白血症の補正、抗菌薬投与による敗血症への対応などを行なって全身状態を改善させます。状態が安定していれば可及的速やかに手術を行いますが、救命率は約50%です。

鎖肛

横行結腸の遠位1/3から肛門歯状線までは、後腸より発生します(膀胱も後腸から分化)。一連の発生過程に異常があると直腸肛門奇形が生じ、鎖肛と呼ばれます。本症では肛門が開口しておらず、膀胱や子宮に瘻で交通していることもあります。このように食道閉鎖など消化器奇形、泌尿生殖器奇形の合併率が50%以上でみられます。男女比は 3:2で、やや男児に多くみられます。

出生時に"肛門がない"として診断されることもありますが、肛門の位置や形態がおかしいとか、瘻孔が存在することでわかることもあります。このようなことに気づかなくても、胎便排泄遅延、全く排便できない、瘻孔からの排便などの症状が、さらに時間が経過すると、腹部膨満胆汁性嘔吐といった腸閉塞症状が明らかとなってきます。

診断は、生後12時間以降に倒立立位単純X線撮影の側面像(Wangensteen-Rice位)を用い、病型分類します。生後3ヶ月ころを目安に根治術を行います。

壊死性腸炎(NEC)

未熟な腸管に、虚血・細菌感染・経管栄養などによる負荷が加わり、粘膜の防御機構が破綻すると、腸管(特に回盲部)に虚血性変化が生じ、腸管壁が壊死します。本症は極低出生体重児に多く、90%は低出生体重児に発症します。母乳はIgAなどの免疫活性物質を含むため、NECの予防効果が大きいとされています。

生後数日のうちに、何となく元気がないといった初期症状から始まり、腹部膨満、胆汁性嘔吐、下血などを経て、敗血症やショック状態となります。消化管穿孔を起こせば、汎発性腹膜炎となり死亡する危険が高まります。

イレウスを起こしているため腸管は拡張しています。細菌増殖によってガスが産生されていることが多く、X線所見では腸管壁内に一致してガスの異常集積像を認めます。穿孔すると腹腔内にfree airを認めるようになります。

治療は、まず穿孔させないように最大の努力を払います。腸管に負担がかからないように経口栄養を禁止し、経静脈的に栄養・補液を行います。細菌の増殖を予防する目的で抗菌薬も投与します。穿孔してしまった場合は緊急手術を行います。

解答

【正解】b(新生児胃破裂ではsaddle bag signを認める)

*参考文献
・STEP 小児科 第3版
・日本小児外科学会「腸回転異常症」
http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/tyoukaiten-ijoushou




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