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大海賊『白髭』は本当に敗北者なのか?

皆さんは敗北者と聞いて誰を思い浮かべるだろうか?
白髭が少しでも頭を過ぎった方は正直に慈悲深い神に語るかのようにその行いを天に向かい告白して欲しい。

では本題に入ろう、と言いたいところだが、白髭について掻い摘んで説明しよう。(ワンピースのネタバレを含むため未読の方は注意)

白髭とはこの男である。見るからに強そうだろう。実際にこの男は強いのである。ワンピースの強大な海賊達を束ねる「四皇」という肩書を持っているため見た目だけでなく実力もあることが伺える。

では、なぜそんな彼が「敗北者」などという荒唐無稽な罵声を浴びせられているかというと、それは以下の画像を見ればわかるだろう。

(「ONE PIECE」58巻の573話より。このたった1ページで、赤犬は強力な溶岩による物理攻撃と、レスバ厨顔負けの精神攻撃を繰り出している、どちらも彼の実力が伺えるシーンだ。)

敗北者と言い出したのは、この首が太い男“通称”赤犬だ。彼は危険分子であるエース(主人公の兄)を捕まえようとした。だがエースを追いかけることは難しかった。というのも彼の周りには手練の白髭海賊団がいたためだ。

(上は白髭海賊団船員。ここに写っているのは幹部達だ。見れば分かる通り、見るものを戦慄させるほどのオーラを醸し出しているのが分かる。間違ってもかませではない。本当に。)

だからこそ、赤犬はそこで考えた。

こちらから向かえば、白髭海賊団から妨害される。そこで彼は方針を変えるほかなかった。

そう、エースをこちらにおびき寄せる。
つまり──押してダメなら引いてみろ作戦である。驚くべきは赤犬の柔軟性だ。わずか一コマ分の刹那の中、その考えを打ち出した。その点に関しては、脱帽せざるを得ない。

そこで繰り出されたのが先にあげた画像に書かれている以下の台詞だ。
「エースを解放して即退散とは とんだ腰抜けの集まりじゃのう白髭海賊団
船長が船長…それも仕方ねェか………!!
 ・・・"白ひげ"は所詮…先の時代の"敗北者"じゃけェ…!!!」

先程言った通り、これはあくまでエースをおびき寄せるための言葉であった。だからこそ、赤犬は持ち前のレスバ力を土台に適当に言葉を、それでいてエースを憤慨させるような言葉を知らず知らずの内に吐いていたのだ。
その証拠となるのが下の画像だ。

右のコマを見ると、赤犬はエースが止まったことに対して、かなり驚いているように見える。つまり赤犬自身煽りはしたものの内心ひっかかるとは思っていなかったのだ。
(まさか適当に吐いた言葉がここまで効くとは……)
それが彼の心境だったのだろう。

そして、エースが「敗北者…?」と言ったことに対して疑問のクエスチョンマークをあげていることが分かる。
これは(白髭が敗北者ということに反応したということは、この男まさか…! 白髭を敗北者と思っておるのか! ワシとて適当に言っただけじゃけぇ)

怒りたくなったら、自分の心に中止命令を出しなさい。「わたしはいま怒ろうとしています。怒る理由はもちろんあるのですが、わたしは忍耐強い人間です。怒るより許して相手にわからせます」─ジョセフ・マーフィー─

そう、赤犬は白髭ほど偉大にして完全無欠な大海賊を敗北者などと思っていなかった。ただエースは、敗北者と言われて思い当たる節があったため逆上してしまったというのが先程のコマの真相だったのだ。このページの先は皆が知っている通りの結末である。エースをひっかけることに成功した赤犬はさらに心にもないことを言いながら煽る。

(表情の希薄な赤犬だが、左の1コマ目で歯を軋ませていることが分かる。彼とて、嘘でも完全無欠にして、公明正大で、清廉潔白な王者である白髭を謗るのは忍びなかったのだ。)

本題に戻ろう。
エースが敗北者と思っているかを説明して何が言いたかったかというと

感情が人の運命を大きく左右していることに気づきなさい。感情のコントロールができる人が人間関係の勝利者です。』─ジョセフ・マーフィー─

もうお分かりの読者も多いだろう。

上にあげた引用に、エースは明らかに反している。つまり敗北者なのである(暴論) それも他の白髭海賊団が制止していたにも関わらず、たった一人感情を抑止することができなかったのだ。

これを一番の敗北者といわずに何と言う。いや一番の敗北者などという言葉すら生ぬるい。クソザコナメクジと呼ぶことを推奨する。

敗北という定義はかなり曖昧だ。絶対的評価なのか、相対的評価なのか。

だからこそ、エースが区間トップさながらの走りを見せる敗北者であることを証明しても、ただちに白髭が敗北者であることを払拭できるわけではない。

だが私はエースという米津玄師よりも「LOSER」が似合う男がのうのうと生きている(死んでいる)現状を許せず、警鐘ともいうべき投石を投げざるを得なかったのだ。

『アイムアルーザー なんもないなら どうなったっていいだろう うだうだしてフラフラして いちゃ今に 灰 左様なら アイムアルーザー きっといつかって願うまま 進め ロスタイムのそのまた奥へ行け』

(米津玄師『LOSER』より。溶岩を喰らい灰になったエースの曲に見えてきたのは筆者が疲れているからか、あるいは……)

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