強い人が弱さを理解するのは難しいが、弱い人が強くなっていくことはできる。

仕事を始めて色んな人と接する中で、(当たり前だが)一人一人性格が違うのだなあ、と感じる。

敏感な人もいれば、鈍感な人もいて、賑やかな人もいれば、静かな人もいる。繊細な人もいれば、図太い人もいて、人に注意できる人もいれば、できない人もいる。

何をもってして「強い-弱い 」というかは難しい。そもそも基準なんてないのだろう。

だが子どもの頃は明確に、友だち同士で「強い-弱い 」の基準があったように思える。

明るくて、賑やか。スポーツができて、人の輪の中だと堂々としており、人に物申すことのできる人物。そういうタイプがいわゆる「強い」人だった。

逆に、大人しくて、物静か。スポーツはそんなに得意じゃなく、大人数より少人数のグループを好きで、人に意見をあまり言えない人。そういう人は、どちらかというと、「弱い」にカテゴライズされた。

僕は後者であり、特に子どものときは、人に傷つけられるのも、人を傷つけるのも極度に恐れていた。だから、人と接することにストレスを感じ、学校なんかもあんまり好きじゃなかった。


年齢が上がり、小学校から中学、高校、大学へと上がるにつれて、段々とその「強い-弱い 」の基準は薄れていった。会社に入ってからは、「明るい-暗い」「賑やか-静か」なんていう基準よりは、「仕事ができるかどうか」「周りと調和してやっていけるか」という項目の方が大事になったように感じる。

ただ、それでも、あの時の「強い-弱い」という概念は残っている。社会の中に、というよりは、パーソナリティとして。


僕は昔より強くなったと思う。中学生くらいまで傷つくのを恐れて人に全く意見を言えなかったし、人見知り過ぎて、自分の仲の良い人以外は、話すとき緊張して上手く話せなかった。今は年齢関係なく、誰とでも話せるし、周りの顔色を伺うことも少なくなった。ムカついたとき、ムッという顔をしても良いのだと分かった。

コミュニケーション力は大分上がったし、タフにもなったと思う。

だけど、元々、つまり子どもの時からタフでコミュニケーション力があった人ももちろんいて、そういう人は、やっぱり今の自分より「強い」のである。彼らは、同僚に言いたいことがある時は、はっきり言うし、上司に対しても臆することなく話せている。

僕はまだその域には達していない。人に意見をいうことはできるようになったが、いうときはめちゃくちゃ慎重に言葉を選ぶし、言うのを辞めて我慢する事もある。上司と話すとき緊張することも多々ある。

以前よりは成長したといっても、元々は「弱い」カテゴリーに入っていた自分。自分は元々、タフでコミュニケーション力があった、いわゆる「強かった」人たちには追いつかないのかな、と思うと多少残念な気持ちになることもあった。

でも、そんな自分でも、メリットがあるんじゃないかと思った出来事があった。

自分の後輩に、すごく大人しくて、控えめな人がいる。人を傷つけることを良しとしたいタイプ。だから逆に自分が傷ついてしまうこともあるんだろうな、と思った。昔の自分にとても似ている。だからこそ、その子の気持ちがよく分かるし、その子がツライと思っている瞬間も何となく分かる。これは、僕も同じ経験をしてきたからだ。

多分、元々「強かった」人は分からないだろう。

もちろん「強かった人」も、また管理職に上がった人なんかは、そういった人の気持ちを分かろうとして試みている。管理職になって人の上に立つ立場になったら、部下のことを知ってあげる必要があるからだ。強いにもかかわらず、弱い人のことを理解しようとする人は、本当に強い人だ。

ただ、「飢えの苦しみがわかるのは、飢えを経験した人だけ」というように、以前から強い人は、弱い人のことを、本質的には分からないこともあるんだと思う。

僕は、以前「弱かった」から、そういう人の気持ちがよく分かる。でも、元々「強かった」人が、「弱い」人の気持ちを分かろうとするのは案外難しいと思う。経験したことのないものは、実感が湧きにくいものだ。

でも、以前「弱かった」人が、段々と強くなっていけば「弱い」人の気持ちが理解できる、強い人になれるのではないだろうか。

強い人が弱さを理解するのは難しいが、弱い人が強くなっていくことはできる。

だから自分も、今よりも強くてなりたい。弱かった時のことを忘れないようにしながら。

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*ここでいう「強い-弱い 」とは、力関係的な意味合いはないです。表現するのが非常に難しいのですが、敢えていうなら、「強い」とは「傷つくことを恐れず、また時に人を傷つける事もできる人」で、「弱い」とは「傷つくのは恐れていて、また人を傷つけることをしない人」

という感じになるでしょうか。どちらが良い-悪い というものはありません。自分自身が勝手に定義したものなので、悪しからず。




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