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【新米猟師】出会いと始まりの命

みなさま、ご無沙汰でございます。
サンドイッチ専門店WILDIES‘店長のエミカです。

先日実は初めて WILDIES’ が地上波に登場しました!!
いやもう取材を受けていたときは夢中で喋っているから、終わってから変なことを言っていないか心配で、、

でもさすが皆さんプロの方ですから、私のたどたどしい話を綺麗に編集してくれ、可愛く映してくれておりました。(感動して、すぐディレクターさんにお礼の連絡をしました。笑)

その中で、「WILDIES‘を始めるきっかけは?」という話に。放送ではカットされていましたが、そのお話をしようかなと思います。
長くなるかもしれませんが、どうぞお付き合いください。

前回の記事で、どうして私が前職を辞めたのかはお話しましたが、
(前の記事はこちら▼)

どうしてジビエなの?狩猟をしようと思ったの?
というところですよね。

狩猟というものを知るきっかけは、猟銃を持つ知人の存在でした。一番最初に狩猟に連れて行ってもらったときの記憶は覚えていませんが、昨シーズンから同行させてもらっています。

その中で鹿さんとの出会いが一番衝撃的で、なんて言葉にすればいいのかわからないくらい、感情が揺れ動いていたのを覚えています。
(しばらくは誰にも話せなかったので、意外とこの話を知る人は少ないかもしれない)

もともとは鴨を狙っていて、たまたまその日はどこにいっても鴨がおらず、普段いかない山の奥まで車を走らせました。
前を走る県外ナンバーの車が路肩に寄ったので、「なにかトラブル?」と思ったら、ガードレールの向こう側、小川の側にオスのニホンジカが。ちょうど背丈くらいの雪の壁がそこだけ途切れていて、切れ目からこちらを覗いているかのようでした。

前の車の家族は、あかちゃんにシカを見せようと、車から出てしばらく見ていましたが、対照的に私たちはハンターマップと照らし合わせ、狩猟対象地区であること、周囲に民家がないこと等を確認していました。
(私もきっと狩猟の知識を得る前は、シカだー!と車の外に出て眺めていたと思います笑)

ニホンジカやイノシシが狩猟対象獣として定められているのは、山から下りて麓の畑の農作物を食べ、畑を荒らしているから。令和3年度の野生鳥獣による農作物の被害額は155億円(農林水産省HP参照、記事下部にURL記載)にもなります。
シカは木の皮も食べるので、個体数が増えれば、皮を食べられ死んでしまう木が増えます。そうなれば農家だけではなく、林業の人たちへも影響が出ます。

シカを見つけたときに、知人から「獲れたら食べたい?」と聞かれ、そんなに考えずに「はい」と答えました。
私は当時免許を持っていなかったので、知人の補助もほぼ何もできず、車の近くで待機していました。その間に知人は、車道から沢へ降り、シカに近づいていきます。

そのときになって、命を奪うことの実感が湧いてきました。
「本当にそれでいいのか?」
「知人は私が食べたいといったから、本当は嫌だけど銃を構えているんじゃないか?」
など私の判断は本当に良かったのかとずっと考えました。

私たちが動いている間もシカは逃げず、ずっとその場に佇んでいます。

知人はシカを仕留め、素早く血抜きを行い、内臓を出し、必要な処理を終わらせます。しかし大の男が持ち上げられない大きさのシカを私の車に載せられるわけもなく、、
(ラシーンは積載量がそんなにありません)

知人の師匠に来てもらい、シカを車に載せ、作業できる場所まで移動します。
車の中、お互い無言。
しゃべる心境ではありませんでした。本当によかったのか、ずっと胸の中にモヤモヤした感情がたまっていて、言葉にできませんでした。(道中ちょっと泣きました)

移動後、知人の師匠に教えてもらいながら、皮をはぎ肉を切りとっていきます。私は初めてということもあり、慣れない手つきで3、4時間ほどかかりました。
大まかな部位に切り分け、保存方法や調理で気を付けることを教えてもらい、お肉の一部をお譲りして、帰途につきます。

お互いに気持ちの整理がついたのか、そこから知人と話をしました。彼も銃を構える間、シカと見つめ合ったこと、命について、害獣被害について、たくさんのことが頭をよぎったこと。彼がそのとき感じたことを少し教えてもらいました。

解体まで自分の手ですることで、気持ちの整理がついたのだと思います。
命をもらうからには、美味しく食べること。
無駄にしないこと。
知ってもらうこと。

そしてそれでも、お腹はすくこと。

私たちは命を食べて、生きて、そして育んでいくんだと思います。
「食」「頂くこと」について、改めて知り考えるきっかけでした。

また、狩猟と違い、年間を通して行われている有害駆除ですが、以前はほぼ食べられることなく廃棄されていました。現在ではジビエに対する関心も高まり、処理施設も増えてきています。
ジビエとしてお肉本来の美味しさや成分が注目されていますが、現役猟師の減少や高齢化、農業林業への害獣被害、肉・皮の資源活用といった部分にも目を向けてもらえたら嬉しいなと思います。

ということで!(前置きが長くなりましたが)
私が狩猟やジビエサンドイッチのお店を始めたきっかけになります。
手軽に美味しく食べてもらう、シカならシカ本来のお肉の美味しさを知ってもらうことに加えて、そんな背景を含めた狩猟について知ってもらえたらと思っています。

ちなみにですが、よく「ジビエはくさい」と言われますが、それはほとんど血抜きのタイミングです。適切に血抜きが行われれば、獣臭はほぼなく、そのお肉本来の味が楽しめます。
流通している「くさい」お肉は、心臓が止まってから時間をおいて血抜きされているのかもしれません。
適切な処理ができる人や知識を持った人が増えれば、きっともっと「美味しい」が増えていくんじゃないかなと思う次第です。

この記事が、誰か何かのきっかけになることを願って。
ではまたいつの日か。

ジビエサンドイッチ専門店 WILDIES' エミカ

参考資料
・農林水産省 ジビエ利用の推進について
農作物被害額推移、捕獲頭数の推移


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