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縦割り110番に"自動車運転免許試験の民間教習所等への移管"の提案と、その結果に対する行政文書開示請求をした件 -縦割り110番編-

  1. プロローグ

  2. 縦割り110番

  3. 開示請求

  4. 再請求

  5. 開示決定と考察

政治家に声を届けるウェブサイト"Polipoli"にて、今回縦割り110番で提案したのと同内容の政策提案を行っています。もしよろしければ賛同をお願いします。

自動車運転免許試験の民間教習所等への移管


縦割り110番に提案してみた

2020年9月17日、河野太郎 行革担当大臣(当時)が自らのサイトに"行政改革目安箱"を設置し、行政改革に関する提案を広く国民一般から募集し始めた。その後、当初の想定を超える反響から中断などもあったものの、内閣府によって規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)の運用が開始された。これは興味深い施策である。
市中には民間の自動車教習所がたくさんあり、そこの学生も当然免許試験を受けるわけだから、試験リソースも潤沢にあるはずである。ピークもあれば閑散期もあるだろうが、試験リソースに余剰がある時期もあるだろう。何より、同じ試験を実施していてPassすれば同様に公道を走れるようになるのだから、試験業務を警察の免許センターで独占しなければいけない理由はないはずだ。何より、民間でも実現する能力を有する事業を行政が行う、ましてや独占するのは、ある種の民業圧迫でもあると思う。民間にできることは民間に開放されるべきだ。
その思いから、2020年の10月頃だったと思うが、早速提案してみた。

提案事項: 自動車運転免許試験の民間教習所等への移管

提案の具体的内容:
現在、自動車運転免許試験は主に各都道府県の運転免許試験場で行われているが、これを民間の教習所などの事業者に移管して欲しい。

提案理由:
各都道府県が設置している公営の運転免許試験場は数が少なく、中には1箇所しか設置されていない都道府県も少なくない。
そのため、特に実技試験において試験のキャパシティが受験者に対して少なく、東京など都市部の場合には試験予約を行ってから実際に試験が行われるまで1ヶ月近くかかることも珍しくない。これは、半年間と定められている仮免許証の期間と比べても決して短いものではない。
一方、市中には道路交通法に基づいた技能検定を実施できる技能検定員を有する民間の教習所が多数ある。しかし、市中の民間教習所では検定受験のみを行うことは通常できず、教習とセットになってしまうためこれらの場所で受験をする場合に高額の費用が必要になってしまう。
そこで、運転免許試験場の試験業務を民間に移管し、市中の民間教習所でも試験を受験できるようにしてほしい。この施策によって、以下のような効果が期待できる。
・民間教習所の余剰試験リソースの有効活用によるキャパシティ増加と公営運転試験場の負荷軽減
・検定事業増加に伴う民間教習所の収益性改善
・試験実施場所増加による利用者の利便性向上
・民間移管により市場原理が働くことに伴うサービス品質向上(例えば夜間や土日祝日での試験実施など)
・例えば検定専門業者など、関連する周辺新規産業創造の可能性が生まれる

不思議な回答が来た

その後しばらく、何の進展もなかった。たまに縦割り110番のサイトをチェックしていたのだが、提案事項一覧に掲載されることもなく月日は経過した。
2021年の夏ごろ、ようやく提案事項一覧に掲載される。2021年7月20日付けで担当である警察庁に正式に検討要請されたらしい。自分のアイディアがささやかながら国の制度を変えるかも知れない、と思うと、少しドキドキした。
しかし、検討要請がされてもその後一向に回答されることがなかった。これはもしかしてマジメに実現に向けて検討してくれているのか?と期待もしたのだが、検討要請から半年が経過しても回答が来ることはなかった。
結局、回答が来たのは2022年の3月、検討要請から7ヶ月以上も経ってからだった。

所管省庁: 警察庁
所管省庁の検討結果:

制度の現状:
 免許に関する事務の全部又は一部については、当該事務を行うのに必要かつ適切な組織及び能力を有すると都道府県公安委員会(以下及び対応の概要欄において「公安委員会」といいます。)が認める法人に委託することができますが、運転免許試験の結果の判定に係る事務について委託することはできないこととされています。
 また、運転免許試験の技能試験については、公安委員会の指定を受けた警察職員が技能試験を受ける者の運転する自動車に同乗して(大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車又はその他の自動車で乗車定員が一人であるものを使用する技能試験にあっては、同乗以外の方法で)行うこととされています。

該当法令等:
道路交通法(昭和35年法律第105号)第108条第1項
道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第40条の3第1項第5号
道路交通法施行規則(昭和35年内閣府令第60号)第24条第8項及び同31条の4の2

対応の分類: 対応不可
対応の概要:
運転免許試験の技能試験については、交通の安全に直接影響を与えるものであるため、公安委員会において指定された警察職員が実施することとされており、技能試験の実施を民間に委託することは、交通の安全の確保という観点から困難であると考えております。

検討要請に対する所管省庁からの回答 行政改革 令和2年度 960番

ちょっと何言ってるか分からない。
"免許に関する事務の全部又は一部"を、"必要かつ適切な組織及び能力を有すると都道府県公安委員会が認める法人"に委託できるけど、"運転免許試験の結果の判定"は"交通の安全の確保という観点から困難"??
この説明は妙だ。運転免許試験を委託したら"交通の安全の確保"ができない法人はそもそも"必要かつ適切な組織及び能力を有"していないし、それを有しているのであれば"交通の安全の確保"ができるはずだから、技能試験を委託しても問題ないはずである。
主張している内容が全く矛盾している。
こんな明らかに矛盾した回答をするとは、警察庁は7ヶ月もかけて一体何を検討していたんだ? せっかくの"縦割り110番"に寄せられた提案を、マジメに検討なんてしていなくて、現状から何も変えない"結論ありき"で適当に回答してるんじゃないか、これ?
率直に言ってふざけている。

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