米津玄師降臨で浮かび上がった「Clubhouse」の功罪
お知らせが来たので”指定の飲み屋”で席に着くと、うしろのテーブルで米津玄師とその友達がダラ〜 と飲んでいた。姿は見えないが何となく気配を感じつつ背中で盗み聞きしていたら、もう1人の友達が呼ばれてジョインした。そのまま3人は低めのテンションで何度も沈黙を挟みながら、他愛のないボーイズトークでチルっていた。
ふと我に返り、顔をあげると膨大な数の野次馬が、彼らの会話をじーっと聞いていた。なかなか不気味な光景である。
昨晩、米津玄師がモデレーター(幹事やMCみたいなもの)となって、開催されたclubhouseのroom(飲み会や会議みたいなもの)のイメージはだいたい上記のような感じだ。
話の内容は規約上、録音も書き起こしも禁止で他言無用
「この一期一会な感じいいね。」と思う人は多いだろう。
かつてツイキャスやスタライが録音され、悪意なくネットに拡散されたり、書き起こしがアップされたりと、その場限りの一期一会に裏切られてきた米津にとって、録音もできなければログも残らないこの新たなSNSは安心できる場所になるかもしれない。
しかし、ClubhouseはiOS(iPhoneやiPad)にしか対応していない。日本でのiOSのシェアは約50%だが、Androidがほんのわずかに上回っている。つまり、半数余りの人がClubhouseのアプリをダウンロードすることすらできないのだ。
もしかしたら、全世界でシェアを落としているAppleが秘密裏に開発したアプリなのではないか?そして、セレブリティを登録させるために、巨額のマネーが動いているのではないか?と穿った憶測が膨らんでくるw
冗談はさておき、iPhoneユーザーでも既存会員からの招待がなければ登録できず、利用規約や通知に至るまで言語は全て英語だ。原則として本名で登録しなければならず、電話番号も運営に晒すことになる。
冒頭に書いた「指定の飲み屋」までの道程はかなり険しいのだ。
開設から18時間経過した今、米津のClubhouseフォロワーは2万人を超えている。狭き門をくぐり抜けてきた猛者たちの鬼気迫る形相が見えるようで恐ろしい。
零れ落ちた羊たちの悲鳴
一方で、Androidユーザーなど聞けなかった多くのファンたちの反応は、配信の最中に徳島新聞が光の速さで記事化した。「彼が楽しいのなら私も嬉しい」という大人の反応から、例の船の話になぞらえた恨み節まで率直な感情でTwitterのタイムラインは荒れに荒れ「米津さん」はトレンドに躍り出た。
バブル経験者の私は、このエクスクルーシブなSNSにある種の薄気味悪さを感じている。高騰するゴルフ会員権、最旬ディスコのVIPルーム、一見さんお断りの料亭、、、。あの古き良き狂った時代の再来のようなことがネット上で行われている。
登録出来ない者たちは言いようのない疎外感に苛まれ、晴れて会員となった者たちは、FOMO (fear of missing out)=「取り残されることへの不安や恐怖」に追われ時間を無限に溶かしていく。私の知人にも、いつアクセスしても常にどこかのroomにいる重症中毒者がいる。
例えば、米津玄師ファンだったら、彼が今この瞬間もどこかのroomで発言しているのかもしれないと思ったら、いてもたってもいられず1日中Clubhouseにアクセスし、血眼になって探してしまうのではないか?
ラジオの断末魔が聞こえる
もちろん、上手に付き合えば結構楽しめるアプリだと思う。著名人の会話を聞くだけでない。自分の興味のあるコト、モノについてのディープな話を聞くことも、許可があれば会話に加わることもできる双方向ラジオのようなアプリなのだ。
さらに、音楽はサブスクで垂れ流すこともできるとなると地上波のラジオはどこに存在意義を見出すのだろうか?メディアとSNSのパラダイムシフトが実感を伴って目前に迫っている。
米津玄師は再びClubhouseに帰ってくるか?
内容がネタバレにならない程度に書くが、昨晩は気心しれた友人との会話で酒も入っていたにも関わらず、背後に1万人以上が聞き耳を立てているということを、終始意識し警戒しているようだった。
Alright テーブルの向こうに
裏返しのiPhone
今回は誰のスパイ?
そう、IPhone2台と静かな空間と、ちょっとした出来心があればClubhouseの会話だって録音しネットに晒すことも可能なのだ。
次々と生まれてくるデジタルコミュニケーションのビッグウェーブ。、せいぜい溺れないように波打ち際でチャプチャプ遊ぶくらいに留めておこうと思う。
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