NHK ふたりのディスタンス「愛は愛だけではない」
NHKの新番組「ふたりのディスタンス」第一回目の放送を観た。何度も挟み込まれるイラスト、ほっこりとスベるナレーション。さらにそれを読む新垣結衣は声だけで最高なのに、あの似顔絵は必要なのか?下品なほどにデカい主題歌のテロップも。そんなNHKにありがちな過剰演出を差し引いてもいい番組だった。
カリスマ家政婦として人気の妻と、毎日の家事に勤しむフランス人の専業主夫。そして2人の子供ともうすぐ生まれてくる3人目の赤ちゃん、猫2匹の家庭は楽しげな笑顔に溢れとても幸せそうだ。
しかし、働いていない夫は”ヒモ”と後ろ指を差されることもある。妻の仕事を手伝うだけの無職の夫を15歳年上の妻は心の底で心配している。「彼には本当はやりたいことがあるのではないか?」そんな妻に夫は明るく答える。
「家族が1位だから」
父親を知らずに育ち、寂しくて、友だち欲しさに家のモノを盗んでまで気を引こうとした幼少時代。家族の愛に飢えた彼はこうも言う。「(自分のことより妻の)志麻が幸せならそれでいい。」「志麻しかいない」
仕事熱心なあまり自分本位な言動で同僚とうまくいかず、一流フランス料理店を辞めた妻もまた心に傷を負っていた。それを丁寧にすくいとるように根気よく聞いてくれたのが彼だった。
お互いがお互いを必要とし、引き剥がすことができないほど、溶け合うように心が癒着している。改めて見ると、癒着という文字は「癒し」が「着く」と書くのかとぼんやりと思う。
わずかな隙間さえも恐れているかのような0メートルの距離感は、微笑ましいを通りこしどこか痛々しかった。この人を失いたくない。「全力でこの人を愛したい」「家庭を守りたい」と言う必死さが明るい笑顔の端っこで怯えている。
夫が妻に献身的に尽くしているように見えるが、それは彼にとっては苦労でもなければ、貢献でもなく、もはや愛でさえないのかもしれない。
「愛は愛だけではない」と彼は言った。相手のことが好きだから、相手のためを思って、相手に愛されたいから、、、。それは間違いなく「愛」だろう。でも、家族ってそれだけじゃない。全てをひっくるめて丸ごと受け入れる。愛という言葉では足りないほどの切実さに胸が詰まる。
愛や家族や絆の脆さをこの人はよくわかっているのだろう。ほんの些細なことで簡単に崩れ去ることを。だからこそ、大切に慈しむように育んでいかなければならないということを思い出した。
我が家の距離はこの人たちほど近くはないが、付かず離れずの自分たちにとっての程よい距離感を大切にして行こうと思った。
そんな優しい気持ちになった時、米津玄師の「カナリヤ」が流れ出した。書き下ろしか?と思うほど番組の終わりにふさわしい主題歌だった。
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