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藤井風ライブat日産スタジアムは無料でいいのか?

藤井風がスタジアムライブを無料で開催する。

 なんと太っ腹で愛に溢れた企画かと驚き心踊った。しかし、公式サイトで実行委員会のコメントなどの詳細を読み進めるうちに「???」が頭の中に充満していった。

 藤井風はピアノ1台とその歌唱力だけでも人を魅了する逸材だ。その彼が大きなステージセットもライティングもバンド演奏もないスタジアムで行う、たった1時間の有客ライブ。これがYouTubeで生配信される。

 荒っぽい言い方をすれば、あけおめ配信や寝そべり配信を行う部屋が、7万人以上を収容できる大型スタジアムに変わり、そこに観客が入ると言うことだ。

 当然ながら相応の費用がかかるはずだが、このライブの特設ページには協賛企業名がクレジットされていない。

なのに、入場無料だ。

と言うことは、費用は主催者側の持ち出しということになる。

 ちなみに、日産スタジアムの所有者は日産自動車ではなく横浜市だ。日産が2005年にネーミングライツを取得し現在の名称となっている。公共施設なので、フィールドと全スタンドを使用してもその料金は144万円(プロ使用の場合の基本料金)と非常にリーズナブルだ。

ただし、入場料を取ったり物販を行うと別途料金が加算される。

 つまり、今回のライブのような使い方は最もお金がかからないわけだ。あくまでも推察だが、藤井風はノーギャラではないだろうか?他スタッフの人件費や最低限の音響、セットなどを鑑みても”普通のライブ”よりはコストがかからないと思われる。だが、収益は1円もない。

 このライブを行う意義は公式サイトに書いてある通りだ。

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 一見、素晴らしい志に見える。実際にこの純粋な思いに嘘偽りはないだろう。だが、「エンタメを通じて世の中を元気にしたい!」「社会貢献したい」と本気で願うのであれば、無料にしちゃダメだと思う。特に今は。

プロの音楽はタダではない。

 藤井風サイドにそんなつもりはなかったとしても”無料ライブが美談になること”は、実はとても危険なことだと思う。

エンタメ界は、特にライブを生業としているアーティストやスタッフはとんでもない苦境に立たされている。観客を半分しか入れられないなら料金を2倍にしてもいいくらいだが、そうもいかない。

 フィジカルは売れず、音楽はYouTubeなどで無料で視聴するのが当たり前になりつつある今、プロミュージシャンのマネタイズはグッズ頼みだと聞いたことがある。

 そんな中で、オーディエンスにお金を払わせないことが”思いやり”とか”愛”とかに変換されて拡散していくことに違和感を覚える。

 世の中にまた「以前のような活気が戻る旗印」にしたいのであれば、むしろ有料にして、その収益をコロナ渦で苦しんでいる人たちや業界に寄付した方がいいのではないか?

 あのスタジアムの収容人数は約72000人。半数でも36000人だ。仮に入場料を5000円にすると単純計算で1億8000万円になる。さらに、YouTubeライブの投げ銭システム「スパチャ」を使うのもいいいかもしれない。ファンを喜ばせるだけでなくリアルに社会に貢献できる。

 藤井風の音楽を生で聴け、それが社会貢献に繋がるのなら喜んでお金を払うファンはいくらでもいるだろう。

 元広告屋の悪い癖でシビアな見方をすれば、このライブは新曲(もしくはニューアルバム)のPR目的ではないかと思う。スタジアムライブが無料という話題性、イメージアップ、メディア・SNS拡散を広告料金換算すればお釣りが来そうだ。もし本当にPRイベントならば無料なのも納得だ。
<追記>9月から政府が実施する大規模イベントの実証実験説もある。

 このライブを偽善的だとか綺麗事などと揶揄する気は毛頭ない。効果効率の高いPRを行うことはビジネスとして当然のことだし、少しでも多くの人に喜んでもらいたいと願う心優しいサービス精神は本物だと信じている。

 だが、なかなか収束の見えないパンデミックで弱っているのは心と身体だけではない。経済もボロボロなのだ。エンタメ業界も。だから、ちゃんと稼ぐことを、お金をしっかり払ってもらうことを大前提にすべきだと思う。

 このライブに行きたい理由が「無料」だからだと言うケチなファンはいないはずだ。

藤井風の音楽にはそれだけの価値がある。


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