WIKIPEDIA「アベノマスク」から削除されてしまった項目

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日本語版のウィキペディア。奇妙な編集・無理な記述をちょくちょく見かけるのは、みなさんご存じのとおりです。

今年つくられた「アベノマスク」という項目でも、なんとかこの布マスク配布政策を擁護しようとする人たちが繰り返し強引な編集を行って、どんどん記事の体裁がおかしなことになっています。

はじめアベノマスク擁護側は、記事そのものを削除しようとしました。

静かに繰り広げられる、「アベノマスク」 Wikipediaの攻防( ハーバー・ビジネス・オンライン 2020/06/04)

しかしこれがメディアで取り上げられて注目されるとさすがに批判が集まり、記事自体は存続に。すると今度は手を変え品を変え、記事改変の試みが行われました。

そうした試みの延長上に、2020年末には、ついに政策に対して批判的なコメントを述べた著名人の項目が、すべて削除されてしまいました。

ウィキペディアというサイトで、基本的な事実関係を確かめようとする人はいません。そこに書かれていることに何の保証もないから。しかし出典が示された、政策発表当時の人々の感想は、そのまま歴史的史料として残ります。時間が経てば、ウィキペディアの「アベノマスク」という項目で有用なのは人々の生の声を伝えている部分だけということになるはずです。

しかし政策を擁護したい人たちにとって、影響力の強い著名人による批判的なコメントが残っているのは都合が悪いため、削除しようとするわけです。

これは「政権」を擁護するか批判するかとは、まったく、別の問題です。ここで問題になっているのは、あくまで布マスク配布という「政策」です。それにどんな反応があったか、という事実の問題です。ウィキペディア利用者が無理に事実の一部をもみ消そうとしているわけです。

ウィキペディアには記事の「編集履歴」を記録するページがあり、編集経過を克明にたどることができます。ここを見ると、さすがに全削除はおかしいと考えた人が何度か項目を残そうとしたようですが、アタマのネジの緩んだ利用者が押し切っています。(こういう事態を防げないのは、ウィキペディアというサービスの根本的な問題です)

それはともかく、ウィキペディア上では全削除されてしまったいろいろなコメント。政策発表当時の雰囲気を伝える史料として有用なので、ここにそっくり転載して残すことにしました。

(史料としてネット上に残すことが目的なので、この記事に対するコメント欄を今後読みに来ることはありませんが悪しからず…)

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肯定

▼国民民主党の大塚耕平参院議員会長は4月2日に行われた記者会見において、「根本的な対策にはならないと思うが、全面的に否定したり批判するつもりはない。マスクがなくて不安な家庭も現にある。他の対策の支障にならないなら、やってもいい」として評価した[131]。

▼環境大臣の小泉進次郎は4月3日の記者会見において、「できることは何でもやるという思いの一つだろう」と賛意を示した[132]。

▼自民党の石破茂議員はラジオ出演した際に「だいたい(普段のマスクの)7割かな」と大きさに言及し、マスクを配ることはいいことだと述べた。一方で、同番組では優先順位が間違っているとも指摘、税金が460億円投入されていることと併せて疑問を呈した[133]。

▼高須クリニックの美容整形外科医で東京院代表の高須克弥は「安倍政権による布マスク配布により、紙マスクが暴落し出回る!!商社も在庫を吐き出し、一般工場は医療用マスク製造にシフト!!」と述べ、政府による布マスク配布は大成功であるとした[134][出典無効][135]。

▼安倍晋三首相は4月28日の衆議院予算委員会において、「マスク市場にインパクトがあったのは事実。値崩れを起こす効果になっていると評価する人もいる」と述べて、布マスクの配布が一定の効果がある認識を示した[136]

▼菅義偉官房長官は5月20日の記者会見で「布マスクの配布などにより需要が抑制された結果、店頭の品薄状況が徐々に改善をされて、また上昇してきたマスク価格にも反転の兆しがみられる」と説明。 効果を自賛した[137]。

▼タレントのダレノガレ明美は5月24日、自身のツイッターを更新し、新型コロナウイルス対策で全世帯に2枚ずつ配布される布製のマスクが届いたことを報告。着用した画像を添付しながら、「洗えば繰り返し使えるし!!ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた[138]。

否定

▼ 4月2日に行われた衆議院本会議において、立憲民主党の松平浩一衆議院議員は全世帯に布マスクを配布するという緊急対応策が「アベノマスク」と呼ばれていることについて言及し、対応策について「まさに思い付きの場当たり的対応の極み」と批判した[3][139]。

▼マスク2枚の配布に対して466億円の予算を計上することについては批判が寄せられたほか[140]、配布されたマスクに関しても「小さくて話すとずれ、使いにくい」「耳がこすれて痛い」といった不満の声もあがった[141]。

▼神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授は「効果がない、あるいはコスト効果が極めて悪い策だと思います」「エビデンスに乏しく、実質的効果は期待できません」「無駄であるばかりか、『マスクさえすれば大丈夫』という間違ったメッセージを送りかねない」と指摘した[142]。

▼落語家でコメンテーターの立川志らくは不良品のマスクに対して「先進国とは思えないようなミスです。百歩譲って普段ならまだしも、今この時期にそういう問題が出てくるのは信じがたい」と憤り、「もし目の不自由な方が受け取っていたら、そういう汚れとか見えないわけだから気がつかずに使ってしまう可能性だって十分考えられる」と指摘した[143]。

▼コメンテーターでお笑いコンビ・おぎやはぎの小木博明が「きのうマスク届きましたけど、ゴムの長さが左右で違うし、むちゃくちゃですよ。」と指摘した。マスクに450億円以上が投入されていることについて小木は、「無駄なお金を使われるから、みんな給付だけは受けて、そこからは自由に基金作ったり、寄付したほうがいい。残しててもしょうがない」と10万円給付に触れつつアベノマスクに投入された税金は無駄であると批判した[144]。

▼タレントのデヴィ・スカルノは自身のTwitterで「お笑いもの」「466億円無駄にするより空地に病院を建てたほうがまし!」とマスクの配布およびその回収について非難した[145]。

▼お笑いタレントのビートたけしは、5月23日に出演した報道番組などで「マスクがやっときても、小さすぎるよ」「眼帯かと思った」などと揶揄した[146][147]。

▼格闘家・タレントの高田延彦は5月20日に公開した公式ツイッターなどで「アベノマスク!多額の税金を使っても必要な時期に届かず、不衛生なイメージ定着、現状街にはマスク潤沢に販売中、結果ほとんど役に立たず」と指摘したうえで、「あー情けない、どこへゆくアベノマスクよ。この税金無駄遣いの責任は誰がどう取るんだい?」と批判した[148]。

▼タレント・女優の小泉今日子は4月22日付のツイッターなどで、「人間だから間違えや失敗は誰にでもあるだろう。一生懸命やった結果だったら人はいつか許してくれるかもしれない。でも汚らしい嘘や狡は絶対に許されない。カビだらけのマスクはその汚らしさを具現化したように見えて仕方がない。」と述べて批判した[149][150][151]。

▼『チーム・バチスタの栄光』などの著書がある作家の海堂尊は、配布されてきたマスクが不清潔だとして「ゴミノマスク」「ムシノマスク」と表現、元外科医として清潔という概念を徹底的に教え込まれた身としてはとても使う気にならない、と批判した[152]。

▼配布方針が発表されると、日本の感染症対策として各国のメディアでも大きく報道された[153]。アメリカのブルームバーグやFOXニュース、またフランスのフランス24などは日本国内のSNSで批判・揶揄の声が上がっていることと合わせて "Abenomask" の呼び名を紹介した[33][154]。FOXニュースは「エイプリル・フールの冗談か」とも揶揄した[17]。

▼安倍首相が「マスク市場にインパクトがあったのは事実」と述べたことに対して複数のメディアが検証を行い、明確な根拠はないと結論づけている[155]。東京新聞は「そりゃ、ないっすね。だぶついていた在庫が市中に出てきただけ。今、中国からバンバン入っていますから。単に需要と供給のバランス」などとするマスク輸入業者の声を紹介している[156]。

▼マスク配布が決定したさいの読売新聞社の世論調査では、この方針を「評価しない」が73%と多数であった[157]。また配布がおおむね完了した6月下旬に行われた朝日新聞社の世論調査では、「役に立たなかった」は81%で、「役に立った」の15%を大きく上回った。政府の新型コロナ対応を「評価する」と答えた人の中でも、「役に立たなかった」は69%にのぼった[158]。

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出典

3)^ a b “布マスク配布、首相「少しでも不安解消」意義訴えたが…”. 朝日新聞デジタル. (2020年4月2日) 2020年4月24日閲覧。

17) ^ a b c 「布マスクで国民の不安はパッと消えますよ」アベノマスクを主導した“官邸の金正恩”ってどんな人?」(文春オンライン 2020年4月16日号)

33)^ a b From Abenomics to Abenomask: Japan Mask Plan Meets With Derision(Bloomberg, 2020年4月2日)

131) INC, SANKEI DIGITAL (2020年4月2日). “国民幹部、布マスク配布を評価” (日本語). 産経ニュース. 2020年5月5日閲覧。
132) INC, SANKEI DIGITAL (2020年4月3日). “小泉環境相、布マスク配布に賛意 「できることは何でも」” (日本語). 産経ニュース. 2020年5月5日閲覧。
133)石破氏アベノマスク手に皮肉「ちっちゃいんだねぇ」 - 日刊スポーツ 2020年4月22日16時3分
134) “アベノマスク配布とシャープのマスク販売は、マスクの路上販売など在庫処分モードへの移行の契機となったのか?:平凡でもフルーツでもなく、、、:オルタナティブ・ブログ” (日本語). オルタナティブ・ブログ. 2020年4月29日閲覧。
135)高須克弥 (2020年4月22日). “大成功!安倍政権による布マスク配布により、紙マスクが暴落し出回る!! https://seijichishin.com/?p=35305 @seijichishinから” (日本語). @katsuyatakasu. 2020年4月29日閲覧。
136) INC, SANKEI DIGITAL (2020年4月28日). “首相、布マスク配布「市場にインパクト」 野党議員に反論” (日本語). 産経ニュース. 2020年4月29日閲覧。
137) “アベノマスクのおかげで「価格が低下」 菅氏、効果強調:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2020年5月20日閲覧。
138) “ダレノガレ明美が全世帯配布の布製マスクに感謝:イザ!”. イザ!. 2020年6月11日閲覧。
139) “布マスク配布「竹やりで戦うようなもの」 想定外の反応、戸惑う政権”. 西日本新聞ニュース. (2020年4月3日) 2020年4月24日閲覧。
140) “布マスク配布に466億円 多額の国費投入に批判も―新型コロナ”. 時事ドットコム. (2020年4月9日) 2020年4月24日閲覧。
141) 介護・福祉施設に先行配布の「アベノマスク」早くも評判散々な訳『毎日新聞』
142) 「効果がない」「間違ったメッセージ送る」布マスク2枚配布、専門家はどう評価したのか - buzzfeed 2020/04/21 11:03
143) 立川志らく、不良品布マスクの続出に憤慨…「先進国とは思えないようなミス。信じがたい
144) 小木博明 アベノマスク「ゴムの長さ違う」 税金「ろくなもんに使わない」
145) デヴィ夫人が“アベノマスク回収騒動”を一喝!!「政治家・行政の輩に罰下るべき。空き地に病院建てた方がまし!」(2020年4月25日)東京中日スポーツ
146) “ビートたけしがようやく届いたアベノマスクにあぜん「眼帯かと思った」(中日スポーツ)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年9月28日閲覧。
147) “ビートたけしにアベノマスク届く「小さすぎるよ」 - お笑い : 日刊スポーツ” (日本語). nikkansports.com. 2020年9月28日閲覧。
148) “高田延彦 アベノマスクを批判”. 2020年7月17日閲覧。
149) “無能無策に怒りの声が次々 安倍政権は芸能界を敵に回した|日刊ゲンダイDIGITAL”. 日刊ゲンダイDIGITAL. 2020年9月29日閲覧。
150)  “小泉今日子がアベノマスクを「汚らしさを具現化」と真っ向批判! 他にも外務省の情報操作24億円や五輪問題で安倍政権批判を連発 (2020年4月23日)” (日本語). エキサイトニュース. 2020年9月29日閲覧。
151) “小泉今日子、安倍政権を「痛烈批判」に賛否…|エンタMEGA” (日本語). entamega.com. 2020年9月29日閲覧。
152) 日本経済新聞社・日経BP社. “そのマスク、清潔? 家に届いた実物を調べてみると…|ウェルエイジング|NIKKEI STYLE” (日本語). NIKKEI STYLE. 2020年6月20日閲覧。
153) Japan’s Abe Taken to Task Over Itsy-Bitsy Masks (The Wall Street Journal, 2020.4.21); Anger as Japanese Prime Minister offers two cloth masks per family while refusing to declare coronavirus emergency (CNN, 2020.4.2); Coronavirus: Japan PM gets social media roasting for offering free cloth masks (South China Morning Post, 2020.4.2); Two masks, no lockdown: Japan PM's latest coronavirus step riles social media (Reuters, 2020.4.2)
154) You've got mail: 'Abenomask' distribution starts in Japan (France 24, 2020.4.17); Coronavirus measure in Japan of 2 masks per home taken as April Fool's joke, mocked as 'Abenomask' (Fox News, 2020.4.2)
155) (東洋経済 5月1日;西日本新聞 5月17日)
156) “マスク値下がり 「アベノマスク」のおかげなの? 販売現場を歩いてみると…” (日本語). 東京新聞 TOKYO Web. 2020年5月19日閲覧。
157) “政府の布マスク配布「評価しない」73%…読売世論調査” (日本語). 読売新聞オンライン (2020年4月13日). 2020年6月23日閲覧。
158) “首相説明「不十分」80% 河井夫妻陣営への1.5億円資金 朝日新聞社世論調査” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2020年6月23日閲覧。