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ちゃぶ台返し

小学校に上がる前なので5歳頃だと思う。とても貧乏で、ある日の夕食は卵かけご飯だった。両親と8歳の長男と6歳の次男と5人で食卓を囲んでいた。茶碗に入った白ごはんとお箸、3個か4個分の溶き卵が入ったボールを用意され5人で上手に分けて卵かけご飯を食べるという段取り。

子ども達から不平不満も出ず、取りすぎず少なすぎずを考え、それぞれの茶碗に溶き卵をかけていた。醤油をかけたらおいしくて楽しい夕飯の時間。

「がっちゃーん!!」

「こんなもん食えるかー!!」

父がちゃぶ台を引っくり返し、壁を蹴り出した。
みんなの夕飯は床にぶち撒けられていた。
守れたのはお箸だけ。

茶碗が割れてぐちゃぐちゃになったごはん。
少ししか食べれなかったので辛くて泣いた。次男も泣いた。

そんな中、長男は茶碗とお箸を手に持って守っていた。
両親が言い争い食卓が大惨事になってる中、泣いてるわたし達に向かって「ひっくり返す前に、自分のお皿だけ手に持っときよ。ほら、食べれるやろ。」っとこっそり教えてくれた。

2人とも泣くのをやめ長男を尊敬の眼差しで見た。そして次引っくり返されてもご飯は絶対守ろうと思った。

ちなみに後日、同じように食事中にちゃぶ台は引っくり返された。
父がブチ切れる中、長男と次男は自分のお皿を守れた喜びをこっそり分かち合っていた。わたしは泣いた。


これを書きながら、さすがに卵かけご飯だけって・・・。毎日だったら父も怒りたくなるかな。だけど子どもの頃のわたしには、ご飯が食べれなくなったことがとてもとても辛かったので、やはり父が悪いのだ。

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