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文系修士生の増加計画について

わせりんです。普段はWadvanceという大学生の活動やそこから身についた能力について評価するというような製品を作ろうと試みている者です。
最近はその流れで、文系の院進をどうすれば増やせるのかについて研究中です。なかでも、経済・政治・商業・心理学などの修士課程生が増えない原因はなにか、そしてどのような政策・事業案があれば解決するのかについて考えています。
院生や博士生が社会の中で増えれば、現在圧倒的に不足している高度な知識労働者が補充できるはずです。そしてなにより、日本の研究業界が更に盛り上がることを期待しています。

背景

文系の大学進学率全体としては11.3%だが、中身を見ると以下のような分布になっています。
・理学:42.3%
・工学:36.3%
・農学:24.1%
・教育:5.6%
・保健:4.8%
・人文学:4.4%
・社会科学:2.3%
参考:学士課程修了者の進学率の推移(分野別)
ここから推察するに、いわゆる理系では当然のものという認識があると思われます。その一方で、文系の場合は研究の価値がまだ広まっていない可能性があります。また、就職活動をするにあたって不都合なのではないかという噂が広まっていることも拍車を掛けているのではないかと思われます。

例として、文系の大学生が多い早稲田の進路データを見てみると

参考 https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2021/07/2020careerdata.pdf

政治経済学部 : 7.95%
法学部 : 13.69%
商学部 : 4.54%
社会科学部 : 4.30%
文化構想学部 : 5.88%
文学部 : 9.91%
というような割合になります。全国平均に比べれば高いとはいえ、有名大学でもこのレベルです。

問題点

なぜ、文系、特に社会科学系の院生は少ないのでしょうか。考えられる点は様々ですが、下記の中でもキャリアに対する不安は非常に大きいのではないかと考えています。

  1. キャリアに対する不安

  2. 個人の学歴や経験

  3. 経済的状況

  4. 性別

  5. 年齢

  6. 学部や専攻

このキャリア不安が出来上がる理由について、大きく2つにわけると、

  1. 院進後の生活について情報が不足している

  2. 院進後の就活で成功したというロールモデルが不足している

があると考えられます。より精密な定義については先行論文についてのより詳しい研究が必要になると思います。

ただ、実態として井上(08)は院生の就活において、専門性よりも"社会通用性"が求められていると述べています。

これまでの検証から企業による採用選考では、とりわけ文系職採用においては、その人間が社会の現場で実際に困難な課題を遂行していくことのできる能力を持ち得ているかを評価している、すなわち高い専門性よりも学びの過程で得られる価値観やコミュニケーション能力や協調性、主体性やチャレンジ精神などに代表される社会通用性が問われている。

文系大学院生を対象としたキャリア形成支援
プログラムの開発

ここから、文系の院生が就活する方法はほとんど学卒と変わらないことが予測され、研究内容がちゃんと使えるわけではないとなれば就活においてアピール出来ることは非常に限られていると考えられます。
しかし、実際に将来のキャリアに対する不安がどの程度大学生の間に存在し、それが学生の院進決定に対してどの程度負の影響を与えているかについてはまだ不明です。

解決策

解決策として海外の先行例が参考になります。

米国ノースイースタン大学ではこれまでインターンシップの先駆的な取り組みをしている。特徴的なものは長期にわたる有給インターンシップがあげられる。同大学は、大学卒業と同時に即戦力としてすぐに活かせるような職業教育の徹底と、それによる良好な就職機会の提供を大学の使命として、学生に産学協同教育(Co-operative Education:CO~OP教育)プログラムへの参加を呼びかけており、ほぼ全員がこのプログラムに参加している。在学中に大学側が斡旋する職場でフルタイムとして働き、学生は安定した学資を稼ぎながら、なおかつ大学の卒業資格を得ることができるものとなっている。ただし、卒業に必要な単位を取得するまでに、最短でも5年間を要するというデメリットもある。

井上(08)

上記のように、就業期間を設け院生に対して研究時間の確保と同様に、就職活動に置いて一般に必要となるような複数の工数を削減・補助する必要があると考えます。

その一方でインターンシップ単体では、実際の効果を得ることは難しい可能性があります。

学生は、企業の知名度と規模を重視してインターンシップ先を選んだ上で、インターンシップ経験の多様性と数が多ければ多いほど、就職活動に正の影響をもたらすと思っている。つまり、「インターンシップをした」という経験の有無やその数をもとに履歴選考を行っていると認識している。しかし、企業はそれだけではなく、面接などの採用段階になると、インターンシップ経験と学生の専門及び採用したいポストや分野の関連性を重視している。つまり、企業側は、「インターンシップをした」ということを重視しているのではなく、インターンシップの内容と専門のつながり、インターンシップ経験を通じて身につけた能力に注目している。

傅 振九(2014)

このことから、長期インターンシップによる院生の補助が必要な一方で、自らの行きたい進路に合わせて選択肢が用意されるべきであること、そしてインターンシップ終了後に良質な採用が確保出来る必要があります。
また、大学三年生の段階で生じているキャリア不安について解消する必要があるため、就活が始まっている最中に実施するなどして、就職以外の進路選択に影響を及ぼす必要もあります。

課題

長期インターンシップのコスト
市場の小ささ

参考文献

インターンシップ経験と就職活動の関連についての大学院生と企業の認識

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/24/4/24_KJ00006814116/_pdf/-char/ja

https://www.jstage.jst.go.jp/article/keidaironshu/71/6/71_267/_pdf/-char/ja

https://www.jstage.jst.go.jp/article/keidaironshu/71/6/71_267/_pdf/-char/ja

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