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【質問箱回答】ポートフォリオで重視することって?

久々の質問箱回答です。

いつもご質問ありがとうございます。今回いただいたご質問はこちらです。

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…ポートフォリオって何載せたらいいの?

イラストレーターなら一度は本気で考えることではないでしょうか。
ここで質問主さまの状況を整理してみましょう。

-学生さん
-作品はすでに作っている

おそらく既にご自分のイラストの方向性はある程度固まっていて、かつそれを売り出しはじめる段階。学生さんということなので、もしかしたら就活も意識されているかもしれません。このご質問が頭に浮かぶということは、目指す業界や業種もすでに固まりつつあるのかなと推察いたします。

…と、仮定して、私なりの見解を書いてみようと思います。
何かの参考になれば幸いです。

ポートフォリオってそもそも何ぞや?

え、作品を載せるものでしょ?と思われるかもしれません。私も過去そう思っていました。でも、今は少し違うと感じています。

ポートフォリオは、自分の能力と人柄を端的に表すもの、と考えた方が本質的だと思っています。

たとえば、私は大学でミュシャを研究していたことから「ミュシャ風のイラスト」がめちゃくちゃ得意、だとします。

今まで描いたミュシャ風のイラストをポートフォリオにたくさん載せる。その時点では、その冊子はポートフォリオではなく純粋な作品集にすぎません。主役はあくまでイラストであり、描いた本人は脇役です。

でも、ポートフォリオで売り込みたいのは自分の能力と人柄。なぜなら、採用する人は作品ではなく制作者を採用したいからです。作品は判断基準でしかなりません。

まず売り込むべきは「作品」ではなく「描いた自分」であるのを意識すると、ポートフォリオで伝えるべきことが具体化してきます。

ポートフォリオで伝えること①能力

そもそもなぜ作品を載せるのか?というと、「私こんなことできます!」と言葉で説明するよりも実際のイラストを見せた方が説得力があるからです。自分のできることを説明する際に確実で、かつ手っ取り早い。

であれば、作品は自分の能力がより良く分かるものを選んで載せるべきでしょう。まずはどの作品を載せて、どの作品を載せないか?を決めます。

例えばこんな基準はいかがでしょうか。

・時間軸
制作時間別に作品を並べます。5時間、1日、1週間…など、限られた時間でどれだけのパフォーマンスができるか?を表すことができます。
実際の仕事になると、限られた時間内で作品を制作することがほとんどです。めちゃくちゃすっごい上手いイラストを沢山制作していても、それが1枚1ヶ月かかるような大作ばかりだと「うち基本納期2週間くらいなんだよな……」という会社にとっては採用しにくいと思われるかもしれません。(出版社は結構納期が短いところが多いように感じます)
・描かれたモチーフの多様さ
可愛い女の子、イケメン、老人、動物、小物、乗り物、建物…同じ絵柄の中で、どれだけ多様なモチーフを描けるかを表します。「これは無理、苦手」というのは誰しもありますが、ここでアピールしたいのは「いろんなモチーフを描く意欲があります」という意思表示。仕事として、依頼に対してどの程度柔軟に対応できるのか?を表します。
・実際の依頼の様子
ラフの段階から線画、着彩、仕上げの過程を載せたポートフォリオもよく見ますが、これは相手に対して「もしこの人と一緒に仕事をしたら?」というifを想像させるのが目的です。こんな依頼に対してこう対応して、こうやって提案して、こんな仕上がりになりました、という一連の流れです。
学生のうちから実績を積んでおくといい、といろんな人が言うのは、「この流れの例を見せられると相手に具体的に採用した未来を想像させることができるから」です。ですので、実際にそこに金銭のやり取りがあったか、とか、相手が大きな企業であったか?というのはさほど重視されません。架空の案件であっても、依頼に対して真摯に対応できることが分かれば特に問題ありません(その際は架空の案件であることは明記しておいたほうがいいかもしれません)。


上記は例にすぎませんが、伝えたい能力を見せるために作品を選び、並べることで「作品集」は「ポートフォリオ」になっていくのではないかと思います。

逆に、どんなに上手く描けたイラストでも「自分の能力を表すのに必要ないな…」と思ったら載せない、という決断も必要です。作品の量で勝負する場合は別かもしれませんが、基本的に必要なものを載せる、というスタンスでいた方が自分の売り込みポイントがブレません。

また、ポートフォリオ用のイラストを選別する際に「こんなイラストがあったらもっと分かりやすくなるな」という発見が多々あると思います。そういうときはポートフォリオに載せるために新しく描き起こすことで、より伝わりやすいポートフォリオになるのではないでしょうか。

ポートフォリオで伝えること②人柄

私は正直、これこそが最重要点だと思います。

ポートフォリオには制作者の人柄がものすごく反映されます。それが例え無意識であっても。

これは極端な例ですが、印刷用紙がぺらぺらで頼りないポートフォリオと、印刷所に発注して綺麗に発色しているポートフォリオ、どちらの方が「ちゃんとしてる感」があるでしょうか?
同じくらいの能力がある人を比べたときに、イラストの配置がなんか見づらいポートフォリオと見ていて安心できるポートフォリオ、どちらを採用したいと思うでしょうか?
そのポートフォリオを作るために、かかった工数、時間、気遣い、お金(もちろんできる範囲で、ですが)を、採用する側は確実に見ています。仕事に対してどれほど本気になれるのか?を量るのは、ポートフォリオに載せる作品だけではなく、むしろポートフォリオそのものといっても良いかもしれません。

目次が分かりやすい、書いてある文字が読みやすい、イラストの配置が見やすい…本当に小さな心遣いが、意外と採用の決め手になったりする…ポートフォリオは仕事への向き合い方まで表現する媒体なんだな、と思います。

これは余談になりますが、先日クリエイターexpoという商談会に出展してきました。企業の方が新しいイラストレーターを発掘する場です。そこで私がご来場者の皆さんにお渡ししたのは、一般的には「ポートフォリオ」とは呼ばれないチラシとクリアファイルでした。チラシでは「作品のアピールする気あるの?」といわれそうなくらいイラストそのものは載せず、仕事への姿勢やイラストの用途を中心に書きました。
その理由は簡単で、自分の成果物ではなく「自分の仕事に対する人柄、姿勢」を伝えようとしたためです。自分そのものを売り込む意図で、敢えて「これぞポートフォリオ!」というものは配らずに、代わりにチラシやクリアファイルの至るところに自分のウェブサイトへの導線を引き、実績や作品はサイトに載せておきました。また、クリアファイルを配った理由の一つは、「ご来場者はいろんな方からチラシやポートフォリオを貰っているだろうから、それがばらばらになってたら不便だろうな」と思ったためです。
この方針を実践しているイラストレーターの方をほかに見たことが無かったので正直効果があるかは当日まで分かりませんでしたが、現在クリエポを終えて2週間。順調にお問い合わせが来ているので、おそらく効果はあったのでしょう。
でもこの手法、よく考えたら他の業種の企業はよくやっています。なぜ街頭でティッシュやカイロ、うちわを配るのか?多くの人に手に取ってもらうため、という意図もある一方で、「宣伝を受け取ってくれてありがとう、よかったら使ってください」「私はあなたに寄り添います」という企業の意思表示でもあるはずです。
ポートフォリオも言ってみれば自分の宣伝媒体。少しでも受け取り手に対して得があるように考えたほうが良い、という思い故でした。(…と、いうのを実際にやってみたら想像以上にお金がかかりました……ひええ…)

ポートフォリオは自分の分身

…と、よく聞きますがほんとにそうだと思います。自分の能力はもちろん、注力したこと、そして無意識に見落としていたところまで如実に反映します。

質問主さまは学生でいらっしゃるので、引き続き作品を制作し、そこからポートフォリオを組み立てようとしてらっしゃることと思います。

自主制作の際も「このイラストには自分が持つどんな良さが出ているだろう?」という視点を持ちながら制作してみると、自分の売り込むべき点が見えてくるかもしれません。分からなくなったら先生や友達に聞いてみるのもひとつの手段だと思います。

ポートフォリオで自分の何を伝えるか?具体的に思索するきっかけになれば幸いです。

ご質問ありがとうございました!

頑張って書いてみました!もし良ければサポートよろしくお願いします!