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《寄稿》就活したことがない取締役が就活生に教えたい「省エネ」仕事術⑩

学生時代から、誰にも負けない才能を持ち、誰よりも努力を積み重ねてきた。
自分が磨き上げてきた才は、世界を幸せにするためにこそ使われるべきだと確信しており、そのための道筋(キャリア)は既に見えている。
あとは結果を出すだけ!エネルギー満タン!

‥‥‥と、あなたがそんな素晴らしい就活生ならば、僕から教えられることは何もない。
今すぐ経営者や、政治家とかになったほうがいい。


自分はそんな就活生ではなかった。
大した才能も実績もなく、心身ともに貧弱、人望もなく、育ちも悪ければ、性格も悪い。

なにより致命的だったのは、バイタリティの乏しさ。
まわりのスゴイヤツは例外なくバケモノみたいなバイタリティを持っていて、どんな障害があろうとブルドーザーのように前に進み続ける。

かたや自分はちょっとしたことで、すぐガス欠になってしまうんだ。
寝不足になるだけで、ちょっと嫌なことがあるだけで、会社の皆でラウンドワンに行くだけで、翌日からゴミカスパフォーマンスになる。
「その程度のやる気しかないんじゃないの?」とかそういうことではない。象にとっては角砂糖が小さくとも、アリにとってはすごく大きいのだ。

これが生物としての性能差か‥‥と凹んだものだったが、ないものをねだっても仕方ない。

それでも一番になりたい、誰かに負けたくない、なにかを成し遂げたい。そんなワガママメガネがたどり着いたのは、少ないエネルギーをいかに効果的に使うかの「省エネ」だった。


魔力の量は天性のものだとしても、消費MPを減らしたり、魔法の使い方を工夫することはできる。
クリリンだって気円斬とか太陽拳とか駆使して、はるかに戦闘力高い相手とも渡り合えていたじゃないか。


そう思い至ってからは、「省エネ」のための努力を惜しまず、常に考え、改善を続けた。
はじめのほうは「省エネ」を考えるだけでエネルギーを使い果たしてしまい、結果を残せないことも少なくなかった。それでも諦めなかった。

そうやって涙ぐましい努力をしている間、常に自分の10000倍くらいバイタリティのあるバケモノたちがウジャウジャ湧いてきて、僕を焦らせた。それでも挫けずに「省エネ」にパラメーターポイントを振り続けた。

そうしているうちに、アルバイトからスタートした就活生は、気が付くと経営者と呼ばれるようになり、100回に1回くらいならバケモノを倒せるようになった。
あと5年がんばれば30回に1回くらいはいけるだろう。たぶん。

今回、就活生に向けての文章を書くにあたり、自分なりに試行錯誤した「省エネ」のうち、役に立っているものをまとめてみた。

万人の役に立つかはわからないが、いつか「バケモノ」を倒したいと思っている人の役に立てたら嬉しいと思う。


①ゼロから考えると時間を無駄にする

物事をゼロから考えると、膨大な時間とエネルギーを消費する。
調査、全体像の把握からスタート、やっとのことで形になっても、いきなり完璧にできないだろう。
そこから振り返り、改善を繰り返し、ようやく見せられるものができあがる……。

これだけエネルギーを浪費するにも関わらず、悲しいかな、その仕事の99%は過去に先人が思いつき、試しきっている。
断言できる。天才はどんな業種にも存在するのだ。

だから、新しい仕事を始めたとき、渾身の企画を思いついたとき、まずは事例を調べる癖をつけよう。
先輩に聞く、ネットで調べる、コンサルを雇う、競合を調べるなんでもいい、絶対にある。断言できる。
だから、物事をゼロから考えるようなコスパの悪いことをするのは、恥なのだ。

ただし丸パクリはよくない。要点だけ拝借する。そして必ず一つは「発明」を入れる。
そうやって人類は新しいものを生み出していくのだ。

ちなみにこの文章もゼロから書いていない。構成を掻い摘んでササっと書いている。


②時間対効果の高い"専門分野"をつくる

結論から先に言うとそれは「知識」だと思う。
手に職つける系のものを専門分野にしようとすると、習得までハンパない時間がかかる上、プロになれるかは才能次第になる。
エネルギッシュな人ならチャレンジするのもいいしそれは尊いものだが、ビジネスとして見たときは効率が悪い。

でも「知識」には才能も時間もいらない。
続けていれば、蓄積させていくだけで、誰でも「専門家」になれて、仕事になる。

例えば僕が新卒のときはFacebook全盛期で、あらゆる企業がFacebookを使ったマーケティングを検討している時期だった。
だから、Facebookの活用事例を調べまくるだけで、ちょっと前まで学生だった自分の知識を、大企業が軒並み欲しがった。

調べるのが面倒くさい「知識」であればあるほど、価値が出てくる。
あなたが面倒くさいと感じるコトほど、あなたの価値を高め、居場所を作ってくれる。


③ぐんぐんレベルを上げたいなら"逆セリエA"の職場を選ぶ

セリエAのようなハイレベルチームでベンチを温めるくらいなら、二軍チームのエースで活躍したほうがいい。
それが「かってに改造」というマンガで提唱されていた理論「逆セリエA」
一見、とんでもなく意識低い理論に聞こえるが、理にかなっていると思う。

自分では見合わない職場を選んでしまうと、チャンスがもらいにくい。
チャンスがもらいにくいと、経験値が溜まりにくく、レベルが上がりにくい。

レベル1の勇者がいきなりキラーマシンを倒しにいくだろうか?
また、勇者が死ぬほどいる街の周辺でレベル上げをするべきだろうか?

レベルが低いうちは、ライバルが少ないところで、ひたすらスライムを倒しまくるほうが絶対に効率がいい。
ただ大切なのは、レベルが上がってスライムでは物足りなくなったとき、すみやかに次の狩場に移動することだ。

僕が新卒で選んだのは社員10人にも満たないベンチャーで、しかも雇用形態はアルバイトだった。(就活3社しかしていない)
そこで目まぐるしく働いた結果、すぐに社員になり、新規事業を任され、会社の根幹に関わるビジネスに携わり、そして独立するまで半年も掛からなかった。


④人格者になる&相手の大切なものを見抜く

エネルギーの無駄遣いランキングの上位を争うのが、相手に自分の意見を「理解」してもらうこと。
例えば、企画会議で全員から合意を取るとか。

企画の有用性を説明し、計画を見せ、説得を繰り返し、粘り強く理解してもらうのも大切だが、ひとつ注意点がある。
あなたが嫌われていると、その難易度は100倍くらいになる。逆にあなたが信頼されているならば、イージーモード突入だ。
どんなに正論だったとしても関係ない、所詮、人間も動物なのだ。
嫌いなお笑い芸人が面白いこと言っても笑えないのと一緒。

ならば、我ら「省エネ」勢の優先すべきことは明確だ。
皆に好かれる人格者になればいいのだ。なれなくてもいい、貫ければいい。

そのために一番重要なのは、相手が大切にしていることを見抜く力だ。
そこを蔑ろにされれば人は怒り、そこを誉めれば人は自分のことを好いてくれる。


⑤最初と最後だけがんばる

エネルギーに乏しい人はエネルギーのかけどころを間違えてはいけない。
そして、かけどころは明確、「最初」と「最後」だ。

特に「最初」は最重要。第一印象がよければ大抵なんとかなる。
だから、スタートダッシュに全力をかけるべき。
サプライズを用意する、最速を見せる、最高クオリティを出す、なんでもいい。
ありとあらゆる手段を使って、ここで「期待を超える」と後々が楽になる。
(この文章についても最初だけがんばった)

だから「計画」にもリソースを割くべきだ。
すぐ動くことも大事だが、初動の整えのほうが大事。
例えば、マッチングアプリで彼女を見つけたい、でもプロフィールの文章がゴミだと、そのあと何時間がんばってメッセージ送ってもマッチングしないんじゃないかな。努力すべきポイントは序盤にある。

あとは「最後」。
それまでゴミクズのような評価だったとしても、最後がよければ取り返しがつく。
終わり良ければすべて良し、とは先人の言葉である。


⑥逃げられないときこそ派手に逃げる

働いていると辛いことが沢山ある。
自分ではどうにもならないくらい大きなストレスが到来したとき、いかに最短で逃げられるか、それがメンタル回復力に直結すると思う。

今年、僕にも様々な災厄が降りかかった。
一番大きな災厄が舞い降りたときには、即座に翌日のすべての仕事をキャンセル、休みを取ってユニバーサルスタジオジャパンに行った。
驚きの3泊4日だ。

「逃げちゃダメだ……」って時こそ、逃げるくらいのメンタリティじゃないと、この社会を渡り歩くことはできない。
大きく寝坊をやらかしたとき、まず落ち着いて現実逃避だ。優雅にコーヒーを飲むのだ。


⑦省エネモードは悟らせない

省エネモードであることを他人に悟られてはいけない。手を抜いてるとか思われるからだ。
常に全力だと思わせておいたほうがいい。じゃないと、効率改善のためのリソースが取れないからだ。
ここぞ!というときにフルパワーを見せることで、ギャップ評価も狙える。


⑧寝る

バイタリティおばけたちの唯一の弱点は、バイタリティ高すぎてだいたい寝不足であることだ。
寝不足だとパフォーマンスが著しく落ちる。
僕は絶対8時間は寝る。寝不足のバケモノと、しっかり寝た自分であれば、いい勝負ができるかもしれない。

そして睡眠はメンタル回復力にも大きく直結している。
メンタル強いやつは沢山寝ている人が多い。逆にメンタル弱いやつは睡眠に出る。


⑨地形効果を使う

素の戦闘力が100でも、その会社にいる間だけ戦闘力99999になる人がいる。
僕にとってのフーモアはそれに近い。

毎日通う会社なんだから、自分の能力を高めるために環境を整えるべきだ。
オフィス環境を整え、実績を作り、出世して裁量を受け取り、人間関係を改善して信頼を築き、とにかく働きやすくするのだ。
あとは有利な地形効果でバケモノと戦えば勝てるかもしれない。


⑩殺意を持つ、そして殺意を表に出さない

「野心」と置き換えても良いかもしれない。

ここまで省エネのための話を続けてきたが、別にサボりたくてこの努力を続けている訳ではない。
最初に話した通り、持たざるものが何を成し遂げるため、負けないため、涙ぐましい工夫を続けているだけなのだ。
その初心を忘れてはならない。

意外がられるのだが、僕は学生の頃から、常に「敵」を倒すために努力を続けるタイプだった。

才能のある同期に負けないため、ムカつく上司をギャフンと言わせるため、跳ねっ返りの部下を黙らせるため、バケモノ揃いの経営者に囲まれ力不足を感じる度、株主に「こいつ役員に相応しくないな‥‥」という目で見られる度‥‥
密かに「いつか倒してやる」と胸に秘め、手持ちのカードを広げ、相手を分析して、コツコツ打倒計画を立てるのだ。

そうやってハードルを超え続けてきた結果、今の自分がある。

しかしその「殺意」は表に出す必要はない。
相手に悟られ身構えられたらアウトだ。
フィジカルで負ける自分が勝つには奇襲しかないし、仮に勝ったとしても相手も素直に負けを認めてくれないだろう。泥沼化だ。

そして、その「敵」も大切な存在だということを忘れてはならない。
この業界、スライムがキラーマシンに化けることもそう珍しくない。
職場が変われば上司部下が入れ替わったり、オワコンの業界がイケイケになったり、天才が無能老害になったりと、ビジネスの力関係は、ドラゴンボールの戦闘力並にアテにならない。

だから今倒したその「敵」を傷つけてはならない。キャッチアンドリリースだ。
そのうち良質の「敵」となって戻ってくるかもしれないし、自分が弱まったときに復讐しにくるかもしれない、ベジータみたいに共闘することになるかもしれない。

あくまで殺意は奥に秘め、良好な関係を保ちながら、相手に気持ちよく負けを認めさせる。一目置かせる。
そのための兵法は①〜⑨にも書いてきたはずだ。


入社が決まったならば、まずは周りを見渡そう。そして「敵」をこっそり作るんだ。
工夫を重ねればなんとかギリギリ勝てるくらいが好ましい。つまり中ボスだ。

そうやって倒した倒されたを繰り返し、レベルを上げていけば、そこらへんのベンチャーの取締役くらいにはすぐなれる!

この記事を読んでいるあなたがやがて、僕の「敵」となって、一緒にしのぎを削る相手となってくれれば、これほど嬉しいことはないと思う。

ーー

文責:取締役  斉藤隼大

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