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こども

その純粋さに、私の未熟な社会経験に由来する少しばかり濁った思考が反射していた。

それは咄嗟についた嘘がバレそうな時、心臓を圧迫する痛みのように私の胸をズキズキと突き刺した。

彼らは単にその事実だけを受け取ることができながら、それに対して屈託のない疑問をぶつける。

「ねえ、あれはなんでなの?」

その、単なる知識や語彙不足だけではない、世間知らずの純粋さ、外の世界を知らない幼さに、私は黙ることしかできない。

何故生きているのか、何故仕事をするのか、何故大学に来たのか、何故1+1は2なのか、何故何故何故何故何故...

私に聞かないでほしい。誰にも聞かないでほしい。自分で、自分の経験知から考えることだから。

誰かは言う。

「そんなこと考えても無駄だよ」
「答えなんて決まってるんだから」

こう言われるたび、私はまだこどもなのだと思う。

そしてそういう人間でいられることを嬉しく思う。

この歪んだ自己愛が私を包み、さらに膜を厚くしていく。

こうしてまた一段とこどもになった私は、それを厚くすることでしか自分を守れないのである。