ノイズキャンセリング機能付き世界
ノイズキャンセリング機能を発明した人は、当然だけど音楽や音そのものにこだわりが強い人なんだろうなあと思いながらノイズキャンセリング付きイヤホンを買った。
電車に乗って、いざ初•ノイズキャンセリング。
世界のボリュームのつまみをぐんっと0に回したようなそんな感覚。両耳には音楽だけがある世界。右斜め前のバカでかい話し声も無かったことになってる。うわぁ、すご、これ。
あっという間に虜。
一人暮らしのくせに部屋の中でもずっとイヤホンをつけてあちこちを動き回っている。
(今まで有線を使っていたので革命だったのです)
そんなある夜、コンビニに行こうと思い立ったわけなんですがもちろん両耳にはイヤホンが突っ込まれたまま。もはや道中がメイン、みたいな気持ちで玄関を出ると、ちょうど曲の変わり目で驚くほど世界が静かだったんです。なんだかおもしろくって音楽を止める。
すぐそこでは車が走っているのに音がないだけで滑っているように見えるし、自分の足音が聞こえないので幽霊にでもなった気分。
何も聞こえなくて、それは何も聞こえていないということがわかるということは、何かは聞こえているのか、頭の中がぐるぐる。
しばらくして怖くなって、イヤホンを外す。
どっ、と音が溢れかえって耳からこぼれ落ちました。遠くで車が走る音も、何かの虫の羽音も風の音も自分の足音も鮮明で、字の通り鮮やかさを持っていてあの夜のあの瞬間は、彩度がとてつもなかった。
自分は普段こんなに音に溢れた世界にいるんだなと実感するためだけに、
たまにノイズキャンセリングされた世界に行くこともあります。
どちらもいいね。ノイズキャンセリングを発明した人、つくってくれた人、ありがとう。
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