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八代亜紀『舟歌』に学ぶ、日本の英語教育の功罪

【お酒は】【ぬるめの燗(かん)がいい】
【肴(さかな)は】【あぶったイカでいい】
【女は】【無口なひとがいい】
【灯(あか)りは】【ぼんやり灯(とも)りゃいい】

八代亜紀さんの『舟歌』は、歌詞が主題(Theme)-解説(Rheme)で展開します。

日本語は、「象は鼻が長い」「僕はウナギだ」「コンニャクは太らない」など、シームとリームで展開するところに特徴があります。

実は英語も同じです。いわゆる「五文型」のような「文法構造」と異なり、主題からその解説へ、古い情報から新しい情報へと移行していく、という「情報構造」があります。例えば…

(a) [John read] [Shakespeare].
(b) [Shakespeare] [was read by John].

文法的には能動態と受動態ですが、情報的にはどちらもシームとリームです。コンテクスト(文脈)があれば、よりはっきりします。

What did John read?
(a) [John read] [Shakespeare]. (Old→New)
(b) [Shakespeare] [was read by John]. (New→Old)

「何をジョンは読んだか?」の回答としては、「ジョンが読んだのは」「シェークスピアです」の順番の方が自然です。

Who read Shakespeare?
(a) [John read] [Shakespeare]. (New→Old)
(b) [Shakespeare was read] [by John]. (Old→New)

「誰がシェークスピアを読んだのか」の回答としては、「シェークスピアが読まれたのは」「ジョンによってです」の順番の方が自然です。

まずは、すでに知っている情報を確認し、その後で、新しい情報をきりだすほうが、その逆よりも理解しやすいのです。

「文法構造」は、原則的に英文ひとつひとつに定まって存在します。それに対して「情報構造」は、コンテクスト(文脈)の中ではっきりしてくるものです。

日本人の英文ライティングは、一文一文、文法的に正確であっても、文脈が乏しくて読みにくい。こんなところに英文法教育の功罪があるのではないでしょうか?

おしまいに、以下の(a)~(e)にふさわしい回答を、それぞれ1~5から選んでみましょう。

(a) Those tomatoes, did you say that on Wednesday John picked them?
(b) When did John eat the tomatoes?
(c) Who ate the tomatoes?
(d) But the tomatoes, when did John eat them?
(e) What did John eat on Wednesday?
1. John ate the tomatoes on Wednesday.
2. The tomatoes John ate on Wednesday, (the spinach on Friday)
3. On Wednesday, John ate the tomatoes.
4. The tomatoes were eaten on Wednesday by John.
5. What John did to the tomatoes on Wednesday was to eat them.

参考 Goatly, Andrew (2000) Critical Reading and Writing: an Introductory Coursebook, Routledge: London and New York.

池上嘉彦(1995)『<英文法>を考える』ちくま学芸文庫

谷口賢一郎(1992)『英語のニューリーディング』大修館書店

正解: (a)-5, (b)-1, (c)-4, (d)-2, (e)-3.

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